宮﨑 賢哉(ミヤザキ ケンヤ)
災害救援ボランティア推進委員会 主任
本講では地域や学校で防災講演会や研修を行う際のヒントをご紹介します。
●本講の内容
1)防災講演会・研修会を担当することになった!
2)参加者は何を知りたいのか?
3)講師に何を期待するのか?
4)日程・予算・内容を詰める
5)当日、事後調査はしっかりと
【1】防災講演会・研修会を担当することになった!
▼2011年3月11日の東日本大震災以降、多くの方が防災や災害について改めて考えられたことと思います。事実、地域、学校、企業等で防災講演会や研修会を開催する機会も増え、本会への講師派遣依頼も増えています。ですが、なかにはこれまで防災についての講演会や研修会を企画したり、依頼したりすることが無い場合も多いというのが現状ではないでしょうか。
▼これまで多くの皆様からの講演会・研修会のご相談を受けてきました。その経験から、本講では初めて防災講演会や研修会を担当することになった方のためのヒントをご紹介します。「参加してよかった!」と言っていただけるような素晴らしい講演会や研修会を企画するお手伝いができたら幸いです。
【2】参加者は何を知りたいのか?
▼後述しますが、防災講演会や研修会の難点は「防災」のテーマが大変幅広いということです。往々にして「とりあえず、防災全般についてお願いします」ということになりがちですが、依頼される側、講師からすると「いったいどの視点・段階での防災なのか?」ということが分かりません。講師がそんな状態では、一般論や抽象的な話題に終始せざるを得ず、参加者の方の満足感はありません。せっかく時間を割いて参加していただくのですから、納得のいく話をして欲しいですね。
▼そこで大きく2つの視点からを考えます。もし現時点で講演会や研修会を検討されている方は、ぜひメモをご用意して書き出してみてください。
【主催者として、参加者に何を伝えたいか(学ばせたいか)】
【参加者は何を知りたいか(学びたいか)】
①あなた(担当者)が参加者に1番伝えたいことは何ですか。1つ~3つくらいにまとめてください。
②そのことは、参加者があまり知らないことですか。知っているだろうけどより詳しく伝えたいということですか。
③あなた自身はそのことについてどの程度の理解がありますか。
④これまでに参加者がそのことについて学ぶ機会はありましたか。あったとしたら何が足りなかったのでしょうか。
ある程度まとまってきたら、次は講演会のテーマを決めてみましょう。
▼「防災」を整理するのに、こんな考え方もあります。
【「生き残る」ための防災か 】、【「生き抜く」ための防災か】
非常食の準備だけしても、倒れてくる家具から身を守ることはできません。家具の転倒防止だけをしても、避難生活でお腹の足しにはなりません。地震から「生き残る」、つまり死なないための防災なのか、「生き抜く」、つまりとりあえず助かったとしてその後の避難生活を生き抜くための防災なのかを整理することが大切です。もちろん両方大事ですが、どちらの視点を重視するかによってテーマは変わってくることでしょう。
【3】講師に何を期待するのか?
▼意外と多いのが「テーマは先生にお任せします」という依頼です。頼まれる講師にもよりますが、なるべく主催者や参加者の意図に沿うように、と考えるとこれほど難しいテーマもありません。なぜなら【2】が分からないからです。僕の場合、こうしたお話があるとひとつひとつ、【2】のような質問を担当者の方とやりとりしながら内容を詰めていますが、依頼してから考えるのでまとまりきらないことも多いものです。依頼の前からある程度、考えがまとまっていると、具体的なご提案などもしやすいのですが…。
▼皆さんはすでに【2】について考えられていますので、それをヒントにテーマを考えてみます。具体的な演題まではいかなくても、参加者が一目で講演会や研修会の意図が分かるようなものが良いでしょう。【防災講演会】でも構いませんが、参加者からするとせめてサブタイトルくらいは欲しいものです。これは個人の好みや対象者の世代なども影響しますので、主催者の方でいろいろと考えていただくのが良いかと思います。
【防災講演会・研修会のテーマ(例:地震災害への備え)】
○家庭でできる防災対策(住民向け) ○学校が避難所になったら(児童生徒向け) ○災害ボランティア活動(全般)
○地域でできる防災対策(住民向け) ○帰宅困難者対策 ○避難生活のポイント など…
▼ある程度テーマはまとまりましたか。では、そのテーマや【2】について講師にしっかりと伝えましょう。一言に講師といっても幅広く、専門性や経験には差があります。例えば、地震研究で有名な先生にボランティア活動や避難生活について依頼する、というのは間違いではありませんが分野が違いますね。逆に、ボランティア団体の人に地震研究の詳細を話してもらうのも無理があります。主催者の意図、参加者の希望、テーマをしっかり伝えることで、講師を依頼される側も判断がしやすくなります。割と手間のかかる作業かもしれませんが、参加者から「期待していたのとぜんぜん違う!」と途中退席されるような事態を防ぐためには大事な作業です。
【4】日程・予算・内容を詰める
▼次は日程を詰めます。講師のスケジュール、参加者の都合なども勘案します。できればこれまでの講演や研修なども参考にして、参加者が集まりやすい日程をいくつか(最低3日程度)ピックアップして、講師に打診してみるのが良いでしょう。それで合わなければ講師スケジュールと調整していく、というのが良いかと思います。
▼予算については悩みのタネであり、一番心配されるところかと思います。これまでの防災ミニ講座でも少しご紹介しましたが、予算が十分に取れない場合は市区町村防災課や消防署などに依頼するのが良いでしょう。テーマがしっかりしていれば、ある程度対応してくださることと思います。テレビや雑誌で著名な先生になれば5万、10万など当たり前の世界ですから、よほど潤沢な予算が無い限りは難しいかもしれません。ですが、意図や趣旨がはっきりししていれば情熱で受けてくださる可能性もあります(あくまで可能性ですよ!)。ダメもとでアタックしてみても良いでしょう。参考までに、本会では講師謝礼についてはなるべく皆様のご都合に併せています。特に教育機関からの依頼については柔軟に対応しますので、お気軽にご相談ください。
▼さて、いよいよ内容ですが形式にも様々なものがあります。大きく分ければ話を聴くだけの講演会とワークショップ(みんなで目的をもって作業する)が取り入れられた研修会などです。これはテーマや時間、会場などに左右されますので、講師と調整されるのが良いでしょう。また、防災ミニ講座でも過去の講演・研修の事例などをご紹介したいと思います。
【5】当日、事後調査はしっかりと
▼いろいろ準備した講演会もいよいよ当日を迎えました。担当者の方も緊張しますね。
①講師と打ち合わせは十分に行われていますか。講演や研修の意図は伝わっていますか。
②使う機材(プロジェクターやパソコン、音響機器)は整っていますか。故障したりしていませんか。
③参加者の会場案内、講師の誘導などは大丈夫ですか。
④緊急連絡先は講師に伝えてありますか。講師の連絡先も確認済みですか。
▼最近の施設であればパソコン、プロジェクターが使える場合がほとんどですが、講師によってはこだわりのある方がいます(こういう配置にして欲しい、パソコンを持参したい等)。当たり前ですが事前確認が必要です。また、意外に担当者自身が設備を使ったことがないというケースも多いです。いざパソコンをプロジェクターにつなげたら画面が出ない、音がでない!というケースは僕の経験から10回中3回くらい起こります。たいていその場で調整できますが、結局どうにもならなくて・・・なんてことも。専属のスタッフをつける、予め機器のチェックをするなどの準備もしておきましょう。
▼講師や参加者が交通機関の影響を受けることもあります。気の利いた講師ならそんな場合の対策として予備のワークシートを配布しておいて、参加者の方に書いてもらうなどの対策も用意していますが、なるべく避けたい事態です。打ち合わせの時間を少し早めに取るなど時間に余裕を見ておくと良いでしょう(最低、30分前には会場入りをお願いする等)。
▼何とか無事に講演会、研修会も終わりました。参加者の表情はどうですか。寝ている人ばかり、なんてことはありませんでしたか。最後に参加者の皆さんにアンケートなどを書いてもらうこともお忘れなく。主催者、講師ともに参加者から教えてもらうことは本当にたくさんあります。アンケートは言わばより良い講演会・研修会のための参考資料でありテキストなのです。それを作らないのは本当にもったいない!
皆さまの防災講演会・研修会がより良いものになることを祈念しております。本会への防災講演会・研修会のご相談は「お問合せ」またはお電話(03-6822-9900)まで!