防災ミニ講座

第17回 地域防災力UPシリーズ① 災害図上訓練-DIG-で地域を知ろう

第17回 地域防災力UPシリーズ① 災害図上訓練-DIG-で地域を知ろう

宮﨑 賢哉(ミヤザキ ケンヤ) — 防災教育コンサルタント/社会福祉士–

災害救援ボランティア推進委員会主任/(社)防災教育普及協会事務局長 兼務

 

【サマリー】
 私たちがくらしている
「地域」や「まち」には、見落としてしまいがちな防災・防犯上の危険がかくれています。土砂災害や風水害などでは、そうした見落としがちなポイントや、「ここで何かあったらこわいな・・・」と思いながらも、具体的な対策がとれずにいたところで、大きな被害が発生してしまう可能性があります。そこで、本講では『地域防災力UPシリーズ』として全3回でご紹介します。

 


 

災害図上訓練-DIG(Disaster Imagination Game)-は、大きめの地図にビニールシートなどをかけて、マーカーで色塗りをしながら防災資源の洗い出し、災害危険箇所の発見、地域防災活動のあり方などを考える、訓練様式のひとつです。

 

厳密には様々な手法やアプローチがあり、細かな分類の考えられるプログラムですが、まずはそのようにご理解いただくのが分かりやすいです。そして、広島や京都、兵庫などで発生したの水害や土砂災害から命を守るためには、とても大切な訓練です。水害や土砂災害のように地域性の高い(地域の状況に大きく左右される)災害から命を守るポイントはふたつあります。

 

ひとつ『自分が住む地域・地理のことにどれだけ関心を持ち、知っているかどうか』

ふたつ『水害・土砂災害等も含め、気象災害の基礎知識を持っているかどうか』

 

地域の防災資源や、災害危険箇所、避難ルートなどをシールやマーカーで書き出していくDIGは、ひとつめの地域や地理のことについて関心を持ち、知るための手段として役立ちます。灯台下暗しと言いますが、地域のことを知っているようで知らないことはよくあります。水害や土砂災害は地域の歴史なども関わりますので、いろいろな方の話を聞いてみたら「そんなこともあったのか」と気付くことが多いのもDIGの特徴です。

 

14894634257_d7be99db84_z(写真:まずはみんなで地図を囲んでいろいろ考えてみることから)

 

訓練としての効果は高いDIGですが、その反面きちんとやろうとすると主催者、参加者、指導者それぞれに負担も多く準備が必要です。テーマ設定、地域選び、大きな地図、ビニールシート、マーカー、ふせん…主催者側が準備するものがたくさんあります。

 

14894488209_09ea8fd22b_z(写真:ビニールシート、マーカー、シールなどを用意します)

 

地域のことに詳しい人ばかりではないので、何も分からないと書き込みペースが遅くなることもあります。また、参加者が想定災害について何も分からない状態だと、災害危険箇所の想定ができなかったり、誤った想定になったりします。作業に慣れていない参加者の方々がいれば、一度にたくさん書き込むような指示を出すと「そんなに出来ないよ!」とか「何をどう書いたか分からなくなった」なんてことにもなりかねないので、指導側の力量も大きく影響します。このようにハードルは高いけれど、その分、正しく行えば(特に水害や土砂災害対策に)効果を発揮できる訓練と言えます。

 

大雨警報や土砂災害警報の発報基準、避難勧告や避難指示、がけ崩れや土石流、地すべりの違いなど、水害や土砂災害から身を守るために知るべきことはたくさんあります。DIGはそうした基礎知識の学習と並行して行うことで、より高い効果が期待されます。

 

地域で水害・土砂災害が想定される方は、役所や学校、社会福祉協議会、ボランティア団体などと連携して、積極的にチャレンジされることをオススメします。

 

★★ ご希望の方には地域で実施した際の資料・スライド等をご提供します ★★

こちら からお問い合わせください。

 

写真協力:C大学ボランティアセンター、H市社会福祉協議会、大学生・H地区の皆様