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今日の事態をどう捉えるのか

今日の事態をどう捉えるのか
(2011年3月25日午後1時時点)

災害救援ボランティア推進委員会
委員長 沢野次郎

3月11日午後2時46分、東北地方太平洋沖巨大地震、大津波、そして二次災害としての福島原発での事故が発生した。事態の推移は流動的ではあるが、現時点においては事態の深刻さに対する認識が大切だと考え、今日の事態を簡単にまとめてみた。
1、どんな災害なのか
(1)連動型巨大地震、大津波
今回の災害は直接的には連動型巨大地震・大津波災害で、地震の規模としては世界最大級、歴史的には「千年に1度」、いや有史以来の巨大地震かもしれない。
三陸沖から福島県沖、茨城県沖にかけての3つの連動型巨大地震は政府も、専門家も想定外の出来事であり、三陸で「世界一」の防潮堤を超える大津波、その他の地域での大津波もまったくの想定外であった。
さらに余震、それもマグニチュード7クラスの余震の危険だけでなく、今回の地震が発生したプレートとの境界域、長野県北部、静岡県東部、茨城県南部等でも余波として大きな地震が発生している。くり返しの余震、関連性のある地震の頻発で、「地震酔い」で体調を崩す人も出てきている。
(2)二次災害としての原発事故
巨大地震の二次災害として福島原発事故が発生し、事態は深刻化している。施設周辺住民の大規模避難だけでなく、福島県からの県外避難、自主避難も始まり、「難民」が首都圏に押し寄せている。日本において、このような本格的な「難民」発生もかつてない事態ではないか。
また福島原発からの放射能による汚染が各地で観測されるようになり、値の大小にかかわらず、住民の間に放射能汚染に対する不安が広がっている。
(3)首都圏での地震被害と計画停電(大規模停電の危機)
今回の巨大地震では首都圏でも様々な被害が発生している。マスコミ等でも全国的にはあまり報道されていないので、この点は詳しく述べたい。
茨城県、千葉県の一部は大地震・大津波の被害、東京・九段会館での天井崩落、東京湾沿岸部等では液状化、長周期地震動の影響とみられる千葉県のタンク火災、高層建築物等での大きな揺れ等である。
また、11日の地震の影響で電車を中心に交通機関がストップしたことにより、夕方から大量の帰宅困難者が発生し、帰宅困難者のための避難所が首都圏で初めて本格的に設置された。私の感想では「訓練が実際になった」という驚きである。
さらに、東京電力の福島原発および一部火力発電所が止まったことにより、首都圏では大規模停電の危機が発生している。この危機に対応するために計画停電が13日に発表され、14日から実施されることになった。この影響で数多くの電車が運休、企業が休業する事態となり、混乱に拍車をかけた。
地震、停電、交通マヒ等の影響を受けて、首都圏の住民は次ぎの地震、停電、電車運休に備えて、防災用品、生活物資、ガソリンを一斉に買い求めるなかで、「石油ショック」以来ともいえる買いだめと一時的な物資不足が発生した。
(4)被災地の広域化と三重苦、四重苦状態
以上のように今回の災害では被災地がかつてなく広域であり、そのことは災害の名称、「東日本大震災」「東北・関東大震災」に現れている。
また災害の性格も、複合災害とも呼べるもので、南相馬市長の言葉をかりれば「巨大地震、大津波、原発事故の三重苦」状態、これに風評被害による経済打撃が加わり、四重苦状態となっているが、そこに首都圏の混乱状況も加味すると五重苦の状態であり、身動きが取れない状態となってきている。
2、一部被災地の無政府状態、政府が今後の展望が示せない状況
政府も、自治体も未曽有の大災害、広域災害、複合災害の発生を前に、目先の災害対応に追われている状態となり、「政治主導」の影響もあり、行政も指示待ちで対応も後手に回っている。過去の災害と比較しても政府が今後の展望すら示せない事態が長期間続いているし、今後も続く可能性が高い。
また、大津波被災地では行政機関そのものが大打撃を受け、一部では壊滅している。災害発生から一定時間が経過しても本格的な援助の手が届かない事態が続いている。
こうしたなかで、一部の被災地からは物資不足、ガソリン不足のなかで遺体の扱い、安否確認すら出来ないという悲痛な声、「弱者」と呼ばれる人たちが施設や避難所の環境の劣悪化のなかで次々と死亡するという最悪の事態が現実化している。さらに盗難が多発している等々およそ先進国、かつての日本では考えられなかったような事態も発生している。
現在の被害は東日本を中心としているが、この状態の長期化により金融経済面への悪影響が増大すれば、日本経済への危機の波及は必至である。その危機が財政危機とも相まって行けば、国家の危機が迫っていると言っても過言でない。
3、従来の枠を超えた新たな活動の構築を
以上のような現在の深刻の状況は被災地を支援する、あるいは被災地を支援するボランティア活動を行うという狭い視野では到底解決することはできない。もちろんこれらの活動が大切なことは言うまでもないことだか、今日の事態の深刻さを認識するならば、日本全体、国民生活全体の視野で、この事態にどう対応するかという活動を構築する段階にきていると私は考える。