防災ミニ講座

第8回 学校防災教育における学習計画・指導案づくり-中編-

第8回 学校防災教育における学習計画・指導案づくり-後編-

宮﨑 賢哉(ミヤザキ ケンヤ)、防災教育コンサルタント/社会福祉士

災害救援ボランティア推進委員会 主任

【サマリー】

  防災教育は「教育」である以上、ある程度の指導計画や指導案が必要になります。なかなか具体的なイメージが作れず、苦心される先生方も多いかと思います。 そこで、ある中学校での具体的な防災教育を事例に、指導計画・指導案づくりについて考えたいと思います。

 前編では、まず防災教育の企画を考えてみます。

 中編で具体的な指導案づくり等について解説します。

 後編で評価、実務について説明します。

※文中でPDFファイルをダウンロードしていただきます。学校や職場のパソコンにより、ファイルダウンロードができない場合は事務局までお気軽にお問い合わせください。


本講の内容

はじめに

1 防災教育実施企画書をつくってみる(前編)

  (1)授業テーマはなんだろう?

  (2)学習者は誰だろう?

  (3)テーマの選択理由はなぜだろう?

  (4)学習目標はどうしよう?

  (5)前提条件はなんだろう?

2 課題分析をしてみる

  (1)~(4) 「卵焼きを焼けるようになる」授業を例に

  (5)課題分析図を書いてみる

3 学習指導案をつくる

  (1)教材

  (2)指導方法

  (3)指導過程

4 評価ワークシートをつくる

5 進行表をつくって他の教員(担当者)と共有する


 

2 課題分析をしてみる

(参考資料) 2_課題分析シート

前編では、防災教育における「学習目標」と「前提条件」を考えていただきました。

次に「課題分析」を行います。これはどういうことかというと、目標達成において、何が課題になりそうか、その順番はどうなるかを分析するということです。

例えば「卵焼きを作れるようになる」という学習目標を立てたとします。達成条件は卵焼きが作れることです。できれば、おいしく。前提条件として「卵焼きを食べたことがある(卵焼きがどんなものか知っている)」ということを設定したとします。さらに言えば「食べたことがある(知っている)けど、作った経験はない」としましょう。

この状況では、何が課題になるでしょうか。そして、それを授業でどう解決すべきでしょうか。もし僕が卵焼きづくりの授業をするとしたら、こんな感じになる、という例を挙げてみました。参考資料の3.課題分析図目標1.手順分析をお手元に見ながら確認してください。

※あくまで例ですので、卵嫌い・アレルギーの子がいる等の条件は除外します。

(1)そもそも「卵焼きを作る」イメージがわかない。必要性を感じない。という課題

まず「卵焼きを作る」ことのイメージが必要だな。遠足や運動会のお弁当に入っていた母親の手作りの卵焼きが嬉しかった、おいしかった話をしようかな。おばあちゃんに卵焼きの作り方を教わって一人暮らしの時に役立ったことのお話も。それと、料理本などからおいしそうな卵焼きの写真を見せて、料理の楽しさも伝わるといいな。

(2)イメージはわいたけど、どうすればいいか分からない。という課題

自分が卵焼きを作ったときの手順を説明して、塩を入れすぎてしょっぱくなった失敗例や、早く焼ける外側から少しずつ丸めていってうまくいった時の例を説明しよう。できれば写真や動画があったほうがわかりやすいかな。

(3)どうしたらいいかも分かったけど、自分にできるか分からない、不安。という課題

殻が入らないように卵を割る、空気を入れながら混ぜる、調味料を入れる、フライパンに油をひく、フライパンを温める・・・具体的な作業手順を示して、展示したり、資料で説明しよう。何か生徒は苦手な、できない作業はあるかな。あれば他の人に手伝ってもらってもいいからやってもらおう。

(4)作ってみたけど、おいしいかどうか分からない。という課題

実際に食べてみたり、食べ比べてみよう。おいしかった人は、どんな工夫をしたかな。まずかったら、何がいけなかったのかを考えさせよう。

・・・

これが課題分析の方法のひとつ「手順分析」の例です。参考資料にある階層分析については話が細かくなりますのでこちらでは割愛させていただきます。教えたいことを教えるために、何が課題になりそうか?それを順番にクリアしていくにはどうしたらいいか、を整理することで、学習指導案を作成する際の指導過程がより具体的に見えてきます。

(5)課題分析図を書いてみる

さて、それでは実際に書いてみましょう・・・といっても難しいかと思います。まずは、参考資料や上記の例をもとに、学習目標(生徒に教えたいこと)の課題は何かを整理してみてください。あなたが教えたいことを伝えるために、クリアしなければならない課題はなんでしょうか。学習目標、前提条件を意識しながら考えてみてください。

 

3 学習指導案を作る

(参考資料)3_学習指導案

ようやく学習指導案づくりに入ります。ここまでお付き合いいただいた方々であれば、さほど難しくはないかと思います。学習目標、前提条件を整理し、課題分析の流れから指導内容を作っていきます。

 (1)教材

防災教育には様々な教材があります。詳しくはまた別の機会にご紹介させていただきますが、まずは各地の教育委員会等で配付されている副読本などを活用すると良いかと思います。

 (2)指導方法

どのような流れで、何を目的にして行うのかを整理しておきます。ゲーム型式の教材を使用する場合は、使い方なども習熟しておく必要があります。また、生徒に話し合いをさせる場合の工夫などもありますが、このあたりは通常の授業での指導方法とさほど変わらないかと思います。

 (3)指導過程

2.でご紹介した課題分析を意識するようにします。手っ取り早く本論に入りたいところですが、生徒ひとりひとりの理解度には差があるかと思います。ひとつひとつ、確認しながら進めていくことが重要です。時間配分や生徒個別への注意点については、誰よりも先生方が詳しくご存じですので、ご経験を活かしていただくのが良いかと思います。外部の人間が指導に協力する場合は、この点をしっかりと先生と共有しておくことも重要です。

(後編に続く)


 

中編はここまでとなります。

学習指導案は授業の骨子となるものです。何より「形に残す」ことの重要性をお伝えしたいと思います。防災教育はご担当の先生だけがやればいいというものではありません。ご異動等で後任者に引き継ぐこともあるでしょうし、より良い教育のためにブラッシュアップすることも必要でしょう。

そのためには「何を目的とし、どのように指導したか」を常に意識しなければなりません。また、後編でご紹介する評価や他の教職員・管理職への説明においても重要な役割を果たします。

ぜひ、チャレンジしてみてください。

 

お問い合わせは 03-6822-9900 まで