防災ミニ講座

防災ミニ講座(目次)

「防災ミニ講座」では様々な防災活動プログラムや教材、弊会の活動についてご紹介しています。なお、一部記事については関連団体である一般社団法人防災教育普及協会より寄稿されています。

一般社団法人防災教育普及協会


第31回 大学における災害ボランティア育成の現状と展望2017~首都直下地震に備えて~

第30回 地域連携プログラム『地域における防災教育の実践』

第29回  【教材あり】公務員志望学生向け防災・災害ボランティア入門講座

第28回 気軽に楽しめる防災教育教材&ゲームの一覧

第27回 【教材あり】災害ボランティアセンターの基本と運営訓練用プログラムの紹介 

第26回 防災教育とアクティブ・ラーニング

第25回 防災教育に使える教材⑤ 災害時のトイレアクションを学ぼう

第24回 防災教育に使える教材④ 災害時のコミュニケーションを学ぼう

第23回 -特別編-地域における防災教育の実践に関する手引き(第30回に更新版)

第22回 避難所運営ゲーム(HUG)研修・授業実施のポイント

第21回 災害救援ボランティア講座の10年と大学・学生への普及

第20回 防災教育に使える教材③ 災害状況を想像する力を伸ばすプリント

第19回 第3回国連防災世界会議と防災教育の国内外への普及

第18回 地域防災力UPシリーズ② ぼうさい探検隊で防災マップづくり

第17回 地域防災力UPシリーズ① 災害図上訓練-DIG-でまちを知ろう

第16回 EDUPEDIA「防災教育50選」をもっと活用する4つのポイント

第15回 【教材あり】災害情報とコミュニケーションについて学ぼう

第14回 防災教育のすすめ ~命を守る防災教育の考え方と実践事例-後編-~

第13回 防災教育のすすめ ~命を守る防災教育の考え方と実践事例-前編-~

第12回 【教材あり】防災災教育に使える教材② -うさぎ一家の防災グッズ-

第11回 【教材あり】災害ボランティアセンター運営を体験してみよう! 

第10回 東京臨海広域防災公園「そなエリア東京」に行ってみよう!

第09回 学校防災教育における学習計画・指導案づくり-後編-

第08回 学校防災教育における学習計画・指導案づくり-中編-

第07回 学校防災教育における指導計画・指導案づくり -前編-

第06回 いま求められる防災教育

第05回 大学における災害ボランティア養成の現状と展望(第31回にて更新)

第04回 防災教育に使える教材① -HUG 避難所運営ゲーム-

第03回 効果的な防災講演会・研修を開催するには

第02回 都立高校教科「奉仕」の時間を使った防災教育

第01回 防災教育にチャレンジしてみませんか!

第31回 大学における災害ボランティア育成の現状と展望2017

首都直下地震に備え、注目される学生・大学の取り組み

首都直下地震に備えて、災害救援ボランティア活動や地域の防災活動に取り組もうという大学生・大学が増えています。筆者は、在学中から積極的に大学における災害ボランティア育成や学生ボランティアの支援に取り組んできました。弊会(災害救援ボランティア推進委員会)の取り組みを中心に、大学における災害ボランティア育成の現状と展望、大学生による組織的な災害・復興支援や地域防災活動等についてご紹介します。

 

大学における災害ボランティア育成

災害救援ボランティア推進委員会は平成7年の阪神・淡路大震災を契機に設立された民間団体です。総務省消防庁が示す基準に基づく講座「災害救援ボランティア講座」を行い、災害救援、地域防災を担うリーダーを育成、大規模災害の被害を軽減することを目的として活動しています。

同会の災害ボランティア育成の仕組みは首都圏を中心に多くの大学で取り入れられており、平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震での帰宅困難者対応や、その後の学生ボランティアの復興支援活動へとつながっています。 平成28年実績では、1年間に11の大学で13回の講座が開講されています(一部大学は1年間に2回講座を実施)。これほど多く、また長く継続的に大学と連携しながら災害ボランティア育成を行っている団体は他にありません。

 

災害救援ボランティア講座の内容

「災害救援ボランティア講座(以下「講座」)」は、東京消防庁のOBによる座学講義、公益財団法人東京防災救急協会 による上級救命技能講習、立川・本所・池袋にある「防災館」での模擬体験と実技、災害ボランティア活動の経験者による実践的な演習がパッケージ化されています。平成29年8月現在で公開されている講座情報については、災害救援ボランティア推進委員会のホームページからご覧ください。

 

 

基本的なカリキュラム構成は次のとおりです。大学によっては、学生団体による活動紹介や地元社会福祉協議会の講義、大学に所属する教授による特別講義などを取り入れる場合もあります。

 

災害救援ボランティアの基本(90分) 災害救援ボランティア活動の経緯など総論的な講義
災害と防災対策の基本(90分) 自然災害や防災対策の基礎知識についての講義
出火防止と初期消火(90分) 首都直下地震等で課題となる火災対策についての講義
応急手当活動(上級救命技能講習/8時間) 心肺蘇生法、AED操法、三角巾や搬送法等の実技
災害模擬体験と実技(2時間) 立川・本所・池袋防災館での模擬体験と実技訓練
被災地での安全衛生と被災された方との接し方(90分) 安全衛生と被災された方のことを学ぶ講義・演習
災害情報の収集・伝達とコミュニケーション(90分) 被災地支援や被災時に役立つ、災害情報情報の取り扱いを学ぶグループワーク
リーダーシップとチーム・ビルディング(120分) 災害ボランティアとしてのチーム活動を学ぶ図上演習
(その他大学別プログラム) 大学・学生団体による活動紹介や、教授による特別講義など

 

このうち、筆者が指導を担当しているのは「被災地での安全衛生と被災された方との接し方」、「災害情報の収集・伝達とコミュニケーション」、「リーダーシップとチーム・ビルディング」の3科目で、いずれも実際に被災地で直接求められる知識と理解、行動に関わる部分となります。

 

Point:複数大学で科目共有する「振替受講」のシステムで受講者をフォロー

これらのカリキュラムはほぼ全ての大学で共通しており、体調不良や就職活動等で一部科目を欠席してしまった場合などは、他大学で振替受講することもできます。大学生の時間は4年間と限られています。1年に1回しか機会がないのでは、3年生・4年生はどうしても受講機会が限られてしまいます。災害ボランティアについて学びたいという意欲を受けとめるための仕組みが整っていることも大きな特徴です。

 

「セーフティリーダー」の認定と推移

講座の全科目を修了した方には、災害救援ボランティア推進委員会から「セーフティリーダー(以下「SL」)」の認定証が交付されます。都内大学で開講した場合は東京消防庁から「上級救命技能認定証」も交付されます。大学が主催する講座の場合は、認定証に大学名も記載されます。SLの認定者数推移にも他にはない特徴がありますので、具体的なデータに基づいてご紹介します。

 

Point:「災害救援ボランティアや防災を学びたい」学生の増加

筆者が担当している東京都内を中心とする大学での「災害救援ボランティア講座」ですが、年々開講数が増えています。平成16年度は年間10回だった講座の開講数が、平成26年度には19回とほぼ倍の開講数になりました。

講座修了生については、平成24年度、平成25年度はいずれも500名を越える修了生数となっていますが、平成26年度では500名に至りませんでした。東日本大震災など、大きな災害が起きてからある程度の期間が経つと、災害救援活動や防災への社会的な関心は相対的に低下していく傾向にあります。

ただ、減少しているだけでなく大きく上昇しているポイントもあります。そのポイントは、今後数十年の防災対策や災害ボランティア活動にも良い影響をもたらすポイントだと考えています。何かというと【修了生数に占める学生(大学生、中高生・専門学校生)の割合】です。

具体的なデータを示すと、平成16年度では33%しかなかった学生の割合が、平成22年度には71%になり、平成26年度においても64%まで上昇しています。グラフでは記載できていませんが、平成27年度・28年度は約70%となっています。災害救援ボランティアや防災に関する講座は様々なものが開講されていますが、これほど顕著に、かつ継続的に大学生が参加し続けているのは災害救援ボランティア推進委員会の講座の特徴です。

 

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表1 講座修了生数に占める学生の割合(黄色マーク)

 

「大学主催」の仕組みが学生の意欲・関心の受け皿に

こうした特徴を支えているのは「大学が主催して講座を開講する仕組み」があるからです。専門的な知識や技能を有する外部団体が、大学が主催する災害救援ボランティア講座に協力し、大学は講座を受講した学生や教職員がともに、平時の防災活動や災害時の協力体制構築をしていく仕組みです。

都内大学での平成16年度の修了生数は、186名中91名が学生(5回開講)でした。平成26年度の修了生数は、297名中227名が学生(12回開講)でした。数値を比較すると修了生数が62.6%増、学生比率は27.5%増、開講数は7回増えています。

なお、最新(平成29年8月末)学生の講座修了生数が多い上位10大学は次のとおりです。10大学の合計人数は2,975名となります。講座は全国の学生が受講しており「セーフティリーダー」の認定を受けた学生がいる大学は約200大学にもなります。学生修了生の総数は4,611名ですので、上位10大学の修了生が全体の64.5%を占めているということなります。

 

 1位 明治大学  598名 ※協定に基づく、千代田区支援事業、大学主催
 2位 専修大学  548名 ※協定に基づく、千代田区支援事業、大学主催
 3位 中央大学  425名 ※大学(学生部)主催
 4位 法政大学  356名 ※協定に基づく、千代田区支援事業、大学主催
 5位 富山大学  346名 ※大学コンソーシアム富山主催による単位互換
 6位 目白大学  203名 ※大学主催
 7位 上智大学  191名 ※協定に基づく、千代田区支援事業、大学主催
 8位 工学院大学 135名 ※大学主催
 9位 立教大学   98名 ※大学ボランティアセンター主催
 10位  聖心女子大学 77名 ※大学総務部が他大学講座へ学生を派遣

 

いずれの大学も、ボランティアセンターや学生生活課等が中心となって、災害救援ボランティア講座を開講したり、受講を支援しています。このようなデータからも「大学が災害救援ボランティア講座を主催」していく仕組みが、多くの学生の参加を促していることが分かります。前述のとおり、振替受講の仕組みもありますので、他大学での講座を含めれば1年間に何度も参加の機会があることになります。

逆に言えば「災害・防災ボランティアに関する講座がない」、あるいは「講座受講を希望する学生を支援する仕組みなどもない」、多数の大学の学生は、どうしても学ぶ機会が限られてしまうということです。

もちろん、ボランティアですので環境に関わらず率先して行動できることが理想的ですが、せっかく学んだことを大学・地域に還元するためには、やはり大学が中心となって取り組むことが重要であると考えられます。 災害救援ボランティア推進委員会では、大学主催の講座や体制づくりについての提案も行っていますので、お気軽にご相談ください。


図1 大学主催による「災害救援ボランティア養成講座」ご提案
(クリックすると新しいウィンドウで拡大します)

 

活動経験に基づく「大学と学生の連携」強化

こうした大学主催の講座開催の仕組みを推し進めている背景には、筆者自身の活動経験があります。 冒頭の別記事でもご紹介していますが、筆者が学生だった2000年前後は、災害ボランティア活動や防災活動は今ほど一般的ではなく、ごく限られた一部の学生・団体が取り組んでいるだけでした。そうした社会的背景の状況で、学生だけで活動に取り組むのは難しい、と感じることがたくさんありました。「もっと大学、教職員の方と連携して活動できたら、いざという時にもスムーズに活動できるはず」という想いが、大学と学生が連携する仕組みづくりにつながっています。

 

Point:行政と大学が連携した災害救援ボランティア育成モデル

「大学と学生の連携」を具体化しているモデルをご紹介します。 平成16年に千代田区は明治大学と「大規模災害時における協力体制に関する基本協定」を締結しました。主な内容は学生ボランティアの育成、地域住民及び帰宅困難者等被災者への一時的な施設の提供、大学施設に収容した被災者への備蓄物資の提供の3点です。

千代田区は明治大学との締結を皮切りに区内の全大学と防災協定を締結しています。 明治大学と法政大学は平成16年、協定に示される学生ボランティア育成として災害救援ボランティア講座を取り入れました。これがきっかけとなって現在、上智大学、専修大学でも導入され、現在の大学主催の講座開催の基盤となる仕組み「千代田モデル」ができました。

千代田モデルでは、大学が施設を提供するだけではなく、学生ボランティアの育成、派遣を努力目標に掲げている。その具体化として大学が災害救援ボランティア講座を主催していること、災害ボランティア団体が講座を支援していること、行政(千代田区)がその取り組みを支援していることに特徴があります。

 

キャプチャ

 

平成17年から富山県では、大学コンソーシアム富山が中心となって富山大学等を会場に県内の大学生を対象とした災害ボランティア育成を行っています。「富山モデル」の特徴は、複数の大学が連携して講座を開講し、共通単位科目として認めている点にあります。どちらのモデルも大学と行政、外部の災害ボランティア組織が協力することにより、災害ボランティア育成の専門性を高めながら継続しています。

 

大学と学生による自発的な活動

一般的に外部団体による講座は、修了後は該当団体での活動や参加を前提としたものが多いのが特徴ですが、筆者が紹介している講座では「大学による、大学・学生・教職員のための」講座を目指しています。明治大学災害救援班専修大学SKV 法政大学チームオレンジ 上智大学SVN 中央大学チーム防災 など、各大学で講座を修了した学生が参加する学内活動も積極的に行われていますので、関心のある学生さんや教職員の方は、各リンクからぜひチェックしてみてください。

 

(参考)首都圏における災害時の活動

平成23年3月11日、東北地方太平洋沖地震の影響により、千代田区内でも多くの帰宅困難者が発生しました。明治大学、法政大学、専修大学、上智大学の学生ボランティア育成に取り組む4大学は区の指示を待つことなく、率先して滞留する学生・教職員と帰宅困難者の支援活動に取り組まれていました。 筆者自身も震災当日から翌日にかけて区内4大学で、帰宅困難者支援活動の情報収集やサポートをさせていただきました。

いずれの大学も大きな混乱なく施設を開放するとともに、学生・教職員が協力して情報提供や毛布等の救援物資を配布されていました。学生が支援活動に協力していた大学もあり、円滑な支援活動の裏側には、平時からの防災協定と協定に基づくボランティア育成、その浸透もあったと考えられます。

また、その後の復興支援活動では災害ボランティア育成を行う大学も被災地へ学生を派遣しています。平成23年、平成24年を中心に、被災地での支援活動を希望する学生に対する事前説明会を開催するなどの取り組みを行っています。

専修大学では平成23年4月2日から5日にかけて、石巻専修大学支援に学生ボランティアを派遣しています。この時期に多くの大学は学生の安全や現地の情報不足を考慮し、安易に被災地へ入らないよう呼びかけていました。しかし、専修大学では災害救援ボランティア講座を修了したメンバーによる学生団体「SKV」を中心とすることで、ボランティアが必要とされる早期段階での被災地派遣が実現しました。また、夏期に行われた石巻支援活動では、SKVメンバーが一般学生のリーダーとなって支援活動に取り組みました。

 

大学による災害ボランティア育成の展望

2017年現在の大学生は、2011年の東日本大震災発生当時、中学生~高校生です。テレビやインターネットで被災地の情報に触れることはあっても、なかなか実際に被災地で活動することができなかった、何かしたくてもどうしたらいいか分からなかった、という方も多いようです。

大学生になって、行動範囲も広がり、様々なことに挑戦できるようになると「災害ボランティア活動」がぐっと身近になります。一方で「いざ災害ボランティアについて学びたい」と思っても、学ぶ機会が限られているのも事実です。2011年以降はいろいろな団体が災害ボランティア講座を開講していますが、なかなか日程が合わなかったり、特定の団体色が強すぎてなかなか個人では参加しづらいというケースもあります。

せっかく興味・関心があっても、教育訓練の機会がなければその意欲を活かすことはできません。 これまでも、そしてこれからも自然災害は相次いで発生し、その様子を見ながら成長する中高生は一定数いると考えられます。大学が「災害支援や防災に関心の高い」大学生の受け皿になるための仕組みづくりが、これからの社会にとって重要であると考えています。

災害はいつ起きてもおかしくない状況であることに変わりはありませんが、今後20年、30年に渡って社会を支えていくことになる学生・若者が、在学中に災害救援ボランティアや防災について学ぶ機会を持つことは、将来的な日本の、地域の防災力向上につながるはずです。

図3 東日本大震災直後に活動した学生も、今は各方面で活躍(撮影:2012年)

 

本稿をもし大学教職員の方がご覧いただいているようでしたら、ぜひ興味・関心のある学生さんと一緒に、災害ボランティアや防災に関する講座を実施していただきたいと思います。もし学生の方がご覧いただいているようでしたら、ボランティアや学生活動の担当部署に相談してみてください。もちろん、お声がけいただければできる限りのご協力をさせていただきます。

 


宮﨑 賢哉 / 災害救援ボランティア推進委員会主任、(一社)防災教育普及協会事務局長
 阪神・淡路大震災以降に被災各地で活動し、2002年にセーフティリーダー認定。学内で学生団体を設立し、災害支援や防災に取り組む。2004年(公財)日本法制学会(災害救援ボランティア推進委員会の運営法人)入社後は、経験を活かして大学での災害救援ボランティア講座や学生支援を担当。教育・福祉、公園指定管理など幅広く活動中。

第30回 地域連携プログラム『地域における防災教育の実践』

第30回 地域連携プログラム『地域における防災教育の実践』

宮﨑 賢哉(ミヤザキ ケンヤ)、社会福祉士
災害救援ボランティア推進委員会主任/(社)防災教育普及協会事務局長

 

【サマリー】

本記事は災害救援ボランティア推進委員会が認定する「地域防災インストラクター」養成講座のために作成したものです。広くインストラクター希望者にご利用いただくため、全文を災害救援ボランティア推進委員会ホームページで公開しています。本文の一部リンクはホームページにアクセスすることで利用できます。また、本記事の内容は全てPDFでダウンロードしていただくことができます。

★資料ダウンロード(平成29年度神奈川県学校保健・学校安全研修版)

▶ 地域における防災教育の実践に関する手引きテキスト[PDF]

 

1『地域における防災教育の実践に関する手引き』紹介 

「地域における防災教育の実践に関する手引き」は、平成27年3月に内閣府(防災担当)が公開した冊子です。内閣府(防災担当)は、2004年度から防災教育の専門家や有識者と共に『防災教育チャレンジプラン』という防災教育支援事業を実施しています。防災教育チャレンジプランの支援によって、数多くの学校や団体が防災教育を実践し、様々な防災教育プログラムや教材が開発、使用されました。東北地方太平洋沖地震の後、防災教育の象徴的な事例として取り上げられた岩手県釜石市立釜石東中学校の地域と連携した防災教育の取り組みも、2010年と2011年、同プランに採択されていました。

こうした積み重ねによる豊富な事例や教材を整理し「防災教育にチャレンジしたいけれど、何からはじめ、どうしたらいいか分からない」方々、特に地域や学校の防災教育に関わる立場の方々に向けて作成されたのがこの手引きです。

本テキストは、筆者が手引き作成時の事前ヒアリング調査や項目分類、関係団体への防災教育実践等にご協力させていただいた経験から、手引きをより効果的に活用するためのポイントや、掲載されている代表的な教材などについて、手引きの構成を中心に取り上げ、各項目についてご紹介します。地域・学校における防災教育実践の一助となれば幸いです。

なお、本資料は講義実施後に『災害救援ボランティア推進委員会』ホームページ上よりPDF型式でダウンロードできます。地域での活動等でお役立てください。

1.1 関係リンク(クリックでアクセスできます)

 

2 手引きの概要

2.1 背景と目的

手引きが作成された背景や目的は、本体1p.より引用します。


"我が国では、毎年、地震や風水害など、多くの異常な自然現象が発生しており、これらの自然災害による被害を小さくするためには、「自助」、「共助」、「公助」の取組が重要です。平成23年3月11日に発生した東日本大震災では、大規模広域災害時における「公助」の限界が明らかになった一方で、「自助」、「共助」の重要性が再認識され、これをきっかけにして、「自助」、「共助」の力を向上させる取組として、防災教育への関心が高まっています。しかし、何から始めればよいかわからない、活動を行うための資金や知識がないなどの様々な課題により、取組が進まない事例が存在します。本手引きは、このような状況を踏まえ、全国各地で防災教育を推進することを目的として、優秀な先進事例から得られる取組を進めるための知見を整理し、防災教育を実践する過程で生じる様々な課題を解決するためのヒントを示すものです。” 


 防災教育を学校や地域で取り組もうとすると、様々な課題があります。その課題や解決策を「ポイント」として整理・共有することで、防災教育の実践を普及していくことが、手引き作成の目的です。

 

2.2 手引きの対象

教育・福祉関係団体(学校、幼稚園、保育施設など)に限らず、地域住民団体、ボランティア団体、地方公共団体などにおいて、これから防災教育に初めて取り組もうとする方が主な対象になっています。

 

2.3 防災教育を実践するにあたって

2.3.1 防災教育の目的

『地域に属するひとりひとりの防災意識の向上を図り、地域内の連携を促進することなどにより、地域の防災力(災害を未然に防止し、災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ及び災害の復旧を図る力)を強化すること』が防災教育の目的として示されています。必ずしも対象は児童生徒だけではありません。

 

2.3.2 防災教育を実践する上での五箇条

地域の特性や問題点、過去の被災経験を知ること。

防災教育を実践するにあたっては、まず地域の脆弱性(過去にどのような災害が発生し、どの程度の被害が出ているか等)を把握し、想定される災害リスクを的確に捉えることが必要です。また、自然を「過去に大きな被害をもたらした恐怖の対象」として伝えると、学ぶことや考えることを避けてしまいがちです。自然が与えてくれる美しい景観や様々な恵み、日本で暮らすことの価値や意味も、併せて伝えていくことが求められます。

「自然災害によって被害を受ける可能性がある」ということは厳しい現実ですが、一方で日常的にたくさんの恩恵も受けている、という自然の二面性について理解を促すことも、防災教育の大切な役割のひとつです。

 

まずは行動し、身をもって体験すること。

防災教育を実践しようと思う方は、まずは自ら行動に移し、周囲にその必要性と成果を示すことが重要です。防災対策や防災教育の必要性は理解しつつも「具体的にどうしたらいいのか分からない」あるいは「他に優先してやらなければならないことがある」という理由から、なかなか具体的な実践に結びつかないことがあるかもしれません。
 そうした場合は例えどんなにわずかな、初歩的な取り組みだとしても、誰かが行動を起こすことが重要です。後述するように、手引きには楽しみながら気軽に取り組める教材やプログラムについての情報も掲載されています。まずは実践したいと思う方が、自ら身をもって体験し、チャレンジしましょう!

 

身の丈に合った取組とすること。

決して無理をせず、欲張らず、自分たちのできる範囲で取組を進めることです。手引きやインターネットにはさまざまな防災教育実践が掲載されています。ただ①で紹介したように防災教育はそれぞれの地域特性などに応じた実践が必要です。別の地域、別の学校で取り組まれた内容がそのまま適用できるとは限りません。優れた実践は、様々な実践を積み重ねて成果を挙げています。焦らず、少しずつできるところからはじめ、継続していくことが大切です。

 

様々な立場の関係者と積極的に交流すること。

 防災教育、そして実際の災害発生時に関わるのは学校と児童生徒、保護者や地域住民だけではありません。消防や防災課、NPOや民間企業・団体、自主防災組織など、周囲の関係者と協力・連携することが重要です。積極的な交流のなかから新しい知見が生まれ、より効果的な実践につながります。
 いきなり交流するのが難しいと感じる場合は防災教育チャレンジプランが主催する「防災教育交流フォーラム」などのイベントに参加し、同じ目的や課題を共有する実践団体と交流してみるのも良いでしょう。皆さんと同じような課題を持ち、また解決に向かって取り組む「仲間」が見つかるはずです。

 

明るく、楽しく、気軽に実行すること。

最後は、日常生活の中で気軽に継続できる取組を進められるよう、楽しみながら実践することです。防災教育は目に見える成果が出にくいものです。それでいて、長期間に渡って地道な継続が求められる取り組みでもあります。「やらなければならない」という想いだけが強くなってしまうと、自分も周囲も続けるのが苦しくなってしまいます。明るく、楽しく、気軽に実行することからはじめてみましょう。

 

2.4 地域における防災教育を実践する上で重要なポイント

2.4.1 3つの段階を意識する

地域における防災教育の実践には3つの段階があります。

 

【準備】

 地域の災害特性や児童生徒の発達段階、学習テーマ、予算、関係団体との調整など、防災教育を実行するまでの様々な準備の段階です。地味で手間のかかる段階ですが、この段階でしっかりと内容を詰め、関係者と調整を行っておくことがその後の実行・継続段階に影響します。じっくりと時間をかけて準備しましょう(初めてチャレンジされる場合の目安としては実際に授業を行う2~3ヶ月前からの準備をオススメしています)。

 

【実行】

防災教育を実践する段階です。準備してきた内容に基づいて実践します。うまくいかないことがあるかもしれませんが、前述のように「まずは身をもって体験す る」ことが重要です。しっかりと準備をしていれば、大きな失敗をすることはないかと思いますが、それでも「思ったより時間がかかってしまった」とか「うまく伝えたいことが伝えられなかった」「児童生徒が興味をもって参加してくれなかった」などが課題になることもあります。実践の成果を正しく評価するためにも、振り返りシートやアンケートなど実践結果を確認できるような準備をしておくことも大切です。

 

【継続】

準備し、実行したら次は「継続」です。同じ対象(同じ児童生徒)に繰り返し防災教育を実践することは難しいかもしれませんが、同じ地域、同じ学校等で継続することが重要です。また、継続するためには【担い手】や【つなぎ手】を育てていくことも必要です。 なるべく多くの人と協力しながら防災教育を実践し、中心的な人物が異動等によって実践に関わることが難しくなった場合でも、継続できるような仕組みをつくりましょう。予算についても重要で、助成金などをアテにした実施では助成金がなくなったあとが辛くなります。なるべく経費を抑え、無理のない実践を工夫しながら継続します。

 

2.4.2 6つの要素でポイントを整理しておく

手引きでは防災教育実践に関わる要素を次の6つで整理しています。

人【担い手・つなぎ手】
防災教育を実践する担い手(教員やボランティア、場合によっては生徒自身も含む)やつなぎ手(実践をサポートしたり、継続的に関わってくれたりする人たち)のことです。「教育は人なり」という言葉がありますが、防災教育もまた同様です。

運営【組織・体制】
防災教育を実践する主体、受ける主体、そしてそれらをつなぐ組織や体制のことです。特に手引きでは地域から学校へのアプローチを大切にしていますので、学校と地域をまきこんでいけるような組織・体制づくりがポイントになります。

場【時間・場所】
防災教育をいつ、どこで実践するかということです。時間は短い場合は数十分、長い場合は数時間まで幅広く対応できるようなプログラムがあると便利です。場は学校が多いかと思いますが、まちあるきなどは地域が場所となることもあります。

お金【資金・経費】
防災教育実践にどの程度の資金・経費が必要かということです。どれくらいが適切か、という基準はありませんが、公的機関やボランティアの方に指導を協力してもらうなど、なるべく支出を抑えた実践が望まれます。単に「節約のため」ではなく「自分たちの責任でやるのだ」という想いをもって準備することがポイントです。

ネタ【知識・教材】
防災教育実践にどのような知識が必要で、どんな教材を使うか、ということです。はじめはなるべくシンプルで、負担のかからない教材を活用していただくこと をオススメしています。下記に手引き本体にも紹介されており、かつ筆者がこれまでの実践経験から「これから防災教育にチャレンジしてみたい!」という方にオススメする「防災教育実践教材7選-小中学校編-)」を記載しますので、ご参照ください。

1 ぼうさいダック(一般社団法人日本損害保険協会)
 → 学習テーマ例【災害・危険発生時の安全行動の理解】、幼保育園~小学校

2 うさぎ一家のぼうさいグッズえらび(一般社団法人防災教育普及協会,宮﨑)
 → 学習テーマ例【防災グッズ、家庭の備え】、小学校~一般

3 なまずの学校(NPO法人プラス・アーツ)
→ 学習テーマ例【地震災害対応、身近なものの活用、備え】、小学校中学年~一般

4 災害対応カードゲーム教材「クロスロード」(チームクロスロード)
 → 学習テーマ例【災害時のコミュニケーション、意思決定】、中学生~一般

5 災害状況を想像してみよう!(東京大学生産技術研究所目黒研究室、防災教育普及協会,宮﨑)
 → 学習テーマ例【災害状況を想像する、適切な対策をとる】、中学生~一般

6 まちのBOSAIマスター(高齢者住まいる研究会)
 → 学習テーマ例【防災基礎知識、備蓄など様々】、小学校低学年~一般

7 ぼうさい探険隊(一般社団法人日本損害保険協会)
 → 学習テーマ例【地域理解、防災マップ、安全点検】、小学校~一般

※各教材の詳細、学校・家庭・地域における防災教育での活用法についてはお気軽にご相談ください。

手引き本体の巻末には他にも様々な教材やプログラムの紹介ページが、専門家によるチェックのもと掲載されていますので、併せてご覧ください。

コツ【工夫】
過去に行われた(他の地域も含めて)事例や教訓などから、実践を効果的・効率的に行うためのコツや工夫です。実践内容そのものだけでなく、例えば「まず年度初めに●●の●●さんにあいさつに行って、日程や内容の調整をしておく」といった、人間関係に関わるような実務的なことも忘れがちですが重要なポイントです。

 

2.4.3 18のポイント

手引きは、前述の3つの段階と6つの要素を組み合わせた合計18のポイントで整理されています。どの段階で、どんな要素に関連した課題や「つまづき」があるかをイメージしてから手引きを手にとっていただくと、より課題解決がしやすくなります。

(地域における防災教育の実践に関する手引きの概要 より)

 

3.手引きを有効に活用するための6つのポイント

以上のように、手引きはこれまで様々な実践を重ねてきた団体を対象に丁寧なヒアリングを行いポイントが整理されたものです。さらにこの手引きを有効に活用していただくためのポイントを、筆者なりに6つにまとめてみました。

 

3.1 まずは「防災教育はどう実践されるのか」全体像を把握しよう

既に防災教育を実践されている方も、あるいはこれから実践しようという方も、まずは冊子を手に入れる、もしくはインターネットを使って内閣府(防災担当)のページからダウンロードしていただき、ご一読いただくことをオススメします。手引きは防災教育実践を「特定の、誰かができること」から「どの地域の、誰でもできること」にできるよう、作成されています。近年の被災経験地域でも、そうでない地域でも、標準化(スタンダード)された防災教育の実践手法を確認しておくことが大切です。

「とにかく災害や防災について教えれば防災教育になる」という考え方もあります。ですが、発達段階や理解度、環境を踏まえなければ、学びたいという意欲をうばってしまったり、逆にリスクを高めたりしてしまう可能性もあります。指導者が「伝えたい」と思っている内容と学習者(児童生徒、住民)や依頼者(講師依頼等を受けた場合の学校や自治会等)が望んでいることは、同じではないかもしれません。

伝えたいことをそのままぶつけるのではなく、手引きとひとつひとつ照らし合わせながら、順を追って慎重に進めていくことも必要です。

 

3.2 学校関係者など、実践に関わる人に手引きを読んでもらおう

3.1で確認したら、防災教育実践の「担い手・つなぎ手」つくりのきっかけとして、ぜひ近隣の学校関係者や防災関係機関などに手引きを読んでいただくのも効果的です。手引きでお伝えしたい大切なノウハウは、自分(指導者)だけが知っているだけでなく、学校関係者、自治会役員、防災関係機関など知っていることで、より高い効果を発揮することでしょう。A4一枚の「概要版」もありますので、活用してください。

 

3.3 手軽な教材やプログラムから試しにやってみよう、マネしてみよう

前述の「防災教育実践教材7選」のように、過去の実践事例が豊富にあり、教材としてシンプルなものをまず試してみることをオススメします。特に「ぼうさいダック」や「うさぎ一家の防災グッズえらび」、「まちのBOSAIマスター」は、短時間でもできる教材として作成されています。はじめて使ってみる教材としては、適当と言えるでしょう。

 

3.4 まずは継続、それからレベルアップ!

防災教育実践五箇条にも書いてありますが「身の丈に合った」実践が重要です。そしてその実践が「継続」できることもまた同じく重要です。手軽な教材、あるいは新しく考えた教材やプログラムを、学校や地域の防災教育の場面で何度か実践してから、より高いレベルでの実践を目指してチャレンジしましょう。

「時間と労力とお金をたくさんかけて、素晴らしい実践をする」のは大事なことですが、中心人物がいなくなった途端にやらなくなってしまった、水準が維持できなくなってしまった、という事例もあります(「防災教育の属人化」と言っています)」。その地域や学校で、無理なく気長に続けられるような実践が求められます。

 

3.5 成果は広く発信、学校・家庭・地域に伝えていこう

継続していくためには、一人でも多くの理解者(担い手・つなぎ手)が必要です。実践した成果は広く学校、家庭、地域に伝えていきましょう。防災教育チャレンジプランホームページで公開されている、支援事業への応募や交流会への参加も効果的です。

近年はSNS(ソーシャルネットワークサービス、ツイッターやフェイスブックなど)を利用される方も増えている一方で、あまりパソコンやインターネットを使用されない方もいます。地元の新聞社やケーブルテレビ局に情報を提供することも、実際の災害時に有効なつながりになりますので、効果的な情報発信を兼ねた関係づくりといえます。

 

3.6 “関心がない、参加しない、協力的でない”人のことも考えよう

【防災4.0とは】我が国は、その自然的条件から、様々な災害が発生しやすい特性を有しており、これまでの度重なる大災害の教訓を踏まえ、防災に関する取組を推進してきました。特に伊勢湾台風(1959=1.0)、阪神淡路大震災(1995=2.0)、東日本大震災(2011=3.0)は大きな転換点となってきました。気候変動がもたらす災害の激甚化は、これら大災害に相当する可能性があり、行政だけでなく一人一人が災害のリスクとどう向き合うかを考え、備えるための契機となるようあらたな防災減災対策の方向性を打ち出したいという決意を込めて、本プロジェクトの名称に「防災4.0」を冠しました。(内閣府ホームページより)

  
http://www.bousai.go.jp/kaigirep/kenkyu/miraikousou/

 防災4.0未来構想プロジェクトでは、これからの災害リスク対策には防災教育や地域での防災活動(訓練、イベント、ワークショップなど)を通じて、広く国民に防災意識の普及啓発を進めていくことが重要と考えられており、様々な取り組みが進められています。地域防災インストラクターの活動はますます重要になってくると言えます。
 その一方でどのような地域、学校、団体でも「防災に関心があり意欲的で講習や訓練に参加する」人たちばかりではありません。皆さんからしたら「関心がない、行動力がない、やる気がない」と感じてしまう方もいるかもしれません。

 ですが筆者は「関心や意欲」と「行動」は全く別の問題だと考えています。関心があっても、家庭や仕事の都合で参加できない人も多いのではないでしょうか。その人達は本当に防災に、無関心で行動力がないのでしょうか。他に原因はないのでしょうか。地域防災実践で課題を感じたら、その課題の原因が何かを冷静に考えてみることも必要です。

 

4.防災教育実践のススメ

4.1 防災教育の「目的」と「目標」を整理してみる

防災教育を実践するうえでぜひ、一度考えていただきたい、整理していただきたい言葉があります。それは「目的」と「目標」です。

手引きでは防災教育の「目的」を、2.3.1で示したように『地域の防災力を強化する』こととしています。「目的」とはつまり「何のために」という到達点です。

防災教育の目的は「いのちを守る」ことではないのか、と思われるかもしれませんが、「(防災教育を受けた人が)いのちを守れるようになる」だけでは、その人自身も、地域も、災害を乗り越えることはできません。家族や友人のいのちはもちろん、経済的なこと、避難生活、学校や事業所の活動も守られることも重要です。ですが、それら全てを「自分で守れるようになれ」というのは現実には困難です。

学校、家庭、地域、そして社会全体で、ひとりひとりがそれぞれの形で「いのちを守る」ことが必要になります。また「いのち」を守った後は、備蓄品等を活用し、避難生活を乗り越え、復旧・復興へと歩みださねばなりません。「いのち」だけでなく生活や人生を守ることもまた、防災教育においては重要な学習テーマです。その到達点、達成が『地域の防災力を強化する』という目的になります。「いのちを守る」のは、目的を達成するためには欠かすことのできない ”標” のひとつ、つまり目標ということになります。

筆者は防災教育の”目標”として「いのち(生命)=Life」、「生活=Livelihood」、
「人生=Lives」、それぞれ英語の頭文字をとって『3つのLを守る』ことが重要である」と説明しています。

ぜひ学校・家庭・地域で防災教育を実践される際は、学習者が理解しやすいよう、目標と目的を整理して取り組んでいただければと思います。

 

4.2 短時間で実践可能な小中連携の防災授業計画(例)

 神奈川県内市区町村(海沿いで山間部や観光地もある)の教員研究会で作成した、小中連携による短時間で実践可能な防災授業計画例をご紹介します(下図)。小学校6年間、中学校3年間に分けて、段階的に必要最低限のことを学べるよう整理しています。

 避難訓練の前後やホームルームなど、15分~程度で実施が可能な内容を中心に構成しています。それぞれに指導案も作成し、実施する教員の負担を軽減しました。まず安全行動などの習得を徹底し、細かなメカニズムや判断を伴う内容の学習は高学年以降を中心にしています。一度に色々教えるのではなく、児童生徒が過去に学習した内容を少しずつ振り返り、確認しながらより詳しい内容へと踏み込んでいくことで、学びの定着を促します。

 

4.3 地域の防災力を高めるために…

 災害からいのちを守るために学ばなければならないこと、できるようにならなければならないことは数多くありますが、まずは各学校各地域において、小学校低学年で想定されるような基礎知識(例:地震発生や津波想定時の安全行動等)の理解が学校・家庭・地域において徹底されているかどうかを、ご確認いただきたいと思います。

充分な授業時間を確保することが難しい、防災(教育)について専門的な知識を学ぶ機会も限られている、そのような状況だからこそ、シェイクアウト訓練に代表される「必要最低限の防災教育(訓練)」が求められると考えています。手引きには、様々な事例やプログラムも掲載されています。皆さんの地域にとって参考になるポイントや資料があるはずです。また、手引きはすべて英訳されており、英語版をダウンロードすることもできます。2015年3月に仙台市で開催された「第3回国連防災世界会議」において広く国内外に対して発信されており、国や地域を越えた応用が可能であることが示されています。

災害から児童生徒のいのちを守るために必要なのは、皆さんが実践した、あるいはこれから実施する『防災教育』かもしれません。それがどんなに単純な内容であったとしても、例え1回しかできず継続できなかったとしても、その1回がたくさんの人を守ることにつながるかもしれません。

学校・家庭・地域における防災教育実践は、地域の防災力に欠かせない手段のひとつです。手引きを参考に、ひとりでも多くの方が、ひとつでも多くの地域で、防災教育が実践されることを願っています。(2017年6月,筆者)

第29回 【教材あり】公務員志望学生向け防災・災害ボランティア入門講座

【サマリー】
東北地方太平洋沖地震をきっかけとして、災害救援や復興支援に関わる大学生が増えています。各大学による支援や、学生団体での活動も積極的に行われるようになっています。活動経験を活かしたい、地域の防災活動にも貢献したい、という学生や公務員を志望する学生向けの講座を行いましたので、本記事ではその一部をご紹介させていただきます。掲載内容についてのご意見やご要望、各種教材を使った研修等については「お問い合わせフォーム」よりお願いします。


本記事は2016年11月16日に中央大学多摩キャンパスで実施された講座のフォローアップ記事として作成しました。当日の講義内容についての概要をまとめています。

なお、文中記載の法制度に関する説明は、資料作成時点の内容となります。改正等により内容が変更となっている場合がありますことをご了承ください。

 

講座概要

講座は90分という限られた時間の中で3つのパートに分かれて行われました。以下は中央大学ホームページからの引用です。

◎講義1 「防災ボランティアに役立つ!自助・共助・公助のキホン
講師: 宮崎 賢哉 氏 (防災教育普及協会) ※弊会事務局主任を兼務
◎講義2 「災害ボランティアに役立つ!被災された方の生活再建支援」
講師: 高須 大紀 氏 (災害救援ボランティア推進委員会)
◎講義3 「災害時における公務員の役割~現場の声から」
講師: 吉田 敦紀 氏 (日野市防災安全課)

本記事では筆者が担当した部分について記載します。

 

講座資料

講座で配布・使用した資料は以下のとおりです。それぞれ公開されているサイトへのリンクを設定していますので、クリックするとブラウザで表示もしくはダウンロードができます。

 

講義「自助・共助・公助のキホン」

当日の講義はパワーポイントを使用せず、レジュメと板書にて行いました。

 

天災は忘れた頃に???

皆さんは寺田寅彦という方を知っていますか。戦前の物理学者であり、防災に関する様々な教訓、言葉を残していますが、特に有名な言葉(とされる)のひとつが『天災は忘れた頃にやってくる』というものです。寺田寅彦は1935年に亡くなっていますが、この事実と言葉は無関係ではありません。

人間は非常に忘れやすい生き物です。「エビングハウスの忘却曲線」という研究結果があります。人間が何かを一度覚えてから、もう一度思い出して覚え直す場合、時間が立てば立つほど難しくなるというものです。特にその覚える内容が(その人にとって)無意味な記号や数字であったり、接する機会が少ない情報である場合、覚え続けることも、思い出すことも難しくなります。

災害やその教訓を「自分にとって関係のあること」「身近なこと」として考えており、かつ「頻繁に接する」ような人は「天災を忘れる」ことはないかもしれませんが、多くの人にとってはそうではありません。正しい知識や教訓がテレビやインターネット、SNSがなかった時代、伝え続けること、記憶されることの難しさを寺田寅彦は忠告も兼ねて「天災は忘れた頃にやってくる」と表現したのかもしれません。

new_161116_1_31052575745_o (講義の様子)

 

忘れる前にやってきていた"巨大地震"、戦争の怖さ

1940年台初頭、1,000名以上の方がなくなる巨大地震が4年連続で発生していました。1943年の鳥取地震、1944年の昭和東南海地震、1945年の三河地震、1946年の昭和南海地震です。もし寺田寅彦が存命であれば「天災は忘れる"前"にやってくる」に変わっていたかもしないと思うほどです。ではその「巨大地震が連続する」という事実に対する教訓が広く後世に伝えられているかというとそうではありません。ある事情が詳細な記録、教訓が伝えられることを阻害してしまったからです。その事情が『戦争』です。

戦時中の報道管制や戦後の様々な混乱の中に埋もれてしまった情報、記録、教訓。つまり、戦争は人の生命や生活を奪うだけでなく、災害の教訓や記録さえも奪ってしまう恐ろしいものです。こうしたことからも災害対応や防災対策は単なる「教訓」として語り継ぐ、自主的・応急的な活動として取り組まれるだけではなく、明文化・形式化された「法制度」の一部に組み込まれていかなければならないということが分かります。

 

自助・共助・公助の考え方を理解する

具体的な法制度の話に入る前に、日本国民にとって重要な「知恵」のひとつである『自助・共助・公助』についてご紹介します。それぞれの言葉の意味は読んで字のごとくですが『まずは自分の身や家族の安全は自分たちでまもり(自助)、隣近所や地域で助け合い(共助)、公の支援を待つ(公助)』という考え方です。

この考え方をより分かりやすく理解していただくために、講座では簡単なゲームを行いました。筆者が開発した演習プログラム『Disaster-Information&Communication-Exercise:災害情報収集伝達とコミュニケーション演習』の概念を応用・簡略化した名付けて『自助・共助・公助体験トランプゲーム』です。

 

【教材】自助・共助・公助体験トランプゲーム

ルールは非常にシンプルです。人数としては5~6人から5~60人くらいまでが目安です。本記事では30名~40名程度で6班編成、学校の授業等を想定したルールを記載します。トランプの数を増やせば、より多くの人が同時に体験することができます。

但し、このゲームにおけるトランプは災害による『被害』や『復旧復興の過程』を示していますので、増えれば増えるほど大変になります。それも実際の災害と同様ですから、ハードな設定をご希望の方は倍くらいの数でやってみると良いでしょう。指導用スライドを『Slide Share』で公開していますので、必要に応じて指導の際にご利用ください。

 

事前準備

トランプ × 5箱(100円ショップので充分)
・トランプは全ての箱の中身を出し、5箱分をシャッフルします。
・その後、ランダムに53枚ずつ(各マーク13枚の計52枚+ジョーカー1枚)で箱に入れます。
・各箱から1枚ずつ適当に抜いておきます。これだけで準備完了です。

 

当日の進行とルール説明

(1)班編成する

・箱数+1でつくる(今回は6班)、1班人数は大体同じ人数にします。
・1つの班は『行政職員』役に指定します。
・他の班は『住民』役です。トランプを箱のまま1班1箱渡してください。

 

(2)ルールを説明する
・ルールはひとつ。『カードを指定された順番に戻す』ことです。
・混乱する状況を整理し、足りないカード、余るカードを調整し、元に戻していく作業を「被災から復旧・復興する過程」としてイメージします。
・指定された順番とは『スペードのA.K.Q.J.10…2→ハートのA.K.Q.J.10…2→ダイヤ、クラブの2』の順番です。分かりにくいので上記スライドの8ページ目をご覧ください
・足りないカード(事前に5枚抜いたカード)はジョーカーで代用します。
・ジョーカーやカードは『全てバラバラな状態=被災直後の混乱状況』です。
・『行政職員』役だけが「会場全体へのアナウンス=防災無線や広報車」ができます。
・『住民』役は、他班への行き来や会話は自由ですが大声での指示はできません。
・指示や全体の情報が欲しいときは『行政職員』役に頼むしかありません。

 

(3)制限時間を示してスタート
 
・制限時間は 10分間 です。
・この時点で参加者がイマイチ理解できていなくてもかまいません。
・とにかく「カードを指示通りの形に戻して持ってくる」よう指示してください。

 

(4)終了とまとめ
・全てのトランプが回収される、もしくはタイムアップになったら終了です。
・以下のような事後指導をすることで「自助・共助・公助」の大切さを感じてもらいます。

 

ゲームの特徴と指導ポイント

このゲームのポイントは『行政職員』役の動きです。行政職員役はカードがありませんから、直後に何をするかでその後の対応が変わります。ただ、災害時にどこでどんな被害が出ているか、つまりどこの班にどのカードがあるか分からないという点では、住民と同じなのです。従って住民がいきなり「なんとかしてくれ」と言ってきたとしても、行政職員役も状況が分からずどうすることもできないのです。

この状況と作業が『発災初期の状況、行政機能の低下』を示しています。

 

適切に対応するためには情報が必要ですが、その情報は『住民』役が自宅や周囲の被害を確認する、つまり手元のカードの過不足を確認することによって得られます。もしくは『行政職員』自ら地域に出て情報を集める、つまり各班に出向いてカードの情報を集めることが必要になります。

この状況と作業が『自助、まずは身近で情報収集と応急対応』の必要性と役割を示しています。

 

また、カードの過不足の調整を全体でやろうとすると混乱します。例えば「スペードの8はないか」と住民が探し回ったとします。3つの班をまわっても見つからないこともあります。なぜならカードはランダムですから、「隣の班がスペードの8を5枚持ってた」という状況もあり得るのです。こうした状況では、やたらに動き回るのではなく、隣近所との助け合う、つまり隣接する班と情報共有することが効率的です。

この状況と作業が『共助、隣近所や地域の情報共有・助け合い』の必要性を示しています。

 

隣の班と調整しても過不足があれば他の班にもカードを提供したり、受け取ったりしなければなりませんが、繰り返し述べているように、どのカードをどの班が多く持っているか、足りないかは分かりません。そこで重要になるのが『行政職員』役です。余ったカードや足りないカードの情報を行政職員役が把握できれば、全体にアナウンスをかけることで飛躍的に調整スピードが上がります。例えば『●●班にスペードの8がないので▼▼班のスペードの8を●●班に届けてください』という指示を出せば確実にカードを揃えていくことができます。

new_161116_2_31052576105_o (トランプゲームの様子)

『行政職員』役に情報を提供する流れは、被災後の公的支援を受けるための様々な手続きをイメージしています。つまり「わが家(班)でこんな被害が出たから支援して欲しい」と伝えることです。ただ、その情報を伝えたからといってすぐに対応してもらえるとは限りません。

 

ゲームでは「分かりました、すぐにやります」でも構わないのですが、実際は大変な時間がかかります。そこで必要になるのが、実際に支援を受けるために必要な「被害を受けていることを証明する」書類です。つまり、り災証明書や被災証明書の発行なのです。 この状況と作業が『公助、被災状況を確認してからの対応と、支援の手続き』の必要性と役割を示しています。

 

カードをスムーズに整理するためには全員の協力が必要です。『行政職員』役にとても強力なリーダーがいて、徹底的に指示を出したとしても、実際の整理作業にあたるのは参加者1人1人なのです。『住民』が非協力的だったり、指示を理解しなかったりしたら、作業は遅れてしまい時間内に完成できません。逆に1人1人が自分のこととして、自助、共助、あるいは公助の役割を理解して望めば時間内に完成させることは難しくありません。 事前指導と事後指導を含めても20分程度でできますので、防災講座や研修会のアイスブレイクとして実施していただくのもよろしいかと思います。

 

災害救助法について

ここからは関係法制度の説明ですが「法律や制度なんて面倒くさい、そんなの知らなくても何とかなる」と思われるかもしれません。ただ、前述したように法律や制度とは過去の災害の教訓や知見が集約された重要な「財産」なのです。何より公務員・行政機関は法令を遵守することが前提ですから、あらすじだけでも理解しておいて損はありません。 「災害救助」とありますが、被災地に必要な救助とは一体何でしょうか。法律上は10種類が定義されています。

 

ポイント:救助の種類

① 避難所、応急仮設住宅の設置
② 食品、飲料水の給与
③ 被服、寝具等の給与
④ 医療、助産
⑤ 被災者の救出
⑥ 住宅の応急修理
⑦ 学用品の給与
⑧ 埋 葬
⑨ 死体の捜索及び処理
⑩ 住居又はその周辺の土石等の障害物の除去

また、これらの救助を行うにあたっての原則があります。『平等・必要即応・現物給付・現在地救助・職権救助』の5原則です。それぞれについての細かな解説は本記事では割愛しますが、最初の原則『平等』について少し補足しておきましょう。

 

ポイント:平等と公平の違い

『平等』と『公平』の違いとは何でしょうか。平等とは「全員が同じ」救助・支援が受けられることです。法律上、お金や権威のある無しで救助・支援に差があってはいけないという考え方です。ただ、筆者も経験がありますが「平等にはできない場面」も存在します。

避難所で水を配布しようとしたら足りないことがわかった。でも配給の列には1歳半の乳幼児を連れたお腹の大きいお母さんがいる。「平等」に配ったら列の後方に並ぶそのお母さんに水は渡らない。「平等」にならないから水の配布を中止すべきか。難しい状況です。

例えば、「現在、水が不足しています。列に妊産婦さんや乳幼児をお連れの方がいれば優先します」というルールをアナウンスをしたとします。「平等」ではありませんが「妊産婦や乳幼児には水が必要であり、そのルールを他の人も守っている」ということが徹底されれば、列に並ぶ人も納得できます。それがルール下における『公平』という考え方です。嘘偽りでもらおうとする人がいるかもしれませんが…それは話が逸れるので別の機会とさせてください。

 

ポイント:救助に係る費用と柔軟な判断

平等にせよ公平にせよ救助を行うためにかかる費用があります。もし都道府県や市区町村が「お金がないから救助できません」となってしまったら大変です。都道府県が支弁する救助費用が一定額以上になった場合は税収に応じて国が負担します。 お金が発生する以上はいろいろな基準が必要です。限られた財源を効果的に使わなければならないわけですが、かといって杓子定規に判断するのも考えものです。

そこで、救助法の適用基準や各種の支援は柔軟な判断が適用されるケースもあります。 広域避難者(被災都道府県から避難して他の都道府県に避難・居住する方)をどう支援するか、その経費はどうなるか。避難指示がなく自主的な避難であったら?仮設住宅ではなく民間の施設を借り上げる「みなし仮設」の予算は?帰宅困難者に救援物資を提供した民間施設の支出はどうなる? 防災担当部署だけでなく、土木建築・道路整備、環境、福祉など様々な部署が関わる課題です。本記事では細かく説明しませんが、講座である程度紹介しています。

 

災害対策基本法について

災害救助法の後に定められたのが災害対策基本法です。そのきっかけとなった災害が『伊勢湾台風』です。 伊勢湾台風は東海地方を中心に県をまたがって大きな被害を出しました。非常に多くの市町村に災害救助法が適用されましたが、市町村・県を越えた災害ということで、事務処理その他はじめ様々な対応に課題が出ました。 そうした教訓から、平時の防災対策や国・都道府県・市区町村の役割を明確にしておくために定められたのが災害対策基本法です。日本の防災対策の核となる法律です。国家・地方、消防警察自衛隊、いずれの公務に携わりたいと思っている方もぜひ一読していただきたい法律です。

 

ポイント:住民の責務とボランティアとの連携

災害対策基本法もいろいろと紹介したいことがたくさんあるのですが、本記事では住民の責務とボランティアとの連携について触れます。「防災は誰の責任か」と考えたとき、実は「住民の責務」ということが定められています。それは「自ら災害に備え、自発的に訓練に参加すること」です。法律上の責務として明記されているのですから、防災の責任の一部は私たち国民ひとりひとりにあるのです。

もちろん、国や都道府県、市区町村は防災計画を定め推進していかなければならないことも定められていますが「何でもかんでも行政の責任だ」というわけではないことが分かります。そのことは前述した「自助・共助・公助体験トランプゲーム」の部分でもご理解いただけているかと思います。 『自助・共助』の概念として比較的新しいのがボランティアとの連携です。第五条の三に以下のような文面があります。

 

  • (国及び地方公共団体とボランティアとの連携) 第五条の三 国及び地方公共団体は、ボランティアによる防災活動が災害時において果たす役割の重要性に鑑み、その自主性を尊重しつつ、ボランティアとの連携に努めなければならない。

 

努めなければならない、なので努力義務ですが行政とボランティアの連携が明文化されたということは、防災・災害ボランティアに関わる者にとっては大きな前進なのです。学生団体などで日頃から地域で活動している皆さんは、その活動が法律上も定められた重要な活動であることを知ってほしいと思います。

 

被災者生活再建支援制度について

筆者が勝手に「防災3法」と呼んでいる最後の1つが『被災者生活再建支援法』です。これは1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに生まれた法制度です。自宅等に被害を受けてしまった方を支援する国の仕組みとして生まれました。被災された方の「ゴール(目指すところ)」は一言では表せませんが、重要になるのが「生活再建」という言葉です。文字どおり「生活」が「再建」できたと感じられる、思える状態です。

 

ポイント:生活再建に必要なこと

では具体的に何がどうなったら「生活」が「再建」できたと感じられるのでしょうか。阪神・淡路大震災において行われた調査では『すまい』と『人と人とのつながり』が重要であるという結果が出ています。つまり、仮設住宅など「自分のすまいとして考えにくい」状況にいる間や「人と人とのつながりが以前のようになれない」状況では、"災害は続いている"と考えられるということです。 「すまい」の再建にはどうしても時間とお金がかかります。だからこそ『公助』、災害救助法や被災者生活再建支援法に基づく公的な支援が必要です。

ですが、「人と人とのつながり」は、私たち一人一人の行動でより良いものにしていくことができます。むしろそれは法律や制度で定めたからといって、良くなるものではないのです。 大学が地域と関わるボランティア活動はもちろん、自らが被災してしまったときも、あるいはどこかに支援にいくときも「人と人とのつながり」をつくることが重要だということが、法制度の意味を含めてご理解いただけたでしょうか。

 

講義まとめ

筆者は法制度の専門家でもなければ公務員でもありません。ですが、阪神・淡路大震災から始まり、様々な被災地支援や復興支援活動に携わるなかで経験してきた現地の課題や教訓が、法制度の改正によって少しずつ良くなっていることを感じています。 まだまだ課題はあるかもしれませんが、法律や制度は人を縛り罰する部分もある以上に、人を守り、助けてくれるものでもあるのです。

特に本記事で紹介した3つの法律は先人の教訓と知恵が盛り込まれており、何よりも被災された方、災害の犠牲となった方、その遺族の方の声なき声が含まれたとても意味深い法律だと思っています。 もし公務員を志望される学生さんが本記事をご覧になっていただけているようでしたら、皆さんが公務員となったとき、もし災害が起きたらぜひそのことを思い出してください。部署や仕事に関係なく、何かできることがあるはずです。

長文最後までお読みいただきありがとうございました。

 


【筆者】※「防災ミニ講座」の内容は筆者の見解であり、組織を代表するものではありません。
宮﨑賢哉(社会福祉士)
 災害救援ボランティア推進委員会主任/(一社)防災教育普及協会事務局長
 (公財)日本法制学会防災福祉グループ長

在学中からセーフティリーダーとして被災地支援活動に参加。2005年(公財)日本法制学会入社。大学での災害救援ボランティア講座や防災教育を担当。防災教育コンサルタントとして都立公園運営管理や、社会福祉士としての活動にも取り組む。

第28回 気軽に楽しめる防災教育教材、防災ゲームの一覧

【サマリー】
阪神・淡路大震災以降、防災に関する教育教材やゲームにはいろいろな種類のものが開発されています。個人やNPO法人、民間企業、消防局や都道府県まで開発者も様々です。市販されている教材もあれば、無料でダウンロードできるものもあります。 本記事では、筆者が体験、指導経験があり、防災教育教材、ゲームとして有効性を確認しているものを一覧でまとめました。掲載についてのご意見やご要望、各種教材を使った研修等については「お問い合わせフォーム」よりお願いします。


学習テーマ別教材一覧

防災教育教材やゲームは、学習テーマや目的に合わせて使用することが重要です。それぞれ、主なテーマとしていること、前提条件や想定災害があります。

 

地震災害への備え、初動対応

・防災すごろくゲーム「GURAGURA TOWN」▶ NPO法人プラス・アーツ
・防災カードゲーム「なまずの学校」▶NPO法人プラス・アーツ
・災害対応シミュレーションゲーム「ダイレクトロード」▶神戸市消防局

 

風水害への備え、避難行動

・防災教育教材「避難行動訓練EVAG(豪雨災害編)」 ▶国土防災技術株式会社
・▶気象庁ワークショップ「経験したことのない大雨、その時どうする?」

 

避難所運営、避難誘導

・避難所運営ゲーム「HUG」 ▶(静岡県)

 

防災グッズの確認

・学校向け教材「うさぎ一家の防災グッズえらび」▶★EDUPEDIA掲載
・防災教育教材『カードで学ぶ非常持出袋』~大学生が考えた防災教育教材~▶神戸学院大学防災・社会貢献ユニット
・防災ビンゴ(東京臨海広域防災公園)

 

災害時のコミュニケーション、意思決定

・災害対応カードゲーム教材「クロスロード」▶チームクロスロード
・学校向け教材「災害時のコミュニケーションを学ぼう」▶★EDUPEDIA掲載

 

災害時の状況をシミュレーションする

・災害状況イメージトレーニングツール「目黒巻」▶東京大学生産技術研究所目黒研究室
・学校向け教材「災害状況を想像する力を身につけよう」▶防災ミニ講座

 

安全行動や様々なノウハウを学ぶ

・防災カードゲーム「シャッフル」▶(NPO法人プラス・アーツ)
・幼児向け防災教育用カードゲーム「ぼうさいダック」▶(一社)日本損害保険協会
・小学生向け防災教育プログラム「ぼうさい探険隊」▶(一社)日本損害保険協会
・学校向け教材「災害時のトイレアクションを考えよう」▶★EUPEDIA記事掲載

 

障がい者、災害時要配慮者の備え

・iPadを使った防災教育アプリ「スキナのセレク島」シリーズ ▶パステルハートプロジェクト
・「障害者の災害対策チェックキット」 ▶国立障害者リハビリテーションセンター研究所

 

教材集・事例集

・▶日本赤十字社による防災教育用教材、資料等
・▶東京防災及び防災ノート小学校~高校版、東京都
・▶「地域における防災教育の実践に関する手引き」、(一社)防災教育普及協会

 

※各教材の購入、ダウンロードについてご不明な点があれば弊会までお問い合わせください。

※「EDUPEDIA掲載」は『先生のための教育事典EDUPEDIA』に関連記事が掲載されています。教材や指導案、指導方法をダウンロードできますので、併せてご確認ください。 ▶ EDUPEDIAホームページ

 

体験イベントの様子

体験イベントの様子については、下記でご紹介していますので、教材やゲームの使用イメージを確認したい方はぜひご覧ください。
一般社団法人防災教育普及協会【イベントレポート】
東京臨海広域防災公園ブログ

 

教材やゲームの効果的な活用方法について

教材やゲームを活用するために重要なポイントや「アクティブ・ラーニング」についての記事をご参照ください。

第26回 防災教育とアクティブ・ラーニング
 



【筆者】 ※「防災ミニ講座」の内容は筆者の個人的な見解であり組織を代表するものではありません。
宮﨑賢哉(防災教育コンサルタント・社会福祉士)
 災害救援ボランティア推進委員会主任/(一社)防災教育普及協会事務局長
 (公財)日本法制学会防災福祉グループ長
在学中からセーフティリーダーとして被災地支援活動に参加。2005年(公財)日本法制学会入社。大学での災害救援ボランティア講座や防災教育を担当。防災教育コンサルタントとして都立公園運営管理や、社会福祉士としての活動にも取り組む。

第27回【教材あり】災害VC運営訓練・ボランティア対応ロールプレイ

【お詫び】本記事中の資料ダウンロードリンクに不備があり、ダウンロードができない状態にありました。現在は修正を完了しております。クリックしてからダウンロードまでしばらく時間がかかりますので、ご注意ください。

 

【サマリー】
社会福祉協議会等が開設・運営する災害ボランティアセンター(VC)は、被災地にとって欠かすことのできない組織です。各地区の社会福祉協議会で訓練が行われていますが、マニュアルや様式が整備できていない、実践的な訓練に取り組めていない、ということころもあるようです。本記事・教材ではどんな地域でもある程度柔軟に対応できる、訓練用教材と災害VCの基本についてご紹介します。

 


1 災害ボランティアセンター(VC)とは

 

災害ボランティアセンター(以下「災害VC」)とは、大規模災害が発生した際に、被災した地域・住民を支援しようと駆けつけるボランティアの力を有効に活かすために、支援を必要とする人(活動先)と活動を希望する人(活動者、ボランティア等)をコーディネートする役割や活動中の安全衛生管理などを担い、被災地域の復旧・復興支援に取り組む組織のことです。常設(災害が起きる前から)されている地域もありますが、ほとんどは災害が発生した後に、地域の福祉活動に取り組む社会福祉協議会(以下「社協」)等により、自治体との協定に基づき開設されます。

 

注意しなければいけないのは「ボランティアセンター(市民活動センター等ともいう)」は常設されていることが多い、ということです。同じ「ボランティアセンター」でも「災害ボランティアセンター」とは役割が異なります。ほとんどは社協の中で運営されていますが、独自に設置されている場合もあります。地域のボランティア活動全般(災害ボランティアも含めて)を「ボランティアセンター」もしくは類似の組織が担うことが多いです。一般的に略して「ボラセン」と言っています。より詳しく知りたい方は、最寄りの市区町村社協や"ボラセン"を調べて、お問い合わせください。参考までに、筆者が10年以上お付き合いのある、豊島区民社協さんのリンクを掲載しておきます。

豊島区民社会福祉協議会
豊島ボランティアセンター
災害ボランティア登録者大募集!

 

1.1 関係機関の整理

まず災害VCに関わる機関や団体を整理しておきましょう。

 

▼都道府県(行政)
都道府県は危機管理・防災課等が「災害対策本部」を立ち上げ、ボランティア(市民活動)や医療福祉、教育等に関わる各部署が災害対策本部と共に災害対応にあたります。都道府県の枠を超えるような大規模災害時の広域連携調整などで関わることが多いでしょう。首長の判断や発言が災害VC運営や広域連携に大きな影響を与えることもあります。都道府県社協と共に平時から連携しておくことが求められます。

 

▼都道府県社協
県域での災害VC(災害ボランティア本部等ともいう)を開設・運営したり、都道府県や他県、市区町村社協による災害VCの連絡調整を行います。よく勘違いされるのが「都道府県社協は市区町村社協の上部組織=本社と支社、"上から落とせば"=比喩的表現です=いいだろう」といった考え方です。あくまで市区町村のことは市区町村のことであり、都道府県社協の指示命令に従うといった関係ではありません。

 

▼市区町村(行政)
市区町村は都道府県と同様、災害対策本部や関係部署による対応を行います。市区町村の社協や関係組織と地域防災計画等に基づく協定を締結し、災害VCの開設・運営に関わります。市区町村社協の災害VCマニュアルでは「市区町村からの要請を受けて」開設する、という項目が含まれていることが多いです。

 

▼市区町村社協
災害VCの実務的な運営を担います。市区町村をまたがる被害が出ることもあるため、近隣社協との連絡調整や、災害VCの設置場所と被災場所の中継地点となる「サテライトセンター」の運営も行います。但し市区町村社協の人員では到底対応しきれないため、県域を超えた社協職員やボランティアの応援を受けながら対応します。

 

▼各種連絡会・協議会、職能団体、広域ネットワーク等
県域、市区町村で「連絡会・協議会」を設置し、連携体制を整えている地域もあります。社会福祉士会や介護福祉士会などの職能団体や、専門NPO・NGO等による広域ネットワーク組織等も災害VC運営に関わることがあります。

 

1.2 迅速かつ適切な支援のための広域連携

災害VCは社協職員や、上記の関係団体が連携して開設・運営されます。ですが、災害によって被災地の社協及び職員が被災することもあります。そうした場合に備えて、関係団体などによる広域連携による職員派遣などの支援も行われます。被災地の社協に全国から他地域の社協職員やボランティア等が駆けつけ、災害VCの運営支援などに携わっています。

その経験を全国的な支援体制として整えよう、という動きもあります。課題は様々ですが、経験豊富なNPO・NGOや内閣府(防災担当)も関わりながら、そのような体制が検討されています。災害VCは被災者支援の中核的な役割を担い、行政対応が行き届かない細やかな生活上のニーズに対応していくうえで重要な組織だと認識されている、と言えます。

だからこそ「外部からの支援をどう受け入れるか」という『受援(じゅえん)』の考え方も重要になるですが…これはまた別の機会に。

 

1.3 設置・立ち上げ・運営・閉所(移行)について

細かいことですが大事なポイントです。

災害VCは原則として被災地の社協が『設置』します。『設置』とは「私たち(都道府県または市区町村あるいは両方)は◯◯(場所)に災害VCを開設しますよ!」と公に発表することです。災害VCを立ち上げることと、その場所が決められたという状況です。『設置』の判断は各社協のマニュアルに定められていますが、原則として自治体の要請に基づく社協内の災害対策本部(社協の会長、役員、事務局長等で構成される。自治体の災害対策本部とは異なります)の判断で行われます。概ね、災害発生から24時間以内に判断されます。

『設置』は立ち上げと場所が決まっただけで、中身は空っぽの状態です。次に『立ち上げ』に移ります。『立ち上げ』の段階で、指定された場所への人員配置(職員や支援者のスケジューリング・労務管理等)や資機材搬入などを行います。災害VCが機能できる状態にします。概ね『設置』から72時間以内に『立ち上げ』が行われます。

次に『運営』です。『立ち上げ』された災害VCを、閉所または移行するまで継続していくこです。次項で示すような役割を担いながら、被災地・被災された方の生活支援を中心に活動します。

最後が『閉所(移行)』です。災害VCはあくまで災害によって被災された方の生活支援が中心です。そして、その支援が"通常の社会福祉協議会の福祉的業務"や地域住民同士の互助で行えるようになり内外からのボランティアの必要性がなくなる(あるいは相対的にきわめて小さくなる)ようになれば、閉所・移行の時期です。『閉所』という表現だと「もう何もしてもらえないのか」という印象をあたえることもありますので、「復興支援センター」というように名称を変えて『移行』する場合もありますし、社協や常設のボランティアセンターの中に機能が取り込まれる場合もあります。

 

1.4 主な役割

災害VCの主な役割は以下の5つが一般的です。他にもいろいろな考え方がありますが、まずこの5つをなるべく早急に行える態勢づくりが重要と言えます。

(1) 被災された方、地域の現状をできるだけ細かく把握・整理すること
(2) 災害ボランティアに関する情報収集・発信
(3) 被災された方からの要望、ボランティア派遣依頼(ニーズともいう)の把握
(4) ボランティアコーディネート(調整)機能の発揮
(5) 行政や関係団体・機関との連絡調整

 

2 運営に係る主要業務7分類

ここで示す各班の名称、業務は一例です。詳しくは最寄りの社会福祉協議会、ボランティアセンターで作成されている、災害ボランティアセンターのマニュアル等をご参照ください。
本記事では主要な業務を7つの「班」で編成しており、関連業務を「係」として分類しています。これは組織的な危機管理・対応においてかねてから国内でも導入が必要とされているICS[Incident Command System,米国で生まれた現場指揮システム、警察・消防・軍など異なる組織が連携して活動できるよう、命令系統や管理方法が標準化される]において、指揮者・管理者が管理できる部下の人数が3人~7人と想定されていること、概ね5人程度が最善であることなどを考慮しています。

 

2.1 センター長、副センター長(班長会)

センター長、副センター長及び班長会(スタッフミーティング)は、災害VC全体の統括や方針、意思決定が主な役割です。基本的には各班長からの報告・連絡・相談をもとに決めていきますが、各班長からの情報は他班に関わることもあります。センター長や副センター長の一存では解決できること、できないことがありますので、必要に応じて班長会を臨時で開く、行政や関係団体との会議を開くことも重要です。いざというときに体調を崩したり、相談したいときに見つからなかったりすると大変です。どっしり構えてもらい、必要な時にすぐ対応していただけることが重要です。

 

2.2 総務班

▼総務・会計係
災害VCはボランティアと被災者(ニーズ)をつなぐ、という役割を果たすために、それぞれへの対応だけでなく組織的・継続的運営のための様々な事務処理が発生します。前述した関係団体などとの連絡調整に係る文書作成や連絡調整、財務会計に関する事務などです。業務内容が内容だけに、原則として社協職員が担うことが多いようです。財政や会計に関する専門的な知識がある、活動経験が豊富と(自称する)いう場合ても、まったく見ず知らずの外部ボランティアなどに財務会計や重要な連絡調整を任せるはリスクが大きすぎます。職員が担えるよう、日頃の教育訓練が求められる役割です。

 

▼情報・広報係
被災地の情報収集やチラシ、ホームページやSNSを使った情報発信・広報などを行います。昨今ではホームページやSNSを調べて被災地に行くことが当たり前になっています。ホームページやSNSへの記載内容やタイミング次第で、その日その週末のボランティア数が大きく増減することがありますので、災害VCの広報周知を考えるトレーニング・プログラムがあるほどです。また、地元メディアとのお付き合いも重要です。ボランティアや何らかの支援が必要な場合、個人レベルでメディアに情報が届くと後でトラブルになることもありますが、きちんと災害VCや災害対策本部を経由して情報共有しておくことが効果的な支援につながります。初期は大手メディアが入ることが多いかもしれませんが、最終的な住民支援の力になるのは地元メディアです。情報・広報係の大切なパートナーと言えるでしょう。

 

▼総合受付係
災害VCにはひっきりなしに各方面から電話がかかってくることもあり、専属の半編成をしたほうがスムーズです。行政・社協等の本部からの情報、ボランティアや外部団体からの問い合わせ、被災された住民からの連絡など様々です。速やかに対応しながらも、重要な情報はきちんと記録・伝達することが求められます。この時点で各班に情報をまわしても具体的な対応は難しいので、確認が必要なことは総合受付から各班へ確認し、回答するようにします。規模が大きい場合は総務班から独立させる方法もあります。

 

2.3 ニーズ(ボランティア依頼)班

▼ ニーズ係
総合受付からのニーズ依頼を精査、必要に応じて確認してニーズ票を作成します。ボランティアに対する指示・連絡のベースとなるので、ニーズ票を分かりやすく具体的にする、関係する資機材や情報を整理しておくなどが求められます。

 

▼ 地図作成係
予め災害VCまたはサテライトセンターが担当するエリアの住宅地図をもとに、地図のベースを作成しておきます。ベースに記入するなどして、ニーズ票に添付する活動先地図などを作成します。近年は被災地でも電源・インターネット等の環境が整っている場合も多く、ボランティアもスマートフォンやタブレットを持参しているので、QRコードを作成したりナビを活用したりしています。ただ、それらが使えない方もいるのでアナログ地図の作成も重要です。

 

▼ 現地調査係
ニーズ票、地図を基に活動先の状況を調査します。ボランティア依頼が本当にボランティアで対応できる作業なのか、期間や人数、資機材、アクセス、依頼者の状況などを確認します。この確認がないとボランティアを派遣してもうまく活動できない、トラブルが起きるといったことが想定されます。このため「ボランティア依頼からボランティア派遣には2日以上かかる」場合もあることを念頭に置くことが必要です。

 

2.4 ボランティア受付班

個人、団体のボランティアの受付や登録作業、ボランティア保険天災コースの加入確認、名札作成、集計などを行います。時間によって業務量に差があり、一般的には朝の受付時がピークで、以降は集計作業などが中心となり、余裕があれば他班のサポートなどを行います。

 

2.5 コーディネート班

▼オリエンテーション係
ボランティアに対するオリエンテーション(ルールや流れ、注意事項の説明や各種案内等)を担当します。人数が少ない場合は他班・他係兼務でも良いのですが、ボランティアの人数が増えてくる(500人~1,000人以上/日など)と専属の人がいないと対応しきれなくなります。送り出しや迎えを兼務する場合もあります。一部のオリエンテーション(案内誘導や資料配布など)業務には地元の中高生が参加することも少なくありません。中高生から支援の希望があれば、こうした活動に取り組んでもらうことも効果的です。

 

▼コーディネート係
ボランティア受付の情報と、ニーズ(ボランティア依頼)の情報を元にコーディネート(調整)します。単純に「その日のボランティア:ニーズ」という関係だけでなく、都道府県域を超えた支援や長期的な支援、大人数の継続的な活動との調整なども含まれます。言葉で説明する分には簡単なのですが、実際にやろうと思うとかなり複雑で慎重な判断を迫られるケースがあります。負担も大きくなるので「デキる人」にだけ任せっぱなしにすると、いざというときのリスクが大きくなります。できるだけ複数人で手分けをしつつ協力して業務にあたります。専門的な知識や経験を備えた方もいますので、そうした方々の力を借りるのも有効です。
ただし、「専門的な経験がある」ことが優れたコーディネーターの要件とは限りません。「なんとなくテキパキ動いていくれる、地元の元気なおじちゃん・おばちゃん」といった方がコーディネーター的役割を果たしている場合も多々ありますし、経験豊富でもトラブルの原因になるようなコーディネーターがいる場合もあります。できるだけ、地元の方や社協職員中心で回せるような平時の教育訓練、組織化ができると良いでしょう。

 

▼マッチング・送り出し係
コーディネートが完了したものをボランティアに伝え、チーム編成やリーダーの指定、活動についての個別オリエンテーション、出発から報告までの流れの説明などを担当します。ある程度慣れているボランティアの方であれば、流れや注意事項などはわかっているので多少省略することもできますが、どこに何があるか分からない、次にどうしたらいいか迷ってしまう、といった初めての方が多い場面では重要な役割です。

 

2.6 資機材・車両管理班

ボランティアが使用する資機材や車両の管理をします。活動によっては資機材や車両の数が非常に多くなるので、ボランティア向けと災害VC運営向けは分けてください。災害VC内部の資機材や車両の管理は総務で管理すると、ボランティア用と混在しにくくなります。

 

2.7 安全衛生・救護班

ボランティアの安全衛生のため、消毒作業や案内周知を行います。資機材管理班と活動エリアが近くなります(戻ってきたボランティアの泥落としや消毒、各種消毒液や薬品関係の管理など)ので、必要に応じて資機材管理班と共に活動します。救護班はできるだけ分かりやすい場所に設置し、看護師や保健師など医療従事者や応急手当の知識がある方にご協力いただきます。また、いざというときのために近隣の医療機関や重篤な症状がある場合の緊急搬送方法なども検討しておきます。

 

3 ボランティア活動の流れ

一般的な災害VCにおけるボランティア活動の流れです(下記)。細かい点で違いはあるかもしれませんが、大筋は変わりません。「郷に入っては郷に従え」という言葉もありますが「絶対うちのやり方のほうが効率的だ、こうすべきだ」という意見は大事だと思いますが、原則はその地域のやり方に沿って行います。なぜなら、その地域・社協はその流れで訓練を続けている可能性があり、それを安易に変えれば関わる全ての人に影響するためです。

外部支援の方で、本人は改善に向けた善意なのですが「言うだけ言っていなくなってしまう」方もいます。
ですが被災地・地元社協の方は長距離走、しかもゴールが見えない長距離走です。これまで10km走ってきて、これから100kmかそれ以上、走るかもしれないと人に対して、100mしか走らないと分かっていて、あと10m走れば良い短距離走の人はどのような言葉をかけるべきでしょうか。
「なんでそんなゆっくり走ってるんだ!」とは、言いませんよね。

少し話がそれましたが…活動の流れや各種様式の扱いは地元の状況をくれぐれも尊重していただき、変更や修正はたとえそれが合理的な方法であったとしても、必要最小限に留めるようにしていただければと思います。

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(下記教材訓練様式_7)

 

4 災害VC訓練用プログラム教材「ボランティア対応ロールプレイ」

実際に災害VCの役割や各班業務を意識しながら行う訓練プログラムについてご紹介します。なお『ロールプレイ』とは、台本(ロールカードという場合もある)に定められた役割に従って演じるものです。今回ご紹介するのは「災害VCの運営スタッフ役」と「一般の個人ボランティア役」に分かれておこなうロールプレイのプログラムです。

 

4.1 教材ダウンロード

下記に教材資料集をzipファイルでアップロードしています。別途「解凍ソフト」が必要な場合があります(WIndows10などではダブルクリックするだけで開けます。うまく閲覧できない場合は個別にお問い合わせください。教材はすべて編集可能・再利用自由です。使用に際しての許可申請なども不要です。ご自由にお使いください。

▶ 【教材セットダウンロード】saigaivcrpg_siryou2016.zip
▶ 【アンケート結果ダウンロード】saigaivcrpg_kaitou2016.pdf

 

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詳細は上記資料集の中にある「参加者資料_1 ボランティア対応ロールプレイ説明資料」や「参加者資料_2 タイムテーブル等事務資料」を参考にしてください。

 

4.2  実施のようす

教材作成及び写真提供は都内社協様にご協力いただきました。

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5 まとめ

上記で紹介した教材・プログラムは、大きめの会議室が1つあればできますし、指導員なども必要ありません。実際に、最初は僕がご協力しますが、その後は各社協内部で研修を続けられているところもたくさんあります。すでにマニュアルがあって、訓練を続けられているところはそちらの参考にしても良いですし、これからマニュアルをつくる、あるいはまだ訓練を実際にやってみたことはない、というときはこちらのサンプルをそのまま使って練習しているのもよいでしょう。

社協職員の皆さま、関係団体の皆さまの教育訓練の一助となれば幸いです。

 


宮﨑 賢哉 / 災害救援ボランティア推進委員会主任、(一社)防災教育普及協会事務局長
 阪神・淡路大震災以降に被災各地で活動し、2002年にセーフティリーダー認定。学内で学生団体を設立し、災害支援や防災に取り組む。2004年(公財)日本法制学会(災害救援ボランティア推進委員会の運営法人)入社後は、経験を活かして大学での災害救援ボランティア講座や学生支援を担当。教育・福祉、公園指定管理など幅広く活動中。

第26回 防災教育とアクティブ・ラーニング

第26回 防災教育とアクティブ・ラーニング
~学校・家庭・地域における効果的な防災啓発~

 

1 本記事について

本記事は平成28年1月に気象庁で開催された気象キャスター向け講習会『防災教育とアクティブ・ラーニング~より効果的な防災啓発に向けて~』における講義資料につい補足説明を加えたものです。なお、同様の記事は『先生のための教育辞典 EDUPEDIA』にも掲載されています。読者の方にとって【防災教育とアクティブ・ラーニングについての基本的な用語や考え方を理解し、学校・家庭・地域等での効果的な防災教育、防災啓発について考えるヒントになる】ことを目的に執筆しています。

本記事の構成は以下のとおりです。

 

  1. 本記事について
  2. 講義スライド
  3. アクティブ・ラーニングとは
  4. 目標を明確にする力
  5. 評価と改善の考え方
  6. 模擬授業
  7. 地域における効果的な防災教育
  8. まとめ

 

本記事は学校における防災教育の視点を中心に構成しています。地域における防災教育の実践については下記の記事をご参照ください。
●地域における防災教育の実践に関する手引きの解説と教材紹介

 

2 講義スライド

研修で使った講義スライドを「SlideShare」にアップロードしています。自由に閲覧・ダウンロードできますので、こちらを参考にしながら本記事を読み進めていただくと、分かりやすくなります。SlideShareを閲覧できない場合や、印刷したい場合はPDF版をご利用ください。

【外部リンク】気象キャスター向け講習会「防災教育とアクティブ・ラーニング講義資料
【外部リンク】気象キャスター向け講習会「防災教育とアクティブ・ラーニング講義資料PDF版
※PDF版をダウンロードできない場合はお手数ですがこちらのフォームからお知らせください。

 

3 アクティブ・ラーニングとは

まず冒頭に「アクティブ・ラーニング」についての理解を確認しました。「アクティブ・ラーニング」とは何か、ということについて説明できる人がいますか、と聞いたところ、どなたもいらっしゃいませんでした。何となくは分かるのだけど、具体的にと言われるとよく分からない。そんな方も多いと思います。用語の理解は研修の前提条件ですので、文部科学省と研究者の方による定義をそれぞれ見てみましょう。

 

3.1 定義の確認

文部科学省が平成24年8月28日付で公開している用語集によりますと『学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称』であると定義できます。アクティブ・ラーニングの実施によって認知的、倫理的、社会的な能力、教養・知識・経験を含めた汎用的能力の育成を図る、と続きます。また、京都大学高等教育研究開発推進センターの溝上氏によりますと『一方的な知識伝達型講義を聴くという受動的学習を乗り越える意味での、あらゆる能動的な学習のこと』であると定義できます。もちろん、定義だけでは考えられないこともたくさんありますが、詳しくはアクティブ・ラーニングについて記載された他の記事などをご参照ください。

 

3.2 キーワードは「能動的な学習」

どちらの定義付けにも「能動的」という記載があります。つまり能動的な学びであることが、アクティブ・ラーニングにおいて欠かせない要素であるということです。では「能動的」とはいったいどういう学習のことでしょうか。ごく簡単に例示してみます。

 

Aくんの「主体的な学習」

例えば中学生のAくんが【防災】について学ぼうと思った時、気象災害について関心を持ち、自分で気象庁のサイトにアクセスして関連する用語を調べてノートに自分の考えをまとめたとします。これは「主体的な」学習と言えます。自らの行動や成果に対して、主体性や自発性が認められるためです。但し学習に「他者への積極的な関与」がないため「能動的な」あるいは「協働的な」学習とは異なります。

 

Bさんの「能動的な学習」

同じく中学生のBさんが、【防災】について学ぼうと思った時、班の仲間と一緒に自分の地域で起こりそうな気象災害を調べ、みんなで対策を考えて壁新聞を作って発表したとします。これは「主体的」であり、かつ「能動的」な学習と言えます。自らの行動や成果に対する主体性や自発性だけでなく、他者への積極的な、双方向の働きかけ=能動的な学習が認められるためです。

 

2人の違い

両者の違いは「他者との関わり」、溝上氏によるところの「認知プロセスの外化※詳しくはスライド参照」を伴うかどうか、ということです。Aくんの学習法が間違っているとかダメだとかいうことではありません。むしろAくんのように正しい基礎知識を習得しておくことが、能動的な学習の効果を高めることつながります。能動的に学習を進めたBさんがその学習に必要な知識を持たない、誤って理解している場合は、本来の目的を達成できない可能性があります。
防災教育に関しては、知識・技能の習得が直接命に関わる場合もありますし、また必要な知識の内容や難易度も様々なです。「主体的・協働的」を重視するアクティブ・ラーニングの実施において、学習テーマや発達段階に応じた基礎知識の習得と確認は必須と言えるでしょう。

細かく踏み込むといろいろ考えなければならないのですが、本記事及び筆者の理解では『アクティブ・ラーニング(特に防災教育における)とは、学習内容と目標の理解に必要な知識・技能があることを前提とした、能動的な学習方法のこと』というくらいでご理解いただければと思います。


(他者との関わりが生まれてはじめてアクティブ・ラーニングになる)

 

3.3 主な手法の分類

アクティブ・ラーニングの手法は大きく5つに分類されます。特徴は前述のとおり「1人では完結しない」ということです。体験学習型については、体験だけなら1人でもできますが、そこで得た学びや気づきを共有する過程を含むことで、アクティブ・ラーニングの手法の1つとして分類できます。

これらの分類は防災教育においても適用されます。いわゆる「防災教育推進指定校」や「モデル事業校」、あるいは何らかの支援事業等で受賞するような「優れた防災教育実践事例」を調べると、必ずこれらの類型に該当する授業・学習が行われています。それだけ、防災教育にとってアクティブ・ラーニングは親和性が高く、また必要性があると考えられます。

 

4 目標を明確にする力

防災教育研修などでもよくお伝えしていることのひとつに『メーガーの3つの質問』があります。

 

4.1 メーガーの3つの質問

 

  1. Where am I going ?(私はどこへ行くのか)
  2. How do I know when I get there?(到達をどのように知るか)
  3. How do I get there?(どのように行くか)

 

講演会や研修会で話を聞いていて「この人の言っていることはスゴイことなのだろうけど、結局何を一番言いたかったのか、よく分からなかったな」ということがあります。防災教育のプログラムや教材についても同様のことが言えます。

プログラムや教材、授業づくりにあまりに熱心になりすぎると「何を教えるためのものか」という目標が見えなくなることがあります。作業をしているときは「これが一番だ、これしか方法がない!」と思うのですが、他の人に教材や指導案を見て感想をもらったりすると「最初から●●は▲▲って、教えればいいだけじゃない?」みたいなことが起こってしまい「言われてみればそうかも…」とがっくりします。こうした事態は、メーガーの3つの質問ひとつひとつを常に意識することで防ぐことができます。

 

4.2 目標を明確にする力

アクティブ・ラーニングは学習者による思考、気付き、話し合いが中心です。「何のために」ということをはっきりさせておかないと、本来の趣旨とは全く関係のない話をして終わり、見当違いのことばかり考えてしまう、ということにもなりかねません。ですからアクティブ・ラーニングでも防災教育でも、まず身につけるべき授業力で大切なのは『目標を明確にする力』であると言えます。

 

4.3 防災教育の目的、目標の考え方

では、防災教育では具体的にどのように目的を考えればよいでしょうか。なお「目的」と「目標」は意図的に使い分けています。「目的」とは最終的に目指す、達成したいものやことであり、「目標」は目的を達成するための通過点、目安=標(しるべ)です。
ポイントは「目的を見据えたうえで、学習目標として設定する知識や技能は出来る限り細分化する」ということです。よくやってしまいがちなのが「命を守れる生徒になる」といった目標設定です。間違っているわけではないのですが、それは「目的」と言えます。考えるべきは「命を守れる生徒になるという目的にどのように至るか」であり、「どういう生徒が命を守れる生徒なのか」、「どんな知識を得て、どんな技能や態度を身に付けることで命を守るのか」ということを細分化した「目標」です。そして、授業、つまりアクティブ・ラーニング等はその「手段であり過程」になります。

下記の図は、僕が防災教育を考えるうえで意識している、細分化の考え方を示したものです。「命(いのち)」の段階を3つで整理し、学ばせたい知識や技能がどの段階に当てはまるものか、その前提として何が必要かの一例をまとめています。

理想的には「いのち(生命)、生活、人生」の順番にそれぞれで必要な知識や技能を身に付けていくことが望ましいのですが、興味関心の高いテーマや、分かりやすいテーマから取り組むことも学習成果につながりますので一概には言えません。いずれにしても、防災教育の授業者(教員、指導員)には、学ばせたい防災知識・技能が児童生徒等の「命を守る」ための目的にどのタイミングでどう結びつくのか、よく考えておくことが求められます。

 

4.4 学習課題と目標行動

目標を具体化させていくうえでのヒントをご紹介します。学習課題の整理と目標行動の明確化です。その防災教育で児童生徒に身につけさせたい知識や技能を、下記の「ガニェの学習課題の5分類」や「目標行動」に当てはめてみましょう。皆さんが伝えたいと考えている知識や技能はどのような課題に対するものであり、具体的にどのような行動に結び付けたいのかを整理することができます。

もし、こちらを見てもイマイチ整理ができない、よく分からないという場合は、前述した「細分化」に改めて挑戦してみましょう。複数の行動が混ざっていると、目標行動が分かりにくくなります。一度の授業で伝えるのはできればひとつに絞り込みたいものです。それでもうまくできない場合はお気軽にご相談ください。一緒に考えてみましょう!

 

5 評価と改善の考え方

効果的なアクティブ・ラーニングや防災教育・啓発には評価と改善が欠かすことのできない要素です。前述しているように、アクティブ・ラーニングは往々にして手段ばかりが注目され、目標設定が曖昧になってしまいがちです。その理由のひとつが「評価」について考えきれていないことにあります。アクティブ・ラーニングや一部の防災教育については、通常のペーパーテストのように正解不正解だけで考えることができません。正解と不正解の境界線が、条件によって変わってくるのが災害時です。だからこそのアクティブ・ラーニングなのですが、そうなってくると「どうやって目標達成を評価すればいいのか」という課題にぶつかります。

 

5.1 評価と評定

まず評価と評定について分けて考えます。大前提として「防災教育を一過性のイベント教育ではなく、一定の期間をもって行う」こととします。その場合に毎回の授業でフィードバックを行うために行うものが「評価」です。この段階では抽象的でも構いません。例えば「積極的に自分の意見を発言したり、議論に参加していたな」と思ったらA評価、そうした行動や態度が何らかの原因で見られなかったらB,C評価とし、次回以降に活かします。最終的には学期末等でその単元(防災教育)について「どの程度、目標を達成できたのか」を具体化させる必要があります。そこで、毎回の授業で行ってきた「評価」のデータを積み上げていきます。Aが●回、Bが●回、Cが●回、とその合計値を算出して平均値を割り出し、数値化(5段階等)するのが「評定」です。

防災教育もアクティブ・ラーニングも「その授業で良い成績を出す、態度を示すことができなかったからダメだ」というものではありません。その時、できなくてもそれが学びとなって次回以降に大きく伸びる可能性もあります。その意味でも、防災教育もアクティブ・ラーニングも、ある程度長期的な視点で考え、2回以上の授業の組み合わせのなかで評価・評定を行うことが理想的です。

 

5.2 授業改善のためのADDIEモデル

評価や評定も含めた授業を行ったら、次回以降に向けた改善を行います。ADDIEモデルは分析、設計、開発、実施、評価の5つの段階で授業内容等を改善するものです。学習者(児童生徒等)や学習目標等についての分析、授業や教材についての設計と開発(分けているのがポイント。いきなり作り始めるのではなく、「メーガーの3つの質問」などを踏まえた設計図を描いてから、開発に取り組む)、授業の実施、評価・評定とそれに基づく改善という流れです。効果的な防災教育のとアクティブ・ラーニングは、継続的な実施と改善によって初めて実現されます。出来る限りこうした「型」にはめ込んでブラッシュアップしていくと、抜け漏れが少なくなります。

 

6 模擬授業

もっとも身近でシンプル、学校・家庭・地域のいずれにおいても活用できるアクティブ・ラーニング対応の教材をご紹介します。教材のダウンロード及び詳細は下記の記事をご覧ください。
●プリント1枚で防災教育シリーズ『うさぎ一家のぼうさいグッズえらび』(EDUPEDIA版)

 

6.1 授業のコツ、ポイント

非常持出袋の内容を考える、という授業そのものは珍しいものではありません。よく取り組まれている内容です。この教材の特徴は、話し合いや思考のヒントになる「模擬家庭」を設定していることです。

「被災後でも家族が必要最低限の、健康を維持する生活ができる」という目的に向けて「非常持出袋に適切なグッズを選択し準備できる」という目標について適切な思考、話し合いを進めるためには「家庭や生活環境」を念頭に置く必要があります。

防災ハンドブックなどで紹介されているグッズは「最大公約数」、つまりあらゆる状況において、必要であると考えられるものです。ですが多くの場合は品目が掲載されているだけで、数量や重要性など個別に備えるために必要なことは記載されていません。それは家庭や生活環境により異なるためです。

 

本教材は仮想の家庭を共通事項として考えることで『家庭環境による備えの優先順位』を意識させます。赤ちゃんや高齢者など、配慮が必要な人への備えも大切であることも考えるきっかけとなります。そうした思考の過程を経てから目的、目標に沿って「自分の家庭、生活では何が必要か」を考えます。なぜ仮想の家庭を設定しているかというと、家庭環境は極めてプライベートな話題であり「自分の家庭環境を知られたくない」という思いから、話し合いに消極的になってしまうことも考えられます。アクティブ・ラーニングは「誰もが話しやすい環境づくり」も重要です。模擬家庭であれば、そうした心配をすることなく、自分の考えや意見を示すことができます。

家庭での話し合い結果をワークシートにして提出させるなどで評価します。その際も全部書き出すのは保護者も生徒も大変ですので、10個くらいに絞り込み特に備えておくべきものについて意識してもらうように促します。

 

7 地域における効果的な防災教育

地域における防災教育については、冒頭にご紹介した別記事をご参照ください。なお『地域における防災教育の実践の手引き』冊子は希望者に無償で配布しています。ご希望の方は一般社団法人防災教育普及協会ホームページより、必要事項をお知らせください。
【外部リンク】●地域における防災教育の実践に関する手引き無償提供について

 

8 まとめ

いかがでしたでしょうか。【防災教育とアクティブ・ラーニングについての基本的な用語や考え方を理解し、学校・家庭・地域等での効果的な防災教育、防災啓発について考えるヒントになる】という、読者の皆さまへのメッセージは伝わったでしょうか。

アクティブ・ラーニングの各手法は児童生徒の参加意欲や関心を促し、学習成果を高めるために効果的であることは間違いありません。だからこそ、目標設定や評価等の大事なポイントをしっかりと押さえつつ、児童生徒等と楽しみながら学ぶことが大事であると感じています。ぜひ積極的にチャレンジしていただき「こんなときにはどうしたらいいのか」や「こんなふうにやったら効果的だった」といったご意見やご感想などもぜひお寄せください。

長文最後までお付き合いいただきありがとうございました。

第25回 防災教育に使える教材⑤ 災害時のトイレアクション

第25回-防災教育に使える教材⑤-
災害時のトイレアクションを学ぼう

宮﨑 賢哉(ミヤザキ ケンヤ) – 防災教育コンサルタント/社会福祉士-

災害救援ボランティア推進委員会主任/(社)防災教育普及協会事務局長

【サマリー】
災害時に重要な課題のひとつである「トイレ」。消火訓練や応急手当、家具転倒防止といった一般的な防災の話題に比べて、学ぶこと、考えることが少ないテーマでもあります。本教材は「日本トイレ研究所」様が高校生向けに作成したものを、許可を得て整理、公開しています。

 


 

1 記事の構成

本記事は、東京都における防災教育支援事業のご縁で、特定非営利活動法人日本トイレ研究所様の教材提供とご協力により作成しました。日本トイレ研究所様、ご協力に改めて御礼申し上げます。
特定非営利活動法人日本トイレ研究所

 

2 災害時のトイレは、命にかかわります

日 本トイレ研究所様が作成した説明資料をご確認ください。なお、資料、教材は高校生を対象として作成されていますが、中学生を対象とした授業でも使用できる ことを確認しています。小学校での利用に際しては、一部の用語について補足説明をする、教材を参考に別途プリントを作成するなど、必要に応じて補助資料を 用いてください。
地震発生時の安全行動や、家具の転倒防止、初期消火や応急手当、非常持出品などのテーマに比べて、災害時のトイレのことは学ぶ機会も考える機会も決して多くはありません。災害時のトイレ問題は、命にかかわる重要なテーマです。ぜひ、児童生徒、関係者の皆さんと災害時のトイレについて、積極的に考える機会を設けていただければ幸いです。

 

【災害時のトイレ説明資料】
setsumei_saigaitoilet[PDF]
※PDFでダウンロード、開くことができます。

 

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3 教材「災害時のトイレアクションを学ぼう」

【ワークシート(A3版、両面印刷、カラー印刷推奨】
kyouzai_saigaitoilet[PDF]
※PDFでダウンロード、開くことができます。

 

【災害時のトイレ説明資料】※前述と同様です
setsumei_saigaitoilet[PDF]
※PDFでダウンロード、開くことができます。

 

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    (写真:ダンボールトイレ作りにチャレンジする中学生)

 

4 指導案と振り返り

(1)指導案、指導スライドと振り返りシート
【指導案】
shidouan_saigaitoilet[Excel]
※Microsoft Excelでダウンロード、開くことができます。

【指導用スライド】
slide_saigaitoilet[PDF]
※PDFでダウンロード、開くことができます。

【振り返りシート】
hurikaeri_ver3.0[Word]
※Wordでダウンロード、開くことができます。

 

(2)指導上のコツ、工夫
ワークシートの特徴は、災害時にさまざまな困難に直面することが想定される方々を代表的な事例として『具体的なアクション=行動』を考えることにあります。従って、指導の際は「グループで議論する」、「自分で考える」ことも重要ですが、必ず『例えどんなに小さなことでも、具体的な行動=アクションに結びつけよう!』と伝えることが重要です。
指導内容(今回はトイレ)に関連して、印象に残ったエピソードや、その時の自分の感情、考え、行動などを生徒に伝えてあげると、より理解しやすくなります。
また、下記で紹介する「災害用トイレガイド」には災害時のトイレ問題理解の参考となる情報が掲載されていますので、事前に確認してください。

 

5 参考URL

▶ 災害用トイレガイド http://www.toilet.or.jp/toilet-guide/
▶ 東日本大震災3.11のトイレ http://www.toilet.or.jp/toilet-guide/pdf/311.pdf

 

第24回 防災教育に使える教材④ 災害時の判断とコミュニケーションを学ぼう!

第24回-防災教育に使える教材④-
災害時の判断とコミュニケーションを学ぼう

宮﨑 賢哉(ミヤザキ ケンヤ) – 防災教育コンサルタント/社会福祉士-

災害救援ボランティア推進委員会主任/(社)防災教育普及協会事務局長

【サマリー】
災害時には様々な判断が迫られます。誰に聞いても答えが分からない問題も時にはあるでしょう。そうしたときは、一人で抱え込まず、身近な人や問題に関わる人たちとコミュニケーションをとり、解決策を探していく力が求められます。本教材は「判断力」や「コミュニケーション力」、「思考力」を能動的な学習で養っていくことを目的としています。

 


 

【記事の構成】

  • 正答のない問いに、児童生徒をどう向き合わせるか
  • みんなちがってみんないい、で終わらない
  • 結論を導き、結果を想像させる
  • 教材「災害時のコミュニケーションを学ぼう」
  • 指導案と振り返り
  • 事例「ある小学校での校長先生と先生達の議論」

 

【正答のない問いに、児童生徒をどう向き合わせるか】

 防災教育の難しさは「正答のない問い」があることです。避難生活で起きるトラブルなどがその一例です。同じ質問をしても、ある人のある状況にとって「正しい」ことが、別の人、別の状況では「正しくない」ことがあります。僕はよく「きのこの山」と「たけのこの里」を例に出します。どちらが好きか聞くと、意見が分かれます。
 そしてこう続けます。「では、自分とは違う意見の人は"間違っている"と思いますか」。児童生徒は困惑しながらも「別に間違ってはいないけど・・・」と答えてくれます。「じゃあ、その人ともしどちらかひとつ、選ばなきゃいけなくなったとしたら、どうする?」と続けます。児童生徒は「・・・話しあう?」と答えてくれます。
 まず「人には人それぞれの考え方があること。例えそれが自分とは違っても、間違っているわけではないこと。どちらか選ぶなら話し合い=コミュニケーションが大切であること。」を伝えて、正答のない答えを学ぶ意識付けをします。

 

【みんなちがってみんないい、で終わらない】

 気をつけなければならないのは「きのこの山もたけのこの里も好きでいい」を結論にしないことです。お菓子の話なら好き嫌いで構いませんが、授業のテーマは「災害時の判断とコミュニケーション」です。なので、児童生徒にも理解しやすい代表的な例を挙げてみます。
  「体育館が避難所になっているとき、救援物資のお弁当が届きました。でも、お弁当の数が足りません。ある人は、傷んでしまうから足りなくてもすぐ配ろうと 言いました。ある人は足りないと取り合いになって大変だから、足りないうちは配らないほうがいいと言いました。どちらの人が、正しいと思いますか。」
 "みんなちがってみんないい"とはいきませんね。配るか、配らないかを決めなくてはいけません。もし意見が違う人がいたら、お互いに話し合って、結論を出さなくてはならないのです。

 

【自ら考え議論し、結論を導き、結果を想像させる】
 → アクティブ・ラーニング等への応用

 防災教育で大切なことは、児童生徒に「行動する」ことの大切さを伝えることです。考え、話し合うことは重要ですが、それはあくまで手段であり目的ではありません。具体的に命 や生活、人生を守るため「行動する」ことが重要です。この授業で正答のない問いを他者と話し合いながら考え、結論を導くという過程を経験させます。そし て、その結論がどんな結果につながるのかを、班の中や個人で「想像=シミュレーション」させます。自分(たち)の行動の結果を想像しながら、問いに取り組むという過程を経験することが、児童生徒の学習成果につながります。
 
正答のわからない問題をテーマでありながら、児童生徒でも解決策を考えられるような問題を設定することで、児童生徒の能動的な学習を促すことができます。アクティブ・ラーニングや調べ学習、プロジェクト学習等に応用することができます。


【教材「災害時のコミュニケーションを学ぼう」】

この授業で使用する教材は以下のプリントだけです。問題によって用紙が分かれていますが、問題を1つに絞れば1枚のプリントで済みます。使い方にはいくつかのバリエーションがありますので、それぞれの場面で使いやすいようにご利用ください。Microsoft-Word形式ですので、ご自由に編集していただいて構いません。

【ワークシート】災害時のコミュニケーションを学ぼうver1.0
※MicrosoftWord2013で作成しています。クリックしてダウンロードしてください。

 

【指導案と振り返り】

この授業で使用する指導案です。こちらもWord形式ですので、ご自由に編集してご利用ください。

【指導案】災害時のコミュニケーションを学ぼうver1.0
※MicrosoftWord2013で作成しています。クリックしてダウンロードしてください。

 

<指導例>

  1. 班ごとにワークシートをランダムで配布して話し合い中心に行う
  2. ひとりひとりにワークシートを配布して、自分の考えをまとめさせる
  3. 夏休み前などに配付して、テーマに関して過去の災害事例などから調べ学習をさせる
  4. 宿題として配付して、家族の意見なども聞いてくる
  5. 全校集会の場でスライドや講話のなかで活用する

 

<振り返りシート>

【振り返りシート(発達段階不問)ver3.0
※小学校低学年~教職員、PTA研修まで対応する共通の振り返りシートです。

 

指導員向け事例紹介「ある小学校での議論」

  よく研修でご一緒する東日本大震災発災(当時)時、校長先生だった方は冒頭の「答えが分からない問題」に直面されたそうです。校長先生ご自身は関東圏の出身で 「校舎の上に逃げる」ことを考えており、マニュアルもそのようにしていたそうですが、地元出身の先生たちは「高台への避難」を強く意見したそうです。そこで「最終的な判断は校長が行う」と決めたすぐ後に、東日本大震災が起きました。校長先生は、あまりの揺れの大きさから、自分のこれまでの考えやマニュ アルを捨て「高台へ逃げる」ことを選択しました。そして、その決断に先生や生徒も従いました。結果として帰宅していた生徒と、教員1名が犠牲となってしま いましたが、それ以外の生徒や教員は助かりました。

 事前の備えにおいてもコミュニケーションは大切です。でも、その場になったら状況を判断して考える力、それを他の人に伝えて理解してもらう力が、いかに大切であることが分かるエピソードです。


教材の使い方やアドバイス、講師派遣などは随時承っています。お気軽にご相談ください。
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第22回 避難所運営ゲーム(HUG)研修・授業実施のポイント

本記事は静岡県が開発した教材「避難所(H)運営(U)ゲーム(G)」を用いた研修会、授業を実施するにあたってのポイントをまとめたものです。実施の環境や条件によって適切な実施方法などは異なる場合がありますので、予めご了承ください(2015年4月現在)。


避難所運営ゲーム(HUG)について

◯ 避難所(H)運営(U)ゲーム(G)、一般住民向けシミュレーション型訓練。
◯ 目的:避難所で起き得る状況の理解と適切な対応を学ぶ。
◯ 概要:ある市の避難所運営を任されたという想定の下で、次々にやってくる避難者の状況や要望を考慮しながら、迅速かつ適切に対応する術を学ぶゲーム様式の教材。
◯ 配役:進行役1名、プレーヤー最大9名/班程度(うち記録係1名、発表担当1名など)。

 

研修・学習目標の考え方

HUGを使った研修や授業をより効果的にするための、研修・学習目の考え方についてご紹介します。具体的に設定したほうが指導者の方も参加者も理解しやすいかと思いますが、実施環境や参加者の状況に合わせてご検討ください。

 

児童生徒対象「避難生活や平時の備えについて考えるきっかけとして」

児童生徒が保護者や教職員と共に、避難者として避難所運営に関わることも考えられます。HUGを使うことで避難所運営や避難生活にどんな難しさがあるか、自分たちに何ができるか、普段からどんな備えをしておいたらよいかといった点について、具体的に考えるきっかけをつくることができます。

教職員対象「マニュアルのチェックや施設利用方法の検討手段として」

学校独自の、あるいは市区町村等から出された「避難所運営マニュアル」などがある場合は、HUGを使うことでマニュアルに記載された通りの運営ができるかどうかを確認することができます。とくにマニュアルなどが整備されていない場合は、どの施設・教室を何のために開放するのかなどを検討するための手段としても有効です。

自治体職員対象「避難者の特性に配慮した運営方法を考える」

HUGのカードには様々な避難者が想定されています。乳幼児や妊産婦、高齢者、障害者、外国人、傷病者や遺児なども含まれています。自治体職員として公平・平等の考え方は大切にしながらも、配慮が必要な方にはどのように対応したらよいのかを限られた時間で考え、話し合うことで、その後のマニュアル作りや既存のマニュアルの改善などに活かすことができます。

自主防災組織対象「住民主体の避難所運営を学ぶ機会として」

避難所の運営主体は、自治体職員や施設職員(学校教職員や、体育館の指定管理者等)ではなく、あくまで住民(避難者)主体である、というのが原則です。とはいえ、施設を利用する以上は、何でもかんでも住民(避難者)で決めてよいというわけでもありません。もし施設でマニュアルが作成されていれば、それを用いて研修を行うことがよいでしょうし、作成されていなければ、住民目線で実施した結果について施設の方と共有し、実践的なマニュアルづくりにつなげていく、といったこともできます。

 

所要時間と定員の目安

2時間から3時間程度を推奨します(教材の使い方を簡略化すれば45分程度でも可能です)。定員については教材さえあれば多くても少なくても、それほど影響はありません。講師や指導員が1名の場合、全体を細かくチェックできるのは50人くらいまででしょうか。550人以上で同時に行う場合は、補助的な指導員やサポートスタッフを用意するなどの工夫が必要な場合もあります。

 

実施環境と使用備品

島形を作り、1班5〜7人くらいで行います。机は学校等にある長机を2〜3つ合わせたくらいがちょうど良いです。説明や指導、状況付与でプロジェクターや黒板を使用する場合もありますので、配置は下記イラストのようにすると参加者が見やすくなります。HUGの教材セットのほか、水性マーカーや付箋紙などもあると作業で役立ちます。 new_hughaichi

事前準備のチェックポイント

HUGを実施する前に行う事前準備のチェックポイントを整理してみました。必要な項目を確認していただくと、スムーズに運営できます。

◇ 日時や会場は問題ありませんか。

・2時間~3時間の実施時間は確保できていますか。
・2時間以下の場合は講師や指導員の方と、詳しく打ち合わせることをお勧めします。
・会場は可動式の机、椅子になっていますか。
・プロジェクターやスクリーン、ホワイトボードなどは使えますか。
・1班は5~7名くらいとして、班の机は長机2~3つくらい必要です。
・レイアウトは参加者から講師や指導員、スクリーン等が見やすくなっていますか。

◇ 教材や資料は用意していますか。

・HUGのカードセットや間取り図のデータは講師から借用するか購入しておきます。

◇ 避難所運営マニュアルやガイドラインはチェックしましたか。

・自治体や学校でマニュアルやガイドラインを発行していたらチェックしておきます。
・講師、指導員を外部に依頼している場合は、マニュアル等の情報を共有しておきます。
・とくに作成されていないようであれば、ぜひこの機会に作成を検討してみてください。

 

実施内容について

こちらで紹介する内容は教職員や地域住民向けの実施内容です。

 

手順

  1. 進行役が避難者の情報等が書き込まれたカードや、何らかの事態発生を知らせるカードを読み上げる。【実際に避難者が来たと想定してください】
  2. プレーヤーは読み上げられた情報に基づき、避難者カードの場合は、配置を決め、その場所にカードを置く(図参照)。事態発生への対応も決定する。
  3. 進行役は、プレーヤーに時間的余裕を与えることがないように次々にカードを読み上げる。
  4. ゲーム終了後、避難者の配置や事態対応の是非について話し合い、よりよい避難所運営方法を学ぶ。


(図1 HUGカードと各種図面の使用例)

 

演習の前提条件(一般的な例、首都圏)

  • 地震発生:[ 季節 ]の [ 平日・祝祭日 ] 、[ 午前・午後 ]、[ 時間  ]。この地区では一部で最大震度7を観測。
  • 生徒は不在の想定、数名の教職員が初動対応にあたっている。
  • 参加者は発災から [ 時間 ]後に集まった、住民や教職員(管理職)、自治体職員等の立場になります。
  • 同じグループの人は、いちはやく学校に到着したつもりで、次々にやってくる避難者の状況や要望を考慮しつつ対応する。突発事態にも対応する。
  • 任された避難所:学校が避難所になったと想定します。管理職や他の教員は出勤しておらず、自治体担当職員も駆けつけることができない状況(つまり、規定のリーダーは不在の状況)と考えてください。
  • カードの大きさは、ほぼ避難者1人分の面積に相当します。避難者をどこに割り当てるか決めて、そこに置いてください。自動車やペットなどは、ポストイットに記入して貼付するか、別添シートに直接記入してください。
  • 記録係は質問への回答や、とった対応、出てきた疑問や意見等を記入してください。
  • その他、細かな設定は各グループで決めていただいて結構です。

 

避難所となる学校・地域の状況設定例

  • 電気:停電しており、復旧の見通しはたっていない。
  • ガス:供給が停止されている。
  • 水道:断水している。
  • 電話:携帯電話は輻輳でかからないが、メールは使える(遅れる)。学校の職員室に設置してある電話は災害時優先回線で地震時でも使える状態。
  • トイレ:水が流れない、出ない。
  • 被害:体育館や教室等、校内に大きな被害はない。一部の教室ではガラスの破損などが見受けられた。
  • 備蓄品:(実際に参加者の所属校で用意されているものがあればそれを参考)

 

HUGをはじめる前の説明事項例

  • 役割(リーダー、記録役、進行役)を決めてください。
  • A4の教室用紙は使っても使わなくても構いません。
  • 中学校や高校の場合は教室を3年生までとし、校内図で4年生以上の教室を使わないようにしてください。
  • ポストイットは状況への対応やメモ、記録にご利用ください。
  • 記録役は状況への対応結果を適宜記録してください。
  • リーダー以外の役割は交代しながら進めてください。
  • カードは重ねて置かないでください(1人1枚のスペースを確保)。

 

HUG研修実施後の指導ポイント例

  • HUGで学ぶこと:起きる状況の理解と適切な対応を考える
  • 時間経過とともに、避難所の役割も変化します。
  • HUGは、初期の避難所運営に関わる問題を理解してもらうための教材です。
  • 事前の避難所運営マニュアルの作成、検証、訓練が重要です。

 

  1. 避難所の開設は誰が行うか。
  2. 受付の設置、避難者リストの作成、被害まとめをどうするか。
  3. 避難者の適正配置、スペース確保ができるか。
  4. 屋外避難希望者等への対応ができるか。
  5. 食事や飲料水、毛布等の提供はどうするか。
  6. 傷病者対応や救助要請への対応はどうするか。
  7. 救援物資の要請と管理方法をどうするか。
  8. 情報提供や注意事項の伝達ができるか。
  9. 避難所運営ルールの取り決めはできるか。
  10. 避難所の環境整備等をどう行うか。
  11. 市災害対策本部との連絡、要請と対応はどうするか。
  12. ボランティアやマスコミへの対応はどうするか。
  13. 避難所運営本部の設置と組織化をどうするか。 など

 

振り返り

HUGの実施後、できれば15分~30分ほど振り返りの時間をとります。「どんな課題、気付きがあったか」や「どんな備えや行動が求められるか」といった点について、参加者同士で話し合ってもらうと、様々な意見が出てきます。できる限り具体的な課題、対策を挙げてもらうようにするのがポイントです。

 

HUG実施時のまとめ(例)

小学校、中学校、その他の一部施設は避難所として市区町村から指定されてはいるものの、あくまで教育等のための場であり「生活の場」として考えられている施設ではありません。その施設としての第一義的な役割、学校であれば「児童生徒や教職員の安全・安心」等が揺らぐような体制や運営を避けるためにはどうしたらよいのかを考え、備えておくことが必要です。 また、本来はなるべく避難所で生活してなくてもよいことが重要(在宅避難=家屋が無事であれば、ライフラインが断絶していても生活できる備えをする)なので、避難所運営そのものだけでなく、平時の備えについても考えられるような"まとめ"が求められます。

 

Point 災害時における学校の役割
  1. 児童生徒と教職員の安全確保
  2. 自宅等で生活できない近隣住民や帰宅困難者のための避難所(一時避難先)
  3. 学校に避難していない「自宅(在宅)避難(被災)者」も含めた、生活支援・生活再建の拠点

 

Point 運営ルールと生活ルール
  • 運営ルールとは、施設のどの場所を何のために使うかなど、予め決めておくことができて、なるべく変更しなくてもよいルールのことです。マニュアルなどで具体的に定めておき、地域住民や施設管理者(学校教職員等)が共有しておくことが重要です。
  • 生活ルールとは、避難してきた住民(避難者)や施設管理者が、その避難所の状況に合わせてつくる避難生活上必要なルールのことです。避難者数や被害状況により変化しますので、柔軟に作成または更新し、その都度関係者全体に周知徹底することが重要になります。

 

フィードバック(評価)

振り返りシートやアンケートなどで、研修や授業についてのフィードバックや評価を確認できると、次につなげることができます。振り返りで出てきた課題や気付き、対策などはマニュアルや今後の防災対策全般にも活用できる情報ですので、なるべく文面で残してもらえるようにします。

 

[参考動画:発災直後の避難所における要援護者トリアージ]

 

(宮﨑賢哉・社会福祉士)
災害救援ボランティア推進委員会主任/(一社)防災教育普及協会事務局長
[プロフィール]阪神・淡路大震災以降、各地の被災地で活動。2005年(公財)日本法制学会入社。災害救援ボランティア推進委員会で大学講座、学生活動支援を担当。2014より(一社)防災教育普及協会事務局長を兼務。社会福祉士として要配慮者の防災活動等にも取り組む。