防災ミニ講座

第18回 地域防災力UPシリーズ② ぼうさい探検隊でマップづくり

第18回 地域防災力UPシリーズ② ぼうさい探検隊でマップづくり

宮﨑 賢哉(ミヤザキ ケンヤ) — 防災教育コンサルタント/社会福祉士–

災害救援ボランティア推進委員会主任/(社)防災教育普及協会事務局長 兼務

 

【サマリー】
 地域防災力UPシリーズ①では、災害図上訓練-DIG-で地域の災害危険箇所や防災資源を確認しました。次はもう一歩踏み込んで実際の防災行動につなげていく必要があります。そこで、各地域で行われている「防災マップづくり」をご紹介します。防災マップづくりのノウハウは様々ですが、本講では代表的な事例として『ぼうさい探検隊』についてご紹介します。

 


 

ぼうさい探検隊とは・・・

「ぼうさい探検隊」とは、子どもたちが楽しみながらまちにある防災・防犯・交通安全に関する施設や設備などを見て回り、身の回りの安全・安心を考えながらマップにまとめ発表する、実践的な安全教育プログラムです(日本損害保険協会ホームページより)

子どもたちと楽しみながら取り組むことが重要なポイントです。大人ではあまり意識しない「ここはこうなったら危ないかな」「ここは暗くなったら怖いな」といった点をどんどんチェックしてくれます。また、どうしても高齢化してしまいがちな防災活動に、ぼうさい探検隊を通じて児童生徒や保護者が参加することで、より幅広い視点で地域防災を考えることができます。

ぼうさい探検隊を実施してつくる「ぼうさいマップ」を集めたコンクールなども開催されており、2000枚以上のマップが集まる、日本で最も普及している防災教育プログラムのひとつです。

 

スクリーンショット 2014-12-15 06.08.46(防災マップのイメージ、ぼうさい探検隊実施マニュアルより)

 

ぼうさい探検隊のプログラム

ぼうさい探検隊のプログラムは大きく分けて3つの段階に分かれています。

(1)まちなか探検をする

子どもたちの視点でまちを探検して、防災・防犯・交通安全に関する様々な施設や設備を発見します。事前に消防署や防災課、自治会や防災会などと調整し、チェックポイントを設けることもあります。

(2)マップをつくる

街区地図などを用いて発見したこと、気づいたことを模造紙に記入、整理していきます。書き方は子どもたちの自由な発想に任せていきます。どうしてもうまくいかないときは、保護者やボランティアなどがサポートします。

(3)発表する

マップができあがったら、自分たちで発見したことや気づいた点などについて発表します。チーム名を決めたり、参加者の名前を書いたりすることで「自分たちのマップ」という意識を持たせます。

 

ぼうさい探検隊の実施スケジュール例(4時間・半日程度)

00:00~00:20【20分】 チーム分けや作戦会議、テーマやルートの確認をします。

00:20~01:10【50分】 まちなか探検、子どものペースに併せてまち歩きをします。

01:10~01:20【10分】 休憩、デジカメで撮影した写真を印刷しておきます。

01:20~03:30【130分】マップ作成、縦横を決め、役割分担をしながら作業します。

03:30~03:55【25分】 チーム毎にマップを発表

03:55~04:00【05分】 指導者からまとめ

 

ぼうさい探検隊のリーダー養成

ぼうさい探検隊を実施する児童生徒や教職員、保護者と共に、より安心して子どもたちがマップづくりに専念できるよう、サポートしていくのが「ぼうさい探検隊リーダー」です。弊会では、災害救援ボランティア講座の開講に併せて日本損害保険協会より講師を派遣していただき、ぼうさい探検隊リーダー養成講習も兼ねたプレゼンテーションを行っていただいています。

 

また、ぼうさい探検隊を実施したい地域や学校、公民館などのご担当者や参加者(特に教職員や保護者、ボランティア等)を対象とした講習についても、日本損害保険協会と連携して実施していますので、お気軽にご相談ください。

 


 

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第17回 地域防災力UPシリーズ① 災害図上訓練-DIG-で地域を知ろう

第17回 地域防災力UPシリーズ① 災害図上訓練-DIG-で地域を知ろう

宮﨑 賢哉(ミヤザキ ケンヤ) — 防災教育コンサルタント/社会福祉士–

災害救援ボランティア推進委員会主任/(社)防災教育普及協会事務局長 兼務

 

【サマリー】
 私たちがくらしている
「地域」や「まち」には、見落としてしまいがちな防災・防犯上の危険がかくれています。土砂災害や風水害などでは、そうした見落としがちなポイントや、「ここで何かあったらこわいな・・・」と思いながらも、具体的な対策がとれずにいたところで、大きな被害が発生してしまう可能性があります。そこで、本講では『地域防災力UPシリーズ』として全3回でご紹介します。

 


 

災害図上訓練-DIG(Disaster Imagination Game)-は、大きめの地図にビニールシートなどをかけて、マーカーで色塗りをしながら防災資源の洗い出し、災害危険箇所の発見、地域防災活動のあり方などを考える、訓練様式のひとつです。

 

厳密には様々な手法やアプローチがあり、細かな分類の考えられるプログラムですが、まずはそのようにご理解いただくのが分かりやすいです。そして、広島や京都、兵庫などで発生したの水害や土砂災害から命を守るためには、とても大切な訓練です。水害や土砂災害のように地域性の高い(地域の状況に大きく左右される)災害から命を守るポイントはふたつあります。

 

ひとつ『自分が住む地域・地理のことにどれだけ関心を持ち、知っているかどうか』

ふたつ『水害・土砂災害等も含め、気象災害の基礎知識を持っているかどうか』

 

地域の防災資源や、災害危険箇所、避難ルートなどをシールやマーカーで書き出していくDIGは、ひとつめの地域や地理のことについて関心を持ち、知るための手段として役立ちます。灯台下暗しと言いますが、地域のことを知っているようで知らないことはよくあります。水害や土砂災害は地域の歴史なども関わりますので、いろいろな方の話を聞いてみたら「そんなこともあったのか」と気付くことが多いのもDIGの特徴です。

 

14894634257_d7be99db84_z(写真:まずはみんなで地図を囲んでいろいろ考えてみることから)

 

訓練としての効果は高いDIGですが、その反面きちんとやろうとすると主催者、参加者、指導者それぞれに負担も多く準備が必要です。テーマ設定、地域選び、大きな地図、ビニールシート、マーカー、ふせん…主催者側が準備するものがたくさんあります。

 

14894488209_09ea8fd22b_z(写真:ビニールシート、マーカー、シールなどを用意します)

 

地域のことに詳しい人ばかりではないので、何も分からないと書き込みペースが遅くなることもあります。また、参加者が想定災害について何も分からない状態だと、災害危険箇所の想定ができなかったり、誤った想定になったりします。作業に慣れていない参加者の方々がいれば、一度にたくさん書き込むような指示を出すと「そんなに出来ないよ!」とか「何をどう書いたか分からなくなった」なんてことにもなりかねないので、指導側の力量も大きく影響します。このようにハードルは高いけれど、その分、正しく行えば(特に水害や土砂災害対策に)効果を発揮できる訓練と言えます。

 

大雨警報や土砂災害警報の発報基準、避難勧告や避難指示、がけ崩れや土石流、地すべりの違いなど、水害や土砂災害から身を守るために知るべきことはたくさんあります。DIGはそうした基礎知識の学習と並行して行うことで、より高い効果が期待されます。

 

地域で水害・土砂災害が想定される方は、役所や学校、社会福祉協議会、ボランティア団体などと連携して、積極的にチャレンジされることをオススメします。

 

★★ ご希望の方には地域で実施した際の資料・スライド等をご提供します ★★

こちら からお問い合わせください。

 

写真協力:C大学ボランティアセンター、H市社会福祉協議会、大学生・H地区の皆様