防災ミニ講座

第11回 災害ボランティアセンター運営を体験してみよう!

第11回 災害ボランティアセンター運営を体験してみよう!

宮﨑 賢哉(ミヤザキ ケンヤ)、防災教育コンサルタント/社会福祉士

災害救援ボランティア推進委員会主任/(社)防災教育普及協会事務局長

【サマリー】

大規模災害が発生すると、全国からボランティアが被災地に駆けつけます。ですが、被災地は人も建物も被災していて、充分にボランティアを受け入れたり、調整したりするのが難しいことがあります。そんなときに開設・運営され、ボランティア調整の中核となるのが災害ボランティアセンター(以下「災害VC」)です。本講では、災害VC運営(のほんのごく一部ですが)を疑似体験できる『ロールプレイング』のプログラムをご紹介します。

中高生から社会福祉協議会(以下「社協」)の職員の方、現地での経験豊富な方まで、どなたでも楽しみながら学べるプログラムです。各種教材がダウンロードできるようになっていますので、ぜひ研修等でご利用ください。利用料等は不要ですし、編集も自由です(出典明記のみご協力願います)。
【注意事項】
 本プログラムは、様々な地域の社協の災害VC運営マニュアルや様式をベースに整理したひとつの事例です。「こうすればうまくいく」「こうしなければいけない」というものではありませんので、くれぐれもご注意ください。

 


 

●本講の内容

はじめに

1 まずは資料をダウンロードしよう

2 災害VC運営体験の実施準備

3 災害VC運営体験の流れ

4 災害VC運営体験のまとめ

おわりに

 


はじめに

本プログラムは
・資料を印刷する
・よく読んでみる
・実際に様式を動かしてみる
・振り返る

という4つのステップだけでできるよう、構成されています。 細かい点を実情に合わせたり、効率の良い様式を考えるためにはある程度の知識や経験が必要ですが、体験するだけであれば誰でも可能です。ただし、主催者側(指導員側)にはプログラムを扱ううえで注意していただきたいこと、理解しなければならないことが
いくつかありますので、こちらをよく読んでから、ご利用いただければと思います。

 

1 まずは資料をダウンロードしよう

まずは下記から参考資料をダウンロードして、印刷してください。
かなりのボリュームになりますので、プリンターの用紙やインクを確認してから始めてください。

★★★ 災害VC運営ロールプレイング資料集 ★★★

03_【教材】災害VC運営ロールプレイングVer3

 上記をクリックしてダウンロードしてください。
 zipフォルダになっていますので、解凍ソフト等を使用してください。
 うまくダウンロードできない、閲覧できない場合は こちら からお問い合わせください。

 

—資料内容—

【指導者用資料】
災害ボランティアセンター運営ロールプレイング説明資料[PPT]

【参加者用配付資料】
資料0_災害ボランティアセンター運営ロールプレイング説明用紙
資料1_災害ボランティアセンターの設置運営編[内閣府]
資料2_タイムテーブル(180分)

【訓練用様式】
様式01a_ボランティア個人受付票
様式01a_団体受付票
様式01b_ボランティア派遣要請・ニーズ受付票
様式02_ボランティア受付時配付資料
様式03_ボランティア派遣依頼票
様式04_個別オリエンテーション資料
様式05_活動先地図
様式06_資機材等貸出台帳
様式07_活動報告書

【配役カード】
ボランティア役カード(1)
ボランティア役カード(2)
被災者役カード(1)
被災者役カード(2)

 

★★★ポイント★★★

 指導者側(主催者側)の方は、事前に資料をよく読み込んでおいてください。
 資料は一部を除き、WordやExcel形式になっています。
 地域や社協の実情に応じて自由に編集していただいて構いません(出典明記のみご協力願います)。

 

2 災害VC運営体験の実施準備

それでは、お手元の資料を使って災害VC運営体験を実施するまでの準備をご説明します。
仮に次のような環境で講習を実施する、と仮定します。

 

◆仮想実施環境◆

・主催者は社協
・対象者は社協職員、一般市民、災害ボランティア登録者 40名ほど
・目的は社協や一般市民に災害VCについて理解してもらうこと
・土日祝日の午前中、9:30~12:30の3時間
・指導は社協職員か、経験のある災害ボランティアが行う

 

(1)タイムテーブルを作ろう

資料2_タイムテーブル を使って、3時間のタイムテーブルを作成します。
3時間かけなければいけない、ということではありませんので、ローテーションの回数を少なくしたり、説明を省いたりすれば1時間~2時間でも可能です。

 

(2)説明資料や様式を編集しよう

主催者側の実情に合わせて、説明資料や様式を編集してください。
編集せずに、資料のまま使っても構いません。
(1)で作成したタイムテーブルによっては、一部の手順を省いたり、様式を使わないということも考えられます。 状況に応じて利用してください。

 

(3)配役カードを作ってみよう

配役カードはダウンロードして使っても、オリジナルでつくっても構いません。
できれば、主催者側の実情を反映した配役カードがあると良いでしょう。
定員数によって、カードの枚数を増減しても構いません(ダウンロードできる配役カードで60名程度までは対応可能です)。

 

(4)資料を印刷してみよう

【参加者用配付資料】を参加者数分印刷します。
各種様式については、定員数や実施時間を考慮して適宜印刷します。
配役カードは一セット作成すれば大丈夫です。

 

(5)主催者側でシミュレーションしてみよう

主催者側、指導員で資料の読み合わせや、様式の流れを一度シミュレーションしてみましょう。
以外なところで様式が行き詰まったり、時間がかかったりすることがあります。
必要に応じて説明資料や様式を修正して、当日に備えましょう。

 

(6)会場のレイアウトや使用する機材をチェックしよう

このプログラムでは可動式の机と椅子、ある程度の広さがある会議室等(定員50~100名)が必要です。 できれば、小さい会議室等が2~3あると良いでしょう(なければ構いません) もし、指導者用資料のパワーポイント等を使う場合は、プロジェクター等のチェックもお忘れなく。

 

(7)広報や情宣をしっかりやろう

このプログラムは使う様式が多かったり、流れが複雑なため、災害ボランティア活動等の経験が少ない方には
分かりづらい点が多いかもしれません。まずは主催者側がしっかりと読み込み、流れを理解したうえでターゲットを決めて
広報や情宣を行ってください。

 

指導者がしっかりしていれば、中学生でも充分に活躍できるのが、このプログラムの特徴です。
あまり肩肘はらずに楽しんでもらうくらいの気持ちで実施するのがポイントかと思います。

 

3 災害VC運営体験の流れ

 いよいよ当日となりました。当日の一連の流れを簡単に整理します。

 

(1)受付・資料配付

受付をして、参加者用資料を配付してください。
筆記用具があったほうが良いので、なければボールペン等も渡してください。

 

(2)資料確認とルール説明

ざっと資料の確認とルールを説明してください。 説明資料をきちんと読んでもらえれば、ある程度はご理解いただけるかと思います。
ポイントは「読むよりやったほうが理解できる」ことです。文字より体で理解してもらったほうがよいでしょう。

 

(3)役割決め、レイアウト作り

役割やレイアウトは主催者側の実情に応じて調整してください。
マニュアルが既に作成されていれば、そのマニュアルに従ったほうが実戦的です。

 

(4)実施準備(第1回目)

最初に災害VCスタッフ役を行うグループのみ会場に残り、他のグループは退出させます。
他のグループにはそれぞれ被災者役、ボランティア役のカードを配って覚えてもらいます。

災害VCスタッフ役には、印刷した様式を渡し、どの場面で使うかを簡単に説明してください。
あとは「センター長」役の方に任せ、概ね15分ほどでレイアウトを作ってもらいます。

 

★★★ポイント★★★

 手荷物は基本的に持ち歩くよう指導してください。
 災害ボランティア活動中に、荷物を置きっ放しにすることはないですよね。
 面倒ですが、レイアウト作りのじゃまになりますので理解していただいてください。

 

(5)災害VC運営体験実施(第1回目)

レイアウトができてセンター長に確認をとったら体験を開始します。
被災者役、ボランティア役に会場(仮想の災害VC)に入るよう指導してください。
配役カードはなるべく見ないように説明してください。15分ほど実施したら終了します。

「活動報告書」が何枚書かれていたかを確認してみましょう。

 

★★★ポイント★★★

 活動報告書の枚数は2回目、3回目になるほど増えていくのが一般的です。 それが「練習すればうまくなるんだ、やればできるんだ」という実感を参加者に持たせるしかけです。もし増えなかったとしても「スピードよりも丁寧なマッチングが大切です」とフォローすればOK。

その他、指導員が気付いた点があれば、簡単に指摘してすぐに次のグループに移ります。

 

(6)実施準備(第2回目、3回目)

1回目で使った様式は整理して廃棄してください。
レイアウトはそのまま残しておきますが、次のグループが変えても構いません。
準備には15分かからない場合もあります。10分程度でよければ、センター長役に確認して
タイムテーブルを前倒ししてください。

 

(7)災害VC運営体験実施(第2回目、3回目)

1回目と同様、15分ほどで区切りながら実施してください。
3回目が終了したら配役カードや様式を全て回収し、レイアウトを元に戻して着席させます。
ここで休憩時間を多少とってもよいでしょう。

 

4 災害VC運営体験のまとめ

 体験が終了したら、まずはグループ毎での振り返りを行わせます。センター長を中心に集まり、自由に意見交換してもらってください。
最後に、指導員側から気付いた点をまとめて、体験は終了です。

 

おわりに

本文中にも記載しましたが「読むよりやったほうが理解が早い」のがこのプログラムの特徴です。あまり細かいことは考えず、とりあえず資料を印刷して「流して」みてください。 そのうえで、必要な項目を編集したりするのが、活用への近道です。

資料の細かな扱い方や編集方法、まとめの仕方など、ご不明な点があれば作者までお気軽にお問い合わせください。


 

本記事に関するお問い合わせは 03-6822-9900 まで

第10回 防災体験学習施設「そなエリア東京」に行ってみよう!

第10回 防災体験学習施設 「そなエリア東京」に行ってみよう!

宮﨑 賢哉(ミヤザキ ケンヤ)、防災教育コンサルタント/社会福祉士

災害救援ボランティア推進委員会主任/(社)防災教育普及協会事務局長 兼務

【サマリー】

 「もし、東京で大きな地震が起きたら・・・?」そんな不安を持つ人は少なくないはず。ご紹介する「そなエリア東京」(ホームページ:東京臨海広域防災公園)には、そんな状況をジオラマで体験できるツアーがあります。本講では、まだ行っていない方はより楽しくより学びが深くになるように、もう行った方は新たな視点で体験できるように、ご紹介します。


本講の内容

 

はじめに

1 東京臨海広域防災公園と「そなエリア東京」

2 そなエリア東京に行ってみよう!(関東圏の方)

3 そなエリア東京に行ってみた方へ

4 事前・事後学習


はじめに

地震などで家やビルがくずれて、中に閉じ込められてしまったり、動けなくなってしまったとき、72時間(3日間)を過ぎると命が助かる人は少なくなってしまうと言われています。「黄金の72時間」とか「72時間のかべ」と呼ばれています。1995年に起きた阪神・淡路大震災(はんしんあわじだいしんさい)では、多くの人がこの72時間以内に近所の人や通りがかりの人など身近な人に助けられました。

消防士や消防団、警察官(けいさつかん)など、普段から人の命を守っている人達も、市役所等で仕事をしている人も、大きな災害が起きるとすぐに動くことができません。また、一度にたくさんの人が助けを求めるので、どこも人数が足りなくなってしまいます。そして、いろいろな所から応援が来て、みんなのところに助けが来るまで3日間(72時間)から7日間(一週間)かかる、と言われています。

つまり、災害発生から72時間(以上)は『自分(や家族)の身は自分で守る』という気持ちを持つことが大切です。

 そなエリア東京には「東京直下72時間ツアー」という、地震発生から72時間にどんなことが起きるか、どんなことに気をつけたらいいかを学べるツアーがあります。ここでは、そのツアーを中心に「そなエリア東京」について紹介します。

 

1 東京臨海広域防災公園と「そなエリア東京」

(1)東京臨海広域防災公園って?

(以下ホームページより)

東京臨海広域防災公園は、首都直下地震等の大規模な災害発生時に、現地における被災情報のとりまとめや災害応急対策の調整を行う「災害現地対策本部」等が 置かれる首都圏広域防災のヘッドクォーター及び広域支援部隊等のベースキャンプ、災害医療の支援基地として、東扇島地区(川崎市)の物流コントロールセン ターと一体的に機能する防災拠点施設です。

事業にあたっては、平常時の活用も考慮して、都市公園事業により国土交通省と東京都が役割分担を行い整備することとされ、(1)平常時には関係機関が連携 して防災に関する情報交換や各種シミュレーション・訓練など、発災時に備えた活動を行う場 (2)広く国民がさまざまな体験・学習・訓練を通じて、 防災への関心を高め、実際に災害に対応できる知識や知恵、技術、自助・共助の心を習得する場 (3)臨海副都心の都市集積・集客性を生かした魅力ある空間  とするものとして整備をおこなっています。 国営公園の面積は6.7ha、都立公園の面積は6.5haであり、合計13.2haになります。

・・・

つまり、大きな災害が起きたときは国の防災拠点(ぼうさいきょてん)として、普段は防災訓練や防災教育が行われる公園が「東京臨海広域防災公園」です。

 

(2)そなエリア東京って?

東京臨海広域防災公園内にある、防災体験学習施設です。

2階に情報ラウンジ、防災ギャラリー、映像ホール、レクチャールーム、オペレーションルーム見学窓、

1階に東京直下72ツアー(体験エリア)があります。

(以下ホームページより)

『東京直下72hツアー』

72時間をどう生き残るか

組織的な救助活動がおこなわれるのは、地震発生のおよそ72時間後と言われています。では救助が困難なその72時間を生き残るためにどうするか。
首都直下地震の発災から避難までの一連の流れを体験できるツアーです。

発災 → 脱出 → 再現被災市街地 → 避難場所

・・・

そなエリア東京では地震発生から72時間の流れを体験できるだけでなく、防災に関する様々な学習をすることができます。体験だけであれば1時間ほどで終了しますが、その他のエリアの見学等もする場合は1時間半~2時間ほど時間をとってきてください。

 

2 そなエリア東京に行ってみよう!

そなエリア東京は、りんかい線「国際展示場」駅や、ゆりかもめ「有明」駅からすぐ近くにあります。

東京臨海広域防災公園「そなエリア東京」へのアクセス

駐車場はありませんので、個人の方は公共の交通機関を利用してください。

団体の方はバスが駐車できますが、事前に体験予約が必要です。時期によってはかなり混雑していて、希望する日時に体験できない場合があります。予定が決まったら、なるべく早く予約を入れるようにしてください。

個人の方であれば、予約をしなくても体験できますが、団体の予約が入っている場合は待つ場合もありますので、心配なときは事前に電話で確認してください。

 

東京臨海広域防災公園管理センター  TEL:03-3529-2180

 

3 そなエリア東京に行ってみた方へ

防災クイズの結果はいかがでしたか?簡単だと思った方も、難しかったと思った方も、いろいろと学びがあったのではないでしょうか。

防災クイズにはさまざまなバリエーションがあり、皆さんが体験するクイズはそれぞれ異なっています。次回、体験をするときはまだ解いたことのない問題が出るかもしれません。それを確認するのもひとつの楽しみ方です。

 

また、そなエリア東京では様々なイベントを毎月実施しています。

防災体験学習施設としてだけではなく「公園」としてもぜひ利用してみてください。

(参考)2014年5月のイベントチラシ

 

4 事前・事後学習

そなエリア東京での体験は楽しいものですが「楽しかったね」で終わらないような工夫が必要です。

例えば、事前に

・ 地震はどうやって起きるのだろう?

・ これまでに東京では地震でどんな被害を受けたのだろう?

・ 地震が起きたらどんなものを準備しておけばいいのだろう?

といったことは事前に勉強してから体験すると、もっともっと「そなエリア東京」での防災体験が楽しくなります。

また、体験した後には

・ どんなクイズが難しかったか(簡単だったか)

・ どんな防災対策をしようと思ったか

・ どんな体験、お話が印象的だったか

といったことを、当日参加された方々で話し合ってみても良いでしょう。

 

防災について学べる機会は限られています。特に防災体験学習施設は当然ながら「行かないと体験できない」場所です。

地震の多い国日本で暮らす私たち。「そなエリア東京」で地震や防災のことを、家族やお友達と一緒に改めて考え、学んでみませんか。

 

(了)


お問い合わせは 03-6822-9900 まで