防災ミニ講座

第13回 防災教育のすすめ~命を守る防災教育の考え方と実践事例-前編-~

第13回 防災教育のすすめ ~命を守る防災教育の考え方と実践事例-前編-~

宮﨑 賢哉(ミヤザキ ケンヤ)、防災教育コンサルタント/社会福祉士

災害救援ボランティア推進委員会主任/(社)防災教育普及協会事務局長 兼務

【サマリー】
学校での防災教育や地域での防災学習に取り組みたい方から「必要なのは分かっているけれど、何から始めたらよいのか分からない」「自分はやる気があるけれど、周りが協力してくれない、参加してくれない」と言った声をよく聞きます。本講は「地域防災インストラクター(※災害救援ボランティア推進委員会主催の上級講座を修了し、指定の課題をクリアした方)」希望者を対象とした講義内容を中心にご紹介します。

 

【注意事項】
本講は災害救援ボランティア推進委員会第16期上級講座における科目「地域連携プログラム」における講義内容を整理したものです。概ね講義内容に準じますが、筆者が一部公開に適さないと判断した部分は省略・割愛しています。何卒ご了承ください。

 


●本講の内容(前編)

はじめに

1 なぜ防災教育(防災学習)は必要なのか

(1) 防災教育(防災学習)実践現場が抱える課題と教科⼊りへの議論
(2) 精神論、理想論ではない具体的⼿段の模索
(3)「忘災」への対策が原点であり終着点
(4) 釜⽯東中学校の事例検証

2 命を守る防災教育(防災学習)の考え方

(1) 防護動機理論に基づく2つのポイント
(2) 「やらない・できない・興味ない防災」に至る意志決定プロセス
(3) “最善を尽くせ”とはどういうことか

3 学習指導計画と目標設定

(1) 段階的で継続的な防災リテラシ向上
(2) 文科省による防災教育学習目標
(3) 学習成果と目標行動の関係

 


●本講の内容(後編)

4 防災教育(防災学習)実践事例

(1) 防災教育実践手法マトリクス
(2) 体験「うさぎ一家のぼうさい荷作り」
(3) 事例紹介「ぼうさい探検隊」

5 防災教育(防災学習)のすすめ

(1) 防災教育の評価分析と科学的根拠に基づく実践
(2) 防災教育実践の標準化に向けて

おわりに


はじめに

まずはじめに「一般社団法人 防災教育普及協会」についてご説明します。防災教育普及協会は

 • 防災教育の国内外への普及
 • 防災教育教材、プログラムの検証、開発
 • 防災教育に関する調査研究
 • 防災教育指導者の育成支援
 • 関連事業・調査研究への協力

という5つの事業を進めていくために、2005年頃より各地で始まった防災教育支援事業の関係者(有識者,NPO,民間企業等)が発起人となり2014年に設立されました。2015年3月の国連世界防災会議を見据え、夏以降各種事業を展開します。詳しくは こちら をご覧ください。
http://www.bousai-edu.jp

同会では今後、様々な教材やプログラムをご紹介していくほか、教員研修はじめ各種の研修を実施します。
時折、同会のサイトもご覧いただければ幸いです。

1 なぜ防災教育(防災学習)は必要なのか

(1) 防災教育(防災学習)実践現場が抱える課題と教科⼊りへの議論

これまでの経験から、防災教育実践現場が抱える課題は大きく3つに整理できます。

 

 ☑ 何から始めたらいいのか分からない(知識・経験不足への不安)
 ☑ 時間や予算が確保できない(学事日程・指導計画・経費との兼ね合い)
 ☑ 実施しても継続できない(管理職・担当教員の異動)

 

この課題の解決策は地域や学校によってそれぞれ異なりますので、結果的に防災教育の進捗状況、普及状況というのは地域・学校毎に異なってきます。従って「できるところはできるけど、できないところはできないまま」ということになります。これは憂慮すべき事態です。

一概には言えませんが、防災教育の代表例として有名になった「釜石市立釜石東中学校」のように、防災教育で命が守れるのだとしたら、防災教育ができる学校とそうでない学校との間に「命のリスク」に差が生まれることになります。もっとはっきり言えば「助かる児童生徒と助からない児童生徒」の線引きが、既に始まっている可能性がある、ということです。

その差をなくすためにはどの学校でも実施すればよい、教科化して時間も予算も確保すればよい、ということになります。実際に文部科学省中央教育審議会も、学年毎の課題を整理して、指導要領改訂と防災教育の教科化を視野に入れた検討を行っています。

ところが、全国都道府県教育委員会連合会による調査報告書(H24年度)によると、防災教育教科化に対して47都道府県中32県が「必要ない」と回答(68%)しています。

大ざっぱにまとめれば「国として防災教育を教科化していく方向性だけど、現場としては評価が難しく、現行科目で対応できると考えている」というのが現状です。当然ながら、このまま教科化の話だけが進めば現場とのかい離は大きくなり、いずれ、あるいは既に「防災教育指導者の不足」という現状が浮き彫りになります。

消防や我々のようなボランティアが協力するにしても、全校全児童は到底フォローできません。かといって、今の先生方皆さんに「防災教育ができるようになれ!」というのも無理な話です。抜本的な対策を考える必要があります。

 

(2) 精神論、理想論ではない具体的⼿段の模索

「抜本的な対策」がすぐに講じられれば話は簡単なのですが、そうもいかないのが難しいところです。方針と現場のかい離は既に始まっています。その典型的な例が精神論・理想論と具体的学習目標の混同です。

例えば「災害から命を守れるようになる」とか「地域防災に貢献できる生徒になる」といった目標があるとします。但し、これはあくまで「理想的には」ということを忘れてはいけません。そもそも、指導する側、つまり教員やボランティア本人が「本当に災害から命を守れるのか」「普段から地域防災に貢献しているのか」という話です。自信をもって「できます、してます」と言える方はごく少数でしょう。

自分にできない(やっていない)ことを、どうして児童生徒に説得力をもって教えられるのでしょうか。仮に教えることはできるかもしれませんが、結局のところ経験不足は理想論と一般論の間で補わざるをえず、当を得た指導は難しいのではないでしょうか。かといって「まずは地域防災活動への参画から」ともいきません。

それでも「防災教育はやらねばならない、やっていきたい」のが現状です。

そこで生まれてくるのが前述した理想と現実の混同です。「(この発達段階の)子どもたちに何ができるか」を考えるためには、災害対応全体を考慮してどこまでを大人がやるべきで、どこからを子どもにさせるのか、を整理する必要がありますが、そのイメージに必要な基礎知識や経験が不足していると、どこかの誰かが示す「理想論」に頼らざるを得ません。

 

では、いったい何ができれば「命を守れる」と言えるのでしょうか。何をしたら「地域防災に貢献できる生徒」だと言えるのでしょうか。すぐに答えは出ません。分からないことを考えてもしょうがないので、この問いはとりあえず脇に置いておきましょう。

いま、我々がすべきことは精神論や理想論を追うことでも、理想と現時のかい離を嘆くことでもなく「具体的手段」を講じることです。
子どもたち、生徒、地域住民の命を守りたいですか。では、何が彼らにとって最大の危険(リスク)ですか。そのリスクを回避・軽減・転嫁・受容、どのようにして取り除くまたは受け入れますか。

 

(3)「忘災」への対策が原点であり終着点

僕は防災講演会や教員研修等でよく「エビングハウスの忘却曲線」を紹介します。
ごく簡単に言えば「人は単純な記号の羅列をあまり覚えていられない」ということです。そして、多くの方々にとって地震や災害の記憶というのは「記号の羅列」にしか過ぎないということです。一般的に震災に対する記憶は【1995年・阪神淡路大震災・6,000人(くらい)】【2011年・東日本大震災(津波・原発)・20,000人(くらい)】といった感じです。

自分自身や親しい人が被災した、あるいは何らかの強い思い入れがある場合は「エピソード記憶」といって感情も含めて憶えていることができますが、記号は日々の記憶に上書きされていってしまいます。

本講を読んでいただいている方だとしても、およそ90年前の関東大震災のことを、どれだけ具体的にイメージすることができるでしょうか。
どんな被害があり、どんな教訓があったのか、「憶えて」いるでしょうか。
災害を忘れること、つまり「忘災」は、私たち、ひいては次の世代の子どもたちが学ぶべき教訓を、雑多な情報で洗い流していまいます。
それは結果として「命のリスク」を高めることになります。

東日本大震災を風化させるな、と言っているのではありません。それ以前のあらゆる震災・災害に学ぶべき事があったはずで、それを学ぶために数え切れないほどの命が失われたきたと伝えたいのです。そのことに、映像や講話で子どもたち、地域住民に気付いてもらうこと。それは僕の考える「具体的手段」のひとつです。

大それた指導案も教材もプログラムも必要ありません。要は考え方、気付きの段階の話です。
ただ「日本は幾度も災害に見舞われ、その都度何万何十万もの人が犠牲になってきた」という現実、そして「防災」とはそうして失われてきた数多の命が教えてくれる、大切な教訓なのだと、気付いてもらうことが防災教育の原点であり、また終着点でもあると考えています。

 

(4) 釜⽯東中学校の事例検証

防災教育は”奇跡を生み出す魔法の泉”ではありません。
時間とお金と労力、それに携わる人々の強い意志が防災教育の源泉です。これは抽象的表現ではなく事実です。時間もお金も労力もかけず、適当な気持ちで防災教育を行って命が守れるならば、とっくの昔に「防災教育」は普及・成立し、命が失われることもなかったはずです。そうでないから、今これほどまでに必要に迫られ、また課題となっています。

釜石東中学校の事例を奇跡で片付けるのではなく「現実に起こった(人が起こした)こと」として受け止め、ヒト・モノ・カネといったある種生々しいものがどう対応に影響したのか、を考えると様々なヒントがあることでしょう。

大切なのは、”防災・防災教育の実践に近道も抜け道もない”ということ”奇跡を求めても命は守れない”ということです。

防災にはお金も時間も労力もかかりますし、面倒で結果もすぐには出ないでしょう。しかもやり続けなければいけない。大人になってからそれができる人はごくわずかです。だからこそ、例え様々な課題はあっても教育現場で、具体的手段によって、学べるうちに子どもたちに伝えてあげることが重要です。

 

■参考資料(授業でも使えます!)
東京都教育庁製作・災害救援ボランティア推進委員会企画
「助け合う防災教育~学校・地域・家庭のつながりをつくる~」DVD,15分
※ご希望の方は「お問い合わせ」よりご連絡ください。

 

2 命を守る防災教育(防災学習)の考え方

第1項では、防災教育、防災学習の現状と課題、必要性について考えました。第2項では、基本的な考え方について触れていきます。

 

(1) 防護動機理論に基づく2つのポイント

釜石東中学校は奇跡によって助かったのではない、としましたが、では「いったい何が命を守ったのか」と考えたときに一番はじめに来るのが【決断】です。
先生方やさらなる高台への避難を”決められた”から助かったのです。但し、それが適切(正解)であるかどうかを、その時点で判断することはできません。
それでも決めなければならないのが「災害時の決断」です。

僕は災害ボランティアとしての経験から、災害時の決断のポイントをごくシンプルに

 

 1.決断は素早くする(正解を求めず最悪を回避する)
 2.情報が足りなくても決める(知識・経験で情報を補う)
 3.決めてから状況に応じて修正する(柔軟な姿勢を持つ)

 

と説明していますが、これは経験則的な現場対応術に過ぎません。
本項ではもう少し災害時の決断について理論的背景に基づき説明します。

安全教育では基礎理論として防護動機理論(Protection Motivation Theory)という理論があります。防護動機理論に基づくと、適切な(一般的に適切だと思われる)行動をとるためには「災害の脅威に対する評価」と「災害に適切に対処できることの評価」が行動につながると考えられます。

例えば、目の前に熱々のお鍋があるとしましょう。もしそれをそのまま持ったらヤケドしてしまいます(災害の脅威に対する評価)。鍋つかみ(ミトン)を使えばヤケドをしないと知っていれば(災害に適切に対処できることの評価)、ヤケドをせずお鍋を運べます。

地震・津波を例にすれば

 

 ○ 地震災害が大きな被害をもたらす可能性があり、自分も危険だと認識する。
 ○ 適切な対処をすれば、例え被害が出ても回避できると認識する。

 

ということが適切な行動、「災害時の決断」へとつながりますし、どちらかが欠けてしまえば行動につながらない可能性がある、ということです。
例)危険だと思わないから逃げない、対処方法を知らないから何もできない、等

従って「命を守る防災教育」の基本的考え方は、この2点をしっかりと児童生徒、地域住民に認識させることになります。

 

(2) 「やらない・できない・興味ない防災」に至る意志決定プロセス

前述のように、災害時の安全行動は防護動機理論に基づき考えることができました。だから防災(教育)は必要だ、大切だ、というのはもっともらしい意見です。
ただ「なら、なんで防災(教育)は様々な世代に幅広く広がらないのか」という話になります。

そこで、私たちが普段どのようにして「決めて」いるかを意志決定のプロセスで読み解いていきます。

 

■人はどのようにして「決める」のか(6段階の合理的な意思決定プロセス)

1.問題を認識する
2.意思決定の判断基準を特定する
3.判断基準を秤にかける
4.代替案を考える
5.それぞれの案を判断基準に照らして評点をつける
6.最適な意思決定を見積もる

 

ざっくりと整理すると「人は一般的に、自分の価値観(経験)を秤にかけながら決めている」ということです。従って防災(教育)より大事なもの、大切なものがある人にとっては、いくら防災(教育)を大事だと思っている人が大事だと言ったところで、意志決定に影響することはない、ということです。

これは児童生徒、地域住民も同様です。いくら指導者が大事だと思っても、彼らが大事だと思わなければ前述した危険・適切な対処の認識にはつながらないのです。
「命を守る防災教育」では、その内容だけでなく、対象者の世代、価値観、ライフスタイル、なども考慮することが重要になります。

 

(3) “最善を尽くせ”とはどういうことか 

津波避難3原則のひとつに「そのときに出来る最善を尽くせ」というのがあります。
それはそれで正しいと思うのですが、僕がひとつ疑問に思うのは「自分の命が危険かもしれないと思った人で、最善を尽くさない人がいるのだろうか」ということです。
ただ、被害の有無はその最善が知識や経験のある人にとっての最善と、その方にとっての最善とが異なっていたということであって、被災した誰もがその場で最善を尽くしたのではないか、という気がしてならないのです。

従って僕は「(その時に)最善を尽くせ」だけではなく「(その時が来る前に)最善を尽くせ」ということをお伝えしたいと思います。
「命を守る防災教育」はその時、何ができるかだけではなく「それまで何をしてきたか」にかかっていると言えるでしょう。

 

3 学習指導計画と目標設定

(1) 段階的で継続的な防災リテラシ向上

さて、本項では具体的な指導計画や目標設定について触れていきます。
京都大学の林先生による整理では、防災リテラシー(防災に関する基礎的な理解力、能力のこと)を高めるためには大きく4つの分野からのアプローチが考えられます。

 

1.自分たちがいま直面しなければならない敵の姿をはっきりさせること【自然科学】
2.被害を予防すべきものを選ぶこと、それを確実に実現する技術、資金、時間【工学】
3.被災を乗り越え被害から回復できる強さ、そのための教え、ノウハウ、助け合い【社会科学】
4.これら3つの力を使って問題を解決する力【生きる力】

 

つまり「本当に防災について身に付けるためには勉強しなきゃいけないことがいっぱいある!」ということです。
年に1回の防災講演会でどうにかなるようなことではありません。体系的な教育訓練、具体的には義務教育における基礎(必修)教育、高等教育における発展(単位化)などが求められます。

・・・そんなこと言っても今すぐ何とかできないのか!ということになりますが、第1項でも示したとおり、近道も抜け道もありません。
できることから、少しずつ、焦らず進めていく必要があります。

 

(2) 文科省による防災教育学習目標

では、文部科学省はどのような学習目標を出しているのでしょうか。

高校段階
安全で安心な社会づくりへの参画を意識し、地域の防災活動や災害時の支援活動において、適切な役割を自ら判断し、行動できる生徒

中学校段階
日常の備えや的確な判断のもと主体的に行動するとともに、地域の防災活動や災害時の助け合いの大切さを理解し、すすんで活動できる生徒

小学校段階
日常生活の様々な場面で発生する災害の危険を理解し、安全な行動ができるようにするとともに、他の人々の安全にも気配りできる児童

幼稚園段階
安全に生活し、緊急時に教職員や保護者の指示に従い、落ち着いてすばやく行動できる幼児
理想的な目標としては理解できますが「どうしたらそういう生徒になれるだろうか」と考えるとなかなか難しい目標です。
まして前述のとおり「安全で安心な社会づくりへの参画を意識して地域の防災活動等に取り組んでいる大人」が、まわりを見渡した時にごくわずかであるような現状において、高校段階までの目標を達成するのは難しいかもしれません。

 

(3) 学習成果と目標行動の関係

こうした現状を踏まえて、僕は学習成果と目標行動を明確につなげた目標設定をした上で、学校等での防災教育支援を行っています。

■現実的に考えられる 防災教育全体計画及び教育目標

高校段階 中学校段階

①災害への日常的な備えを正しく説明できる生徒
②主体的に的確な安全確保行動がとれる生徒
③災害例と地域の防災対策、自身の能力を比較し、防災活動や助け合いで自分に何ができるか的確に判断できる生徒

幼稚園段階 小学校段階

①日常の場面の災害の危険を正しく説明できる児童
②指示に従い安全確保行動がとれる児童
③災害時の他者の心情や状況を理解し、配慮ができる児童

 

小学生までは「きちんと指示を聞いて安全な行動ができる」ことを第一に。
中学生以上は(小学生までの知識・行動を前提として)「指示がなくても行動できるようになる」ことを第一に。

この目標設定であれば、少し勉強すれば学校の先生方も自ら実践する(認識する)ことができます。
自分にできることであれば、児童生徒に自身を持って教えることもできるはずです。

後編で実践事例や教材等ご紹介します。最後までお付き合いいただきありがとうございました。)

参考資料・文献:
・林春男(2005),『いのちを守る地震防災学』岩波書店
・スティーブン.P.ロビンス(2009),『組織行動のマネジメント』ダイヤモンド社
・全国都道府県教育委員会連合会 http://www.kyoi-ren.gr.jp/report/houkokusyo.html

第12回 防災教育に使える教材② -うさぎ一家のぼうさいグッズえらび-

第12回 防災教育に使える教材② -うさぎ一家のぼうさいグッズえらび-

宮﨑 賢哉(ミヤザキ ケンヤ)、防災教育コンサルタント/社会福祉士

災害救援ボランティア推進委員会 主任/(社)防災教育普及協会 事務局長

【サマリー】

『うさぎ一家のぼうさい荷作り』は家庭で備える防災グッズをテーマにしながら、家族やお友達と話し合いながら防災の考え方を学ぶことができる教材です。どなたでも自由にダウンロードしてご利用いただけますので、地域・学校等での防災学習にお役立てください。専門的な知識や指導経験は不要です。ワークシートを配付するだけで、児童生徒・住民の自発的な学習をサポートします。なお、実践の際は併せて掲載している『防災教育振り返りシート』も配付していただき、結果をご報告いただけますと幸いです。

本講の内容は教育WEB事典「EDUPEDIA」に掲載中です。

EDUPEDIA「うさぎ一家のぼうさい荷作り」http://edupedia.jp/entries/show/1818

 


 

●本講の内容

授業(学習)内容と目的

導入 : 自分で考えることの大切さを伝えよう

展開 : 家族で必要なものが違うことを伝えよう

まとめ : 災害はみんなで備えることだと伝えよう

ワークシート・評価シートダウンロード

イラストデータダウンロード(提供:そなエリア東京)

 


授業(学習)内容と目的

本授業(学習)では、防災と聞いて誰もがイメージできる「非常持ち出し袋」をきっかけにしながら、その中身について考えるだけでなく、家族(近隣住民等も)で話し合うことの大切さや、まわりの人とみんなで備えることの大切さ、すなわち【防災】にとって重要な気付きを与えることを目的としています。

教材はシンプルにワークシート一枚だけですので、どなたでも自由に利用することができます。少し工夫をして、ダンボール等を活用することでより楽しみながら学ぶことができます。

 

導入 : 自分で考えることの大切さを伝えよう

まずは学習者(児童生徒、地域住民等)にワークシートを配付してください。

ワークシートには「うさぎ一家」の状況が書かれています。うさぎ一家は「おとうさん、おかあさん、おじいちゃん、おばあちゃん、ぼく、わたし、赤ちゃん」で暮らしています。ワークシートは「ぼく/わたし」の視点で描かれていますが、学習者の立場で考えてもらって構いません(実際におじいちゃんならおじいちゃん、おかあさんならおかあさんの立場で)。

 

キャプチャ

 

指導者(教員、講師等)は、まずここで「防災対策や非常持ち出し袋は”自分で考える”ことが大切である」ことを伝えましょう。

家族の立場によって、必要なものは違ってきます。それぞれの立場に沿った防災対策、持ち出し袋を考えることが重要になるためです。特に、高齢者や乳幼児には特別な配慮が必要で、一般的に言われている「非常持ち出し袋」の中身では対応できない場合があります。事前にひとりひとりが(自分で考えられない乳幼児の場合は、親が)自分に必要なものを考えることが大切です。

 

展開 : 家族で必要なものが違うことを伝えよう

「導入」で伝えたことをふまえて、実際にワークシートを使って作業をさせます。

キャプチャ2

ワークシートでは前述のとおり「ぼく/わたし」の視点で考えることになっていますが、そのまま「ぼく/わたし」の視点で考えてもよいですし、参加者それぞれが実際の自分の立場に照らし合わせて考えていただいても結構です。イラストから必要だと思うものを10個選ぶだけですが、ひとりひとりが自分の知識や経験から考えますので、様々な回答がでてきます。

指導者はどれが正解なのかを考えさせるより「自分で考える」ことの大切さを今一度伝えたうえで、家族で必要なものは違うことを伝えてください。その中で、もし自分が10個しか持てないとしたら、家族で助け合うために、自分はどんなものを持っていくべきかを考えさせてください。

また「スペシャル(空欄)」には自分で絵を描くことができます。このイラストの中には非常持ち出し袋に必ず入っている「あるもの」がありません。皆さんはそれに気付くでしょうか。そして、参加者はそれに気付くことができるでしょうか。【答えが知りたい方はお気軽にお問い合わせください】

 

まとめ : 災害はみんなで備えることだと伝えよう

自分で10個選ぶことができたら、お互いにワークシートを見せ合い、班やグループの中で話し合わせてください。自分はどんな理由でそのグッズを選んだか、家族の誰のために、何が必要だと思ったかなどを積極的に意見交換させることで、防災を自分のこととして考えることができます。

指導者から模範回答を示す必要はありませんが、参考資料が欲しい場合は新潟市が公開している こちら の情報なども参考にしてください。

 

ワークシート・振り返りシートダウンロード

うさぎ一家のぼうさいグッズえらびワークシート_140616v

防災教育共通振り返りシート_130926v

(参考資料)学習指導案(45分授業・起震車体験含)

★Word形式ですので自由にご利用ください。ダンボールを使った教材作成の方法も掲載してあります。

(参考資料)児童生徒による振り返り集計表(単純集計編)

(参考資料)児童生徒による振り返り集計票(記述回答編)

 

イラストデータダウンロード

防災グッズイラスト集

 

 


 

本記事に関するお問い合わせは 03-6822-9900 まで

第11回 災害ボランティアセンター運営を体験してみよう!

第11回 災害ボランティアセンター運営を体験してみよう!

宮﨑 賢哉(ミヤザキ ケンヤ)、防災教育コンサルタント/社会福祉士

災害救援ボランティア推進委員会主任/(社)防災教育普及協会事務局長

【サマリー】

大規模災害が発生すると、全国からボランティアが被災地に駆けつけます。ですが、被災地は人も建物も被災していて、充分にボランティアを受け入れたり、調整したりするのが難しいことがあります。そんなときに開設・運営され、ボランティア調整の中核となるのが災害ボランティアセンター(以下「災害VC」)です。本講では、災害VC運営(のほんのごく一部ですが)を疑似体験できる『ロールプレイング』のプログラムをご紹介します。

中高生から社会福祉協議会(以下「社協」)の職員の方、現地での経験豊富な方まで、どなたでも楽しみながら学べるプログラムです。各種教材がダウンロードできるようになっていますので、ぜひ研修等でご利用ください。利用料等は不要ですし、編集も自由です(出典明記のみご協力願います)。
【注意事項】
 本プログラムは、様々な地域の社協の災害VC運営マニュアルや様式をベースに整理したひとつの事例です。「こうすればうまくいく」「こうしなければいけない」というものではありませんので、くれぐれもご注意ください。

 


 

●本講の内容

はじめに

1 まずは資料をダウンロードしよう

2 災害VC運営体験の実施準備

3 災害VC運営体験の流れ

4 災害VC運営体験のまとめ

おわりに

 


はじめに

本プログラムは
・資料を印刷する
・よく読んでみる
・実際に様式を動かしてみる
・振り返る

という4つのステップだけでできるよう、構成されています。 細かい点を実情に合わせたり、効率の良い様式を考えるためにはある程度の知識や経験が必要ですが、体験するだけであれば誰でも可能です。ただし、主催者側(指導員側)にはプログラムを扱ううえで注意していただきたいこと、理解しなければならないことが
いくつかありますので、こちらをよく読んでから、ご利用いただければと思います。

 

1 まずは資料をダウンロードしよう

まずは下記から参考資料をダウンロードして、印刷してください。
かなりのボリュームになりますので、プリンターの用紙やインクを確認してから始めてください。

★★★ 災害VC運営ロールプレイング資料集 ★★★

03_【教材】災害VC運営ロールプレイングVer3

 上記をクリックしてダウンロードしてください。
 zipフォルダになっていますので、解凍ソフト等を使用してください。
 うまくダウンロードできない、閲覧できない場合は こちら からお問い合わせください。

 

—資料内容—

【指導者用資料】
災害ボランティアセンター運営ロールプレイング説明資料[PPT]

【参加者用配付資料】
資料0_災害ボランティアセンター運営ロールプレイング説明用紙
資料1_災害ボランティアセンターの設置運営編[内閣府]
資料2_タイムテーブル(180分)

【訓練用様式】
様式01a_ボランティア個人受付票
様式01a_団体受付票
様式01b_ボランティア派遣要請・ニーズ受付票
様式02_ボランティア受付時配付資料
様式03_ボランティア派遣依頼票
様式04_個別オリエンテーション資料
様式05_活動先地図
様式06_資機材等貸出台帳
様式07_活動報告書

【配役カード】
ボランティア役カード(1)
ボランティア役カード(2)
被災者役カード(1)
被災者役カード(2)

 

★★★ポイント★★★

 指導者側(主催者側)の方は、事前に資料をよく読み込んでおいてください。
 資料は一部を除き、WordやExcel形式になっています。
 地域や社協の実情に応じて自由に編集していただいて構いません(出典明記のみご協力願います)。

 

2 災害VC運営体験の実施準備

それでは、お手元の資料を使って災害VC運営体験を実施するまでの準備をご説明します。
仮に次のような環境で講習を実施する、と仮定します。

 

◆仮想実施環境◆

・主催者は社協
・対象者は社協職員、一般市民、災害ボランティア登録者 40名ほど
・目的は社協や一般市民に災害VCについて理解してもらうこと
・土日祝日の午前中、9:30~12:30の3時間
・指導は社協職員か、経験のある災害ボランティアが行う

 

(1)タイムテーブルを作ろう

資料2_タイムテーブル を使って、3時間のタイムテーブルを作成します。
3時間かけなければいけない、ということではありませんので、ローテーションの回数を少なくしたり、説明を省いたりすれば1時間~2時間でも可能です。

 

(2)説明資料や様式を編集しよう

主催者側の実情に合わせて、説明資料や様式を編集してください。
編集せずに、資料のまま使っても構いません。
(1)で作成したタイムテーブルによっては、一部の手順を省いたり、様式を使わないということも考えられます。 状況に応じて利用してください。

 

(3)配役カードを作ってみよう

配役カードはダウンロードして使っても、オリジナルでつくっても構いません。
できれば、主催者側の実情を反映した配役カードがあると良いでしょう。
定員数によって、カードの枚数を増減しても構いません(ダウンロードできる配役カードで60名程度までは対応可能です)。

 

(4)資料を印刷してみよう

【参加者用配付資料】を参加者数分印刷します。
各種様式については、定員数や実施時間を考慮して適宜印刷します。
配役カードは一セット作成すれば大丈夫です。

 

(5)主催者側でシミュレーションしてみよう

主催者側、指導員で資料の読み合わせや、様式の流れを一度シミュレーションしてみましょう。
以外なところで様式が行き詰まったり、時間がかかったりすることがあります。
必要に応じて説明資料や様式を修正して、当日に備えましょう。

 

(6)会場のレイアウトや使用する機材をチェックしよう

このプログラムでは可動式の机と椅子、ある程度の広さがある会議室等(定員50~100名)が必要です。 できれば、小さい会議室等が2~3あると良いでしょう(なければ構いません) もし、指導者用資料のパワーポイント等を使う場合は、プロジェクター等のチェックもお忘れなく。

 

(7)広報や情宣をしっかりやろう

このプログラムは使う様式が多かったり、流れが複雑なため、災害ボランティア活動等の経験が少ない方には
分かりづらい点が多いかもしれません。まずは主催者側がしっかりと読み込み、流れを理解したうえでターゲットを決めて
広報や情宣を行ってください。

 

指導者がしっかりしていれば、中学生でも充分に活躍できるのが、このプログラムの特徴です。
あまり肩肘はらずに楽しんでもらうくらいの気持ちで実施するのがポイントかと思います。

 

3 災害VC運営体験の流れ

 いよいよ当日となりました。当日の一連の流れを簡単に整理します。

 

(1)受付・資料配付

受付をして、参加者用資料を配付してください。
筆記用具があったほうが良いので、なければボールペン等も渡してください。

 

(2)資料確認とルール説明

ざっと資料の確認とルールを説明してください。 説明資料をきちんと読んでもらえれば、ある程度はご理解いただけるかと思います。
ポイントは「読むよりやったほうが理解できる」ことです。文字より体で理解してもらったほうがよいでしょう。

 

(3)役割決め、レイアウト作り

役割やレイアウトは主催者側の実情に応じて調整してください。
マニュアルが既に作成されていれば、そのマニュアルに従ったほうが実戦的です。

 

(4)実施準備(第1回目)

最初に災害VCスタッフ役を行うグループのみ会場に残り、他のグループは退出させます。
他のグループにはそれぞれ被災者役、ボランティア役のカードを配って覚えてもらいます。

災害VCスタッフ役には、印刷した様式を渡し、どの場面で使うかを簡単に説明してください。
あとは「センター長」役の方に任せ、概ね15分ほどでレイアウトを作ってもらいます。

 

★★★ポイント★★★

 手荷物は基本的に持ち歩くよう指導してください。
 災害ボランティア活動中に、荷物を置きっ放しにすることはないですよね。
 面倒ですが、レイアウト作りのじゃまになりますので理解していただいてください。

 

(5)災害VC運営体験実施(第1回目)

レイアウトができてセンター長に確認をとったら体験を開始します。
被災者役、ボランティア役に会場(仮想の災害VC)に入るよう指導してください。
配役カードはなるべく見ないように説明してください。15分ほど実施したら終了します。

「活動報告書」が何枚書かれていたかを確認してみましょう。

 

★★★ポイント★★★

 活動報告書の枚数は2回目、3回目になるほど増えていくのが一般的です。 それが「練習すればうまくなるんだ、やればできるんだ」という実感を参加者に持たせるしかけです。もし増えなかったとしても「スピードよりも丁寧なマッチングが大切です」とフォローすればOK。

その他、指導員が気付いた点があれば、簡単に指摘してすぐに次のグループに移ります。

 

(6)実施準備(第2回目、3回目)

1回目で使った様式は整理して廃棄してください。
レイアウトはそのまま残しておきますが、次のグループが変えても構いません。
準備には15分かからない場合もあります。10分程度でよければ、センター長役に確認して
タイムテーブルを前倒ししてください。

 

(7)災害VC運営体験実施(第2回目、3回目)

1回目と同様、15分ほどで区切りながら実施してください。
3回目が終了したら配役カードや様式を全て回収し、レイアウトを元に戻して着席させます。
ここで休憩時間を多少とってもよいでしょう。

 

4 災害VC運営体験のまとめ

 体験が終了したら、まずはグループ毎での振り返りを行わせます。センター長を中心に集まり、自由に意見交換してもらってください。
最後に、指導員側から気付いた点をまとめて、体験は終了です。

 

おわりに

本文中にも記載しましたが「読むよりやったほうが理解が早い」のがこのプログラムの特徴です。あまり細かいことは考えず、とりあえず資料を印刷して「流して」みてください。 そのうえで、必要な項目を編集したりするのが、活用への近道です。

資料の細かな扱い方や編集方法、まとめの仕方など、ご不明な点があれば作者までお気軽にお問い合わせください。


 

本記事に関するお問い合わせは 03-6822-9900 まで

第10回 防災体験学習施設「そなエリア東京」に行ってみよう!

第10回 防災体験学習施設 「そなエリア東京」に行ってみよう!

宮﨑 賢哉(ミヤザキ ケンヤ)、防災教育コンサルタント/社会福祉士

災害救援ボランティア推進委員会主任/(社)防災教育普及協会事務局長 兼務

【サマリー】

 「もし、東京で大きな地震が起きたら・・・?」そんな不安を持つ人は少なくないはず。ご紹介する「そなエリア東京」(ホームページ:東京臨海広域防災公園)には、そんな状況をジオラマで体験できるツアーがあります。本講では、まだ行っていない方はより楽しくより学びが深くになるように、もう行った方は新たな視点で体験できるように、ご紹介します。


本講の内容

 

はじめに

1 東京臨海広域防災公園と「そなエリア東京」

2 そなエリア東京に行ってみよう!(関東圏の方)

3 そなエリア東京に行ってみた方へ

4 事前・事後学習


はじめに

地震などで家やビルがくずれて、中に閉じ込められてしまったり、動けなくなってしまったとき、72時間(3日間)を過ぎると命が助かる人は少なくなってしまうと言われています。「黄金の72時間」とか「72時間のかべ」と呼ばれています。1995年に起きた阪神・淡路大震災(はんしんあわじだいしんさい)では、多くの人がこの72時間以内に近所の人や通りがかりの人など身近な人に助けられました。

消防士や消防団、警察官(けいさつかん)など、普段から人の命を守っている人達も、市役所等で仕事をしている人も、大きな災害が起きるとすぐに動くことができません。また、一度にたくさんの人が助けを求めるので、どこも人数が足りなくなってしまいます。そして、いろいろな所から応援が来て、みんなのところに助けが来るまで3日間(72時間)から7日間(一週間)かかる、と言われています。

つまり、災害発生から72時間(以上)は『自分(や家族)の身は自分で守る』という気持ちを持つことが大切です。

 そなエリア東京には「東京直下72時間ツアー」という、地震発生から72時間にどんなことが起きるか、どんなことに気をつけたらいいかを学べるツアーがあります。ここでは、そのツアーを中心に「そなエリア東京」について紹介します。

 

1 東京臨海広域防災公園と「そなエリア東京」

(1)東京臨海広域防災公園って?

(以下ホームページより)

東京臨海広域防災公園は、首都直下地震等の大規模な災害発生時に、現地における被災情報のとりまとめや災害応急対策の調整を行う「災害現地対策本部」等が 置かれる首都圏広域防災のヘッドクォーター及び広域支援部隊等のベースキャンプ、災害医療の支援基地として、東扇島地区(川崎市)の物流コントロールセン ターと一体的に機能する防災拠点施設です。

事業にあたっては、平常時の活用も考慮して、都市公園事業により国土交通省と東京都が役割分担を行い整備することとされ、(1)平常時には関係機関が連携 して防災に関する情報交換や各種シミュレーション・訓練など、発災時に備えた活動を行う場 (2)広く国民がさまざまな体験・学習・訓練を通じて、 防災への関心を高め、実際に災害に対応できる知識や知恵、技術、自助・共助の心を習得する場 (3)臨海副都心の都市集積・集客性を生かした魅力ある空間  とするものとして整備をおこなっています。 国営公園の面積は6.7ha、都立公園の面積は6.5haであり、合計13.2haになります。

・・・

つまり、大きな災害が起きたときは国の防災拠点(ぼうさいきょてん)として、普段は防災訓練や防災教育が行われる公園が「東京臨海広域防災公園」です。

 

(2)そなエリア東京って?

東京臨海広域防災公園内にある、防災体験学習施設です。

2階に情報ラウンジ、防災ギャラリー、映像ホール、レクチャールーム、オペレーションルーム見学窓、

1階に東京直下72ツアー(体験エリア)があります。

(以下ホームページより)

『東京直下72hツアー』

72時間をどう生き残るか

組織的な救助活動がおこなわれるのは、地震発生のおよそ72時間後と言われています。では救助が困難なその72時間を生き残るためにどうするか。
首都直下地震の発災から避難までの一連の流れを体験できるツアーです。

発災 → 脱出 → 再現被災市街地 → 避難場所

・・・

そなエリア東京では地震発生から72時間の流れを体験できるだけでなく、防災に関する様々な学習をすることができます。体験だけであれば1時間ほどで終了しますが、その他のエリアの見学等もする場合は1時間半~2時間ほど時間をとってきてください。

 

2 そなエリア東京に行ってみよう!

そなエリア東京は、りんかい線「国際展示場」駅や、ゆりかもめ「有明」駅からすぐ近くにあります。

東京臨海広域防災公園「そなエリア東京」へのアクセス

駐車場はありませんので、個人の方は公共の交通機関を利用してください。

団体の方はバスが駐車できますが、事前に体験予約が必要です。時期によってはかなり混雑していて、希望する日時に体験できない場合があります。予定が決まったら、なるべく早く予約を入れるようにしてください。

個人の方であれば、予約をしなくても体験できますが、団体の予約が入っている場合は待つ場合もありますので、心配なときは事前に電話で確認してください。

 

東京臨海広域防災公園管理センター  TEL:03-3529-2180

 

3 そなエリア東京に行ってみた方へ

防災クイズの結果はいかがでしたか?簡単だと思った方も、難しかったと思った方も、いろいろと学びがあったのではないでしょうか。

防災クイズにはさまざまなバリエーションがあり、皆さんが体験するクイズはそれぞれ異なっています。次回、体験をするときはまだ解いたことのない問題が出るかもしれません。それを確認するのもひとつの楽しみ方です。

 

また、そなエリア東京では様々なイベントを毎月実施しています。

防災体験学習施設としてだけではなく「公園」としてもぜひ利用してみてください。

(参考)2014年5月のイベントチラシ

 

4 事前・事後学習

そなエリア東京での体験は楽しいものですが「楽しかったね」で終わらないような工夫が必要です。

例えば、事前に

・ 地震はどうやって起きるのだろう?

・ これまでに東京では地震でどんな被害を受けたのだろう?

・ 地震が起きたらどんなものを準備しておけばいいのだろう?

といったことは事前に勉強してから体験すると、もっともっと「そなエリア東京」での防災体験が楽しくなります。

また、体験した後には

・ どんなクイズが難しかったか(簡単だったか)

・ どんな防災対策をしようと思ったか

・ どんな体験、お話が印象的だったか

といったことを、当日参加された方々で話し合ってみても良いでしょう。

 

防災について学べる機会は限られています。特に防災体験学習施設は当然ながら「行かないと体験できない」場所です。

地震の多い国日本で暮らす私たち。「そなエリア東京」で地震や防災のことを、家族やお友達と一緒に改めて考え、学んでみませんか。

 

(了)


お問い合わせは 03-6822-9900 まで

第9回 学校防災教育における学習計画・指導案づくり-後編-

第9回 学校防災教育における学習計画・指導案づくり-後編-

宮﨑 賢哉(ミヤザキ ケンヤ)、防災教育コンサルタント/社会福祉士

災害救援ボランティア推進委員会 主任

【サマリー】

  防災教育は「教育」である以上、ある程度の指導計画や指導案が必要になります。なかなか具体的なイメージが作れず、苦心される先生方も多いかと思います。 そこで、ある中学校での具体的な防災教育を事例に、指導計画・指導案づくりについて考えたいと思います。

 前編では、まず防災教育の企画を考えてみます。

 中編で具体的な指導案づくり等について解説します。

 後編で評価、実務について説明します。

※文中でPDFファイルをダウンロードしていただきます。学校や職場のパソコンにより、ファイルダウンロードができない場合は事務局までお気軽にお問い合わせください。


本講の内容

はじめに

1 防災教育実施企画書をつくってみる(前編)

  (1)授業テーマはなんだろう?

  (2)学習者は誰だろう?

  (3)テーマの選択理由はなぜだろう?

  (4)学習目標はどうしよう?

  (5)前提条件はなんだろう?

2 課題分析をしてみる(中編)

  (1)~(4) 「卵焼きを焼けるようになる」授業を例に

  (5)課題分析図を書いてみる

3 学習指導案をつくる(中編)

  (1)教材

  (2)指導方法

  (3)指導過程

4 評価ワークシートをつくる(後編)

5 進行表をつくって他の教員(担当者)と共有する(後編)


4 評価ワークシートをつくる

(参考資料) 防災教育共通振り返りシート_130926v(Word形式)

中編までで、課題の整理や学習指導案の作成までご説明しました。後編では「授業の後」について触れていきます。

防災教育で最も難しいことのひとつが「評価」です。卵焼きづくりや、テストで数値化できるものであればよいのですが「命を守れるようになる」とか「助け合えるようになる」というのは、個人差もありますし、何より「授業でできたから、災害時にもできる」とは言い切ることができません。

授業はあくまで授業であって、災害時のような緊張感、恐怖、不安や焦りを再現することは難しいのが現実です。ですがそれは「評価できないなら評価しなくてもいい=やればいい」ということではありません。少なくとも「その防災教育が児童生徒にどのような変化を与えたか」を評価することはできます。

その一例として(参考資料)をご覧ください。

この振り返りシートでは、児童生徒に対し防災意識の変化や、行動意欲、助け合いの気持ちについて確認しています。小学校低学年~教職員・PTAまで、全く同じ評価軸で評価できるよう、設問も易しい表現を用いています。

仮に「命を守れるようになる」という学習目標を設定しても実際に命を守れるかは災害が起きなければ分かりません。ですが「命を守れるようになる」ためのきっかけが、授業に含まれており、それを児童生徒が学び取ってくれているかは、評価できるでしょう。

 

(1)何を確認・評価すればいいのか。

 

これはとても難しいことですが、筆者の場合はごくシンプルに、こう考えました。

「防災に対する関心・意欲に変化が見られたか」

「命を守れるようになったかどうか」は分かりませんが、少なくとも児童・生徒に対し防災教育を行った結果、防災に対する関心・意欲の変化を児童生徒本人が自覚できていなかったとしたら、適切な学習効果があったとは認められないでしょう。

※注意 : この場合、何らかの要因でもともと、関心・意欲が極めて高い児童生徒は例外です。

従って、何はともあれ「児童生徒が、防災教育を受けた結果、関心・意欲に何らかの変化が見られた」ということを、しっかりと数値化することが、防災教育のためには(継続するためには)まずは必要ではないか、と考えています。

 

(2)成果はあるのか。

(参考資料)140407_防災教育共通評価シート2013後期[クロス集計]

 

こちらの参考資料は、前述の振り返りシートを、小学校低学年~教員・PTAまで、高校生を中心とする3,272名に配付し、記入してもらった結果を整理したものです。実施した防災教育の内容は、講演・講話によるものから、体験学習まで様々ですが、概ね7割程度の児童生徒らに何らかの意識・意欲の肯定的変化が見られました。

小学校・中学校では評価が高く、高校生では評価が低くなっていますが、これは実施環境が影響しています(9月の暑い時期、全校生徒、体育館での講話)。もし、防災教育の成果を高めたければ、内容もさることながら、実施環境の調整が大変重要です。

環境が考慮されれば、児童生徒に対する防災教育は一定の学習成果(本人が変化を自覚できる)がある、と考えることができます。はじめての防災教育は難しいこともあるかと思いますが、教員・指導側が真剣に取り組めば、必ず児童生徒は応えてくれます。ぜひ、自信をもってチャレンジしていただければと思います。

 

5 進行表をつくって他の教員(担当者)と共有する(後編)

さて、評価まで考えたらあとは実施するのみ、です。一人で実施できる場合も、複数の教員・指導員が関わる場合も、具体的な進行表(指導案とは別に)を作成し、職員会議等で共有する一手間があると理想的です。一度、作成しておけば、異動になってしまったときも後任の方が継続してくれるかもしれません。教員・指導員に何かあったときも、誰かが代替してくれるかもしれません。

学校・地域全体で取り組む防災教育のために、最後の一手間を惜しまず、取り組んでいただければ幸いです。

(了)


前編・中編・後編に渡ってご紹介してきた「学校防災教育における学習計画・指導案づくり」も本回で最終回となります。今後も、各種防災教育の実践事例や教材等をご紹介させていただきますので、引き続きご覧いただければ幸いです。

お問い合わせは 03-6822-9900 まで

第8回 学校防災教育における学習計画・指導案づくり-中編-

第8回 学校防災教育における学習計画・指導案づくり-後編-

宮﨑 賢哉(ミヤザキ ケンヤ)、防災教育コンサルタント/社会福祉士

災害救援ボランティア推進委員会 主任

【サマリー】

  防災教育は「教育」である以上、ある程度の指導計画や指導案が必要になります。なかなか具体的なイメージが作れず、苦心される先生方も多いかと思います。 そこで、ある中学校での具体的な防災教育を事例に、指導計画・指導案づくりについて考えたいと思います。

 前編では、まず防災教育の企画を考えてみます。

 中編で具体的な指導案づくり等について解説します。

 後編で評価、実務について説明します。

※文中でPDFファイルをダウンロードしていただきます。学校や職場のパソコンにより、ファイルダウンロードができない場合は事務局までお気軽にお問い合わせください。


本講の内容

はじめに

1 防災教育実施企画書をつくってみる(前編)

  (1)授業テーマはなんだろう?

  (2)学習者は誰だろう?

  (3)テーマの選択理由はなぜだろう?

  (4)学習目標はどうしよう?

  (5)前提条件はなんだろう?

2 課題分析をしてみる

  (1)~(4) 「卵焼きを焼けるようになる」授業を例に

  (5)課題分析図を書いてみる

3 学習指導案をつくる

  (1)教材

  (2)指導方法

  (3)指導過程

4 評価ワークシートをつくる

5 進行表をつくって他の教員(担当者)と共有する


 

2 課題分析をしてみる

(参考資料) 2_課題分析シート

前編では、防災教育における「学習目標」と「前提条件」を考えていただきました。

次に「課題分析」を行います。これはどういうことかというと、目標達成において、何が課題になりそうか、その順番はどうなるかを分析するということです。

例えば「卵焼きを作れるようになる」という学習目標を立てたとします。達成条件は卵焼きが作れることです。できれば、おいしく。前提条件として「卵焼きを食べたことがある(卵焼きがどんなものか知っている)」ということを設定したとします。さらに言えば「食べたことがある(知っている)けど、作った経験はない」としましょう。

この状況では、何が課題になるでしょうか。そして、それを授業でどう解決すべきでしょうか。もし僕が卵焼きづくりの授業をするとしたら、こんな感じになる、という例を挙げてみました。参考資料の3.課題分析図目標1.手順分析をお手元に見ながら確認してください。

※あくまで例ですので、卵嫌い・アレルギーの子がいる等の条件は除外します。

(1)そもそも「卵焼きを作る」イメージがわかない。必要性を感じない。という課題

まず「卵焼きを作る」ことのイメージが必要だな。遠足や運動会のお弁当に入っていた母親の手作りの卵焼きが嬉しかった、おいしかった話をしようかな。おばあちゃんに卵焼きの作り方を教わって一人暮らしの時に役立ったことのお話も。それと、料理本などからおいしそうな卵焼きの写真を見せて、料理の楽しさも伝わるといいな。

(2)イメージはわいたけど、どうすればいいか分からない。という課題

自分が卵焼きを作ったときの手順を説明して、塩を入れすぎてしょっぱくなった失敗例や、早く焼ける外側から少しずつ丸めていってうまくいった時の例を説明しよう。できれば写真や動画があったほうがわかりやすいかな。

(3)どうしたらいいかも分かったけど、自分にできるか分からない、不安。という課題

殻が入らないように卵を割る、空気を入れながら混ぜる、調味料を入れる、フライパンに油をひく、フライパンを温める・・・具体的な作業手順を示して、展示したり、資料で説明しよう。何か生徒は苦手な、できない作業はあるかな。あれば他の人に手伝ってもらってもいいからやってもらおう。

(4)作ってみたけど、おいしいかどうか分からない。という課題

実際に食べてみたり、食べ比べてみよう。おいしかった人は、どんな工夫をしたかな。まずかったら、何がいけなかったのかを考えさせよう。

・・・

これが課題分析の方法のひとつ「手順分析」の例です。参考資料にある階層分析については話が細かくなりますのでこちらでは割愛させていただきます。教えたいことを教えるために、何が課題になりそうか?それを順番にクリアしていくにはどうしたらいいか、を整理することで、学習指導案を作成する際の指導過程がより具体的に見えてきます。

(5)課題分析図を書いてみる

さて、それでは実際に書いてみましょう・・・といっても難しいかと思います。まずは、参考資料や上記の例をもとに、学習目標(生徒に教えたいこと)の課題は何かを整理してみてください。あなたが教えたいことを伝えるために、クリアしなければならない課題はなんでしょうか。学習目標、前提条件を意識しながら考えてみてください。

 

3 学習指導案を作る

(参考資料)3_学習指導案

ようやく学習指導案づくりに入ります。ここまでお付き合いいただいた方々であれば、さほど難しくはないかと思います。学習目標、前提条件を整理し、課題分析の流れから指導内容を作っていきます。

 (1)教材

防災教育には様々な教材があります。詳しくはまた別の機会にご紹介させていただきますが、まずは各地の教育委員会等で配付されている副読本などを活用すると良いかと思います。

 (2)指導方法

どのような流れで、何を目的にして行うのかを整理しておきます。ゲーム型式の教材を使用する場合は、使い方なども習熟しておく必要があります。また、生徒に話し合いをさせる場合の工夫などもありますが、このあたりは通常の授業での指導方法とさほど変わらないかと思います。

 (3)指導過程

2.でご紹介した課題分析を意識するようにします。手っ取り早く本論に入りたいところですが、生徒ひとりひとりの理解度には差があるかと思います。ひとつひとつ、確認しながら進めていくことが重要です。時間配分や生徒個別への注意点については、誰よりも先生方が詳しくご存じですので、ご経験を活かしていただくのが良いかと思います。外部の人間が指導に協力する場合は、この点をしっかりと先生と共有しておくことも重要です。

(後編に続く)


 

中編はここまでとなります。

学習指導案は授業の骨子となるものです。何より「形に残す」ことの重要性をお伝えしたいと思います。防災教育はご担当の先生だけがやればいいというものではありません。ご異動等で後任者に引き継ぐこともあるでしょうし、より良い教育のためにブラッシュアップすることも必要でしょう。

そのためには「何を目的とし、どのように指導したか」を常に意識しなければなりません。また、後編でご紹介する評価や他の教職員・管理職への説明においても重要な役割を果たします。

ぜひ、チャレンジしてみてください。

 

お問い合わせは 03-6822-9900 まで

第7回 学校防災教育における指導計画・指導案づくり-前編-

第7回 学校防災教育における学習計画・指導案づくり-前編-

宮﨑 賢哉(ミヤザキ ケンヤ)、防災教育コンサルタント/社会福祉士

災害救援ボランティア推進委員会 主任

【サマリー】

 防災教育は「教育」である以上、ある程度の指導計画や指導案が必要になります。なかなか具体的なイメージが作れず、苦心される先生方も多いかと思います。そこで、ある中学校での具体的な防災教育を事例に、指導計画・指導案づくりについて考えたいと思います。前編では、まず防災教育の企画を考えてみます。後編で具体的な指導案づくり等に入ります。

※文中でPDFファイルをダウンロードしていただきます。学校や職場のパソコンにより、ファイルダウンロードができない場合は事務局までお気軽にお問い合わせください。


本講の内容

はじめに

1 防災教育実施企画書をつくってみる(前編)

  (1)授業テーマはなんだろう?

  (2)学習者は誰だろう?

  (3)テーマの選択理由はなぜだろう?

  (4)学習目標はどうしよう?

  (5)前提条件はなんだろう?

2 課題分析をしてみる(以下は後編にて)

  (1)課題分析図を書いてみる

3 学習指導案をつくる

  (1)教材

  (2)指導方法

  (3)指導過程

4 評価ワークシートをつくる

5 進行表をつくって他の教員(担当者)と共有する


 

はじめに

防災教育を考えるときに、3つのポイントがあります。

①何を知っている(できる)のか【前提条件】

・・・> 既に知っていることを教えても効果は低く、難しすぎることも同様です。

②何を教えたい(させたい)のか【学習目標】

・・・> 児童生徒を「成長させたい」ポイントをしぼります。

③それを知った(できた)のか【評価】

・・・> ②が達成できたかどうか、しっかり評価します。

指導計画や指導案をつくることで、①~③が見えてきます。最初は難しいかもしれません。ですが、きちんと計画をたてて行い、評価をした授業は必ず次につながります。本講を参考に、ぜひ一度チャレンジしてみてください。

 

Ⅰ 防災教育実施企画書をつくってみる

(参考ファイル) 1_防災教育実施企画書

防災教育全体のイメージ作りのために「防災教育実施企画書」をつくってみましょう。いくつかの項目に分けて順番に考えます。本講で紹介する企画書はあくまで一例ですので、それぞれの様式、やりやすい方法でつくってみてください。

 

(1)授業テーマはなんだろう?

まずは「授業テーマ」を考えてみましょう。これは学習目標にもつながりますが、抽象的でも構いません。例えば「命を守れる生徒になろう!」とか「助け合える●●生になる!」とかでもいいでしょう。できれば生徒や保護者など、誰にでもわかるようにシンプルでキャッチーな表現がいいと思います。まず生徒に伝えることになるので、授業者(教員、外部団体)が、一番伝えたいメッセージを込めるのがポイントです。

 

(2)学習者は誰だろう?

本講の資料は、実際にある中学校で実施した【全校生徒対象の防災講話+一年生対象の防災ゲーム】という授業の資料をベースにしています。従って学習者は【中学校全校生徒+中学校1年生】となります。これはイレギュラーなケースで基本的には1年生~3年生など、学年単位になるかと思います。

防災教育の実施時期も関係します。例えば5月~6月に実施する場合、1年生はほとんど小学生に近くなります。逆に年明け以降なら、中学校2年生とほぼ変わらないでしょう。このあたりの判断は、先生方がよくご理解されているかと思いますので、特に外部の方は先生にしっかり確認することが大切です。

 

(3)テーマの選択理由はなぜだろう?

授業者がテーマを選んだ理由を考えます。何か印象に残る話を聞いた、印象に残った出来事があったなど、授業テーマを設定するに至った理由が必ずあると思います。これは実際に授業を行う際に児童生徒に伝えることもあります。「●●ということがあったから、君たちに●●を教えたいんだ」と伝えることで、児童生徒も「なぜそれを学ぶ必要があるか」を整理しやすくなります。自分の想いをしっかりと指導計画に落とし込むために、難しいとは思いますが一度整理してみましょう。

 

(4)学習目標はどうしよう?

さて、一番の本題となるのが学習目標です。ここでのポイントは「なるべく具体的にする」ことです。「理解する」とか「わかる」というのも悪くはないのですが、何が、どうできたら「理解した」「わかった」と言えるのかを考える必要があります。例えば、参考ファイルでは

・災害時に中学生(自分)にできる(できそうな)ことを、その理由も含めて述べることができる。
・災害時を想定した問題を見て、状況を読み取り、自分なりの判断を示すことができる。

という2点を示しています。授業テーマが「助けられる側から助ける側になる」ということですので、実際そのようになるためにはまず「自分にできることをする」という行動が必要になります。従って「自分に何ができるか」を理由も含めて示せることが必要になると考え、学習目標として設定しました。また、自分にできることは災害時の様々な状況によって変化していきます。その変化する状況を読み取り、その中で自分がどのように判断し行動するかも重要ですので、これも学習目標として設定しました。

この2点をクリア(達成)した生徒なら「助けられる側から助ける側になる」ことができるだろう、と考えます。もちろん、絶対にそうなれるとは言い切れませんが、少なくとも自らの判断で行動できるひとつの基準になります。

 

(5)前提条件はなんだろう?

最後に「前提条件」を考えます。これは対象となる児童生徒が「現時点で何を理解しているか」を整理するために行う作業です。既に理解している内容(東日本大震災で津波が起きた、たくさんの方が亡くなった等)の指導を学習目標に設定しても、防災教育としての成果は限られてしまいます。従って、これは「知っている」という前提条件のもとでさらに付け加えたい知識や技能を教えることが大切です。

(後編に続く)


 

前編はここまでとなります。

もしはじめて「防災教育を担当することになった」という先生方で、どのように進めたらいいか分からないという方がおられましたら、お気軽にご相談ください。先生方も、我々のような外部からサポートする側も、児童生徒も「一緒に学ぶ」という姿勢で取り組むのが、よい防災教育につながるのだと考えています。

先生方だけでなく、地域の方、NPOの方など、様々な方が防災教育に携わられることと思います。限られた時間で防災を伝えるのはとても難しいことですが、大切な子供たちの命のためにも「やってよかった!」と思える防災教育ができたらいいですね。

 

お問い合わせは 03-6822-9900 まで

第6回 いま求められる防災教育

第6回 いま求められる防災教育~子どもの発達段階に応じた実践例から~

宮﨑 賢哉(ミヤザキ ケンヤ)、防災教育コンサルタント/社会福祉士

災害救援ボランティア推進委員会 主任

【サマリー】※本講の内容は「月刊生徒2012年10月号」に掲載された内容です。

 子どもの発達段階に応じた目標設定やプログラムの実践例を中心に、いま求められる防災教育について「負担の軽減」「インストラクショナルデザイン」「継続性」の三つのポイントに整理して紹介します。


本講の内容

はじめに

1 子どもの発達段階に応じた防災教育実践

  (1)小学校段階「キッズサバイバル教室」

  (2)中学校段階「地域に根ざした防災教育」

  (3)高校段階「助けられる側から助ける側へ」

  (4)大学段階「防災教育の指導者を育てる」

2 いま求められる防災教育

  (1)学校・教員に負担がかかりすぎない防災教育

  (2)インストラクショナルデザインを意識した防災教育

  (3)継続できる防災教育

3 これからの防災教育


 

はじめに

防災教育実践では「目的・目標・手段」の整理が重要です。例えば「災害(地震)から命を守る」という目的のため、「(地震時の)安全行動ができるようになる」という学習目標を設定し、「緊急地震速報が聞こえたら姿勢を低くして頭や体を守る」訓練という手段を用いて、実践後は目標が達成できたか評価する、等が考えられます。子どもの発達段階によって理解力や判断力は異なりますので、防災に関わる様々な資料、指導方法、教材の中から適切なものを選択して、実践する必要があります。次項で実例を示しながら、学習目標や指導方法(手段)選択のポイントについてご紹介します。

 

Ⅰ 子どもの発達段階に応じた防災教育実践

本稿でいう「子どもの発達段階」とは文部科学省「東日本大震災を受けた防災教育・防災管理等に関する有識者会議」最終報告書によります。

 

(1)  小学校段階「キッズサバイバル教室」

小学校段階の目的は「災害(地震)から命を守れる」こととしました。これは全ての段階を通じて重要な目的ですが、この事例では「災害時の様々な危険を知り、対応できるようになる」ことを学習目標として設定しました。手段として「キッズサバイバル教室」をテーマに児童と保護者が一緒に防災について学べるプログラムを放課後子供教室で実施しました。家具転倒防止や非常食づくり、人形を使った搬送体験など楽しみながらできるプログラムに加えて、スタンプシートを用意する工夫をしました。スタンプシートにスタンプを押す(いくつも体験する)ことで、災害時の危険を理解し、対応方法を学ぶことになり、それが「災害から命を守れるようになる」という目的につながります。この段階では、楽しく関心を持てる手段であることが以後の発達段階における防災教育にとっても重要です。

 

(2)  中学校段階「地域に根ざした防災教育」

中学校段階の目的は「個人から学校・地域に視野を広げる」こととしました。自分のことだけでなく、学校として、地域としての防災に視野を広げることでより幅広い学習が可能になります。この事例では「地域の災害を知り、対応できるようになる」ことを学習目標として設定しました。手段として地域にある防災体験施設での体験学習や、地域で想定される地震・火災・水害等に応じた避難訓練、近隣住民の避難を想定した避難所運営訓練などを実施します。また、防災教育専門家による教員研修も行なっています。この段階では、仮に学校が避難所となった場合に生徒(教員も)がボランティアとしても活動できるような、実践的な手段を選ぶことが求められます。

 

(3)  高校段階「助けられる側から助ける側へ」

高校段階の目的は「地域社会に貢献するため自ら行動できる」こととしました。高校生として、防災を通じた地域社会への貢献を理解することで、社会の一員としての自覚も促します。この事例では「助けられる側から助ける側になる」ことを学習目標として設定しました。手段として事前学習で災害について学習し、次に市区町村防災課、消防署・消防団、社会福祉協議会など高校を取り巻く防災関係機関の協力を得た救助救出、避難所づくり、要援護者支援等の体験プログラムを、事後学習で災害対応を時系列に考えるワークシートを実施します。事前・体験・事後という3段階の学習により、自分に何ができるのかを明確にします。この段階では、社会の一員であることを理解するためにも、自分たちは助ける側にもなれること、お互いに助け合うことの大切さを学べる手段が重要です。

キャプチャ1

(写真)避難所設営を体験する高校生

(4)  大学段階「防災教育指導者養成」

大学段階の目的は「防災教育の成果を地域・社会に還元する」こととしました。この事例では「習得した防災の基礎知識や技能を活用し、児童生徒に指導できるようになる」ことを学習目標として設定しました。手段として大学で「災害ボランティア養成講座」を開講し、消防OBによる座学や上級救命技能講習、防災ワークショップ、施設での災害模擬体験等を実施しています。講座修了生は学校・教員と共に防災教育のプログラムを考え、児童生徒の指導も行います。この段階では、単に防災について学ぶだけでなく、自らが学んだ知識や技能を地域・社会に還元していく経験(学校での防災教育の機会等)を与えられるような手段を選ぶことが理想的です。

キャプチャ2

(写真)高校生に防災を指導する大学生たち

 Ⅱ いま求められる防災教育

こうした子どもの発達段階に応じた防災教育の実践経験から、いま求められる防災教育について大きく3つの視点で整理しました。

 

(1)  学校・教員に負担がかかり過ぎない防災教育

第一の視点は防災教育実施に係る学校・教員の様々な負担の軽減です。そこで、僕が提案しているのは「地域(外部団体)との連携」です。高校段階での実践例は多くの高校で取り入れられていますが、その要因として地域連携と学校・教員の関わり方のバランスが取れている点にあります。学校にとって負担となるような人員や指導ノウハウの不足は、消防や市区町村防災課との連携で解決できる可能性があります。但し、全てを外部に任せてしまうと、学校としてのねらい(学習目標)が達成できないことも考えられます。上手に地域(外部団体)の力を活かした防災教育が求められます。

 

(2)  インストラクショナルデザインを意識した防災教育

第二の視点はインストラクショナルデザイン(教育工学、以下「ID」)を意識した防災教育です。IDは学習目標を細かな課題に分解し、段階的に達成を確認、評価する仕組みのことです。少し分かりにくいので事例でご説明します。

僕がある高校で地震防災に関する講演会を行った時のお話です。講演後に男子生徒が来て不安そうに「これから大きな地震が来るんですよね…?どう生きていけばいいんですか…?」と聞いてきました。皆さんなら、どう答えるでしょうか。この生徒の質問をIDで分解してみます。

講演会によって彼は「地震が起こるかもしれない事実」を認識しました。この認識がなければ地震が起きた後の助けられる側や助ける側のことも理解できません(しない)ので、彼は第一段階の課題は達成したと考えます。次に「どう生きていけばいいか分からない」という発言からは「地震による様々なリスクへの対応が分からない」ということを意味しています。従って、彼には具体的な体験学習による地震後の対応を学ぶ機会が必要と考えます。そこで、高校段階で紹介した防災体験学習を行います。その結果が、事後学習のワークシートで示されることになります。生徒の自己評価や具体的な事例は月刊生徒指導2011年10月号に掲載されておりますので、ご参照ください。

ただ単に話を聞かせる、体験させるだけの防災教育ではなく、学習目標や児童生徒の理解度を意識した防災教育が求められます。

 

(3)  継続できる防災教育

第三の視点は継続できる防災教育です。防災教育は大掛かりな体験や専門家による講演でなければいけないということはありません。例えば、いま教育機関でも注目されつつあるのが米国生まれの防災訓練モデル「ShakeOut(シェイクアウト)」[i]です。訓練内容は単純で、地震の発生を想定した日時に「Drop(ドロップ:姿勢を低く!),Cover(カバー:頭と体を守って!),Holdon(ホールドオン:揺れが収まるまでじっとして!)」という合言葉で安全行動をとるだけです。この訓練の最大の特徴は、訓練実施日時や内容が広く学校だけでなく市区町村、都道府県単位で告知され、それぞれが同じ日時で一斉に行う点にあります。学校としての負担は少なく手軽にできますが、地域一丸で行う訓練は家庭やメディアの話題になり、児童生徒の防災に対する関心を高める効果もあります。

負担が大きい防災教育が優れた防災教育ではありません。簡単な内容でも、学校が主体となって継続できるような防災教育が求められます。

 

Ⅲ これからの防災教育

 

これからの防災教育では「どうすれば自分の学校(発達段階)に適した教育を行うことができるか」という点が注目されることでしょう。そこで参考になるのが「防災教育チャレンジプラン」[ii]のホームページです。同ホームページでは2001年度以降の全国の防災教育事例を子どもの発達段階や時間数等に応じて検索することができます。新しい取り組みを試行錯誤しながらつくり上げるのは大変ですが、過去の事例に学びヒントを得ることで、より効果的な防災教育実践につながります。

本稿がこれから防災教育にチャレンジしようとしている学校や先生方、あるいはすでにチャレンジされている皆さまのヒントとなることを願って、結びとさせていただきます。

 

本稿で紹介したいくつかの事例が広報誌「みんなの生涯学習第108号-助け合う防災教育-」(東京都教育庁地域教育支援部生涯学習課発行)[iii]に掲載されていますので、併せてご覧ください。

 


[i] The Great Japan ShakeOut http://www.shakeout.jp/

[ii] 防災教育チャレンジプラン http://www.bosai-study.net/top.html

[iii] 東京都教育庁地域教育支援部生涯学習課「みんなの生涯学習第108号-助け合う防災教育-」http://www.syougai.metro.tokyo.jp/sesaku/mishoubn.htm

第5回 大学における災害ボランティア育成の現状と展望

第5回 大学における災害ボランティア育成の現状と展望

宮﨑 賢哉(ミヤザキ ケンヤ)、防災教育コンサルタント/社会福祉士

災害救援ボランティア推進委員会 主任

「災害救援ボランティア推進委員会による災害ボランティア育成は、首都圏を中心とする多くの大学で取り入れられています。ふくしと教育2012年2月号に掲載したレポートを紹介させていただきます。」


本講の内容

1 災害救援ボランティア育成の概要

2 大学における災害ボランティア育成と成果

3 学生ボランティアによる活動

4 今後の展望-石巻モデルに学ぶ


 災害救援ボランティア推進委員会(以下「本会」)は平成7年の阪神・淡路大震災を契機に設立された民間団体である。総務省消防庁が示す基準に基づく講座を行い、災害救援、地域防災を担うリーダーを育成、大規模災害の被害を軽減することを目的としている。

 本会の災害ボランティア育成の仕組みは首都圏を中心に多くの大学で取り入れられており、3月11日の東日本大震災緊急対応や、その後の学生ボランティア活動へとつながっている。

1 災害救援ボランティア育成の概要

① 講座について

本会の災害ボランティア育成の特徴は東京消防庁のOBや有識者による座学講義、救命技能および災害模擬体験と実技、そして災害ボランティア経験者による実戦的な演習をパッケージ型講座で開講している点にある。講座は3日間24時間を基本とし、うち12時間は実技体験となっている。

 

② セーフティリーダーの育成

講座を修了した者は本会から「セーフティリーダー(以下「SL」)」に認定されSL認定証が交付される。また東京都内の場合は、東京消防庁から上級救命技能認定証も交付される。

講座は平成7年に第1回を東京都内で開講して以来、平成23年11月現在で197回を開講、SLの総数は7,000名を超えた。とくに近年では大学生のSL認定者が増加しており、年間認定者数の7割が大学生である(図1)。

 

キャプチャ01

 

 

③ 活動実績

こうした活動が認められ、本会は平成16年に防災まちづくり大賞総務大臣賞、防災功労者内閣総理大臣表彰を受賞している。また、地域や大学で活動するSLも高く評価されている。SLが代表を務める「たかしま災害ボランティアネットワーク」は平成21年に防災まちづくり大賞総務大臣賞、防災功労者内閣総理大臣表彰、「千葉市SLネットワーク」は平成22年に防災功労者防災担当大臣表彰を受賞した。学生SLが代表を務める上智大学「SLS@Sophia」は平成22年に学内での防災活動が認められ上智大学課外活動団体学長奨励賞を受賞している。

 

2 大学における災害ボランティア育成と成果

本会の災害ボランティア育成は一橋大学・東京大学・立教大学・中央大学・明治大学・法政大学・上智大学・専修大学・目白大学・中央学院大学・富山大学(順不同)等で取り入れられている。本会の災害ボランティア育成が多くの大学で導入されるようになった3つの要因をまとめた。

 

(1)行政と大学と外部団体の協力関係を構築

第一の要因は、行政・大学・外部団体(災害ボランティア専門団体)の円滑な協力関係を構築している点である。ここでは特徴的な2つのモデルケースについて紹介する。

 

① 千代田モデル

平成16年千代田区は明治大学と「大規模災害時における協力体制に関する基本協定」を締結した。主な内容は学生ボランティアの育成、地域住民及び帰宅困難者等被災者への一時的な施設の提供、大学施設に収容した被災者への備蓄物資の提供の3点である。千代田区は明治大学との締結を皮切りに、平成23年現在区内11大学中8大学と協定を締結している。

明治大学と法政大学は平成16年、協定に示される学生ボランティア育成として本会の災害ボランティア講座を取り入れた。これがきっかけとなって現在、上智大学、専修大学でも導入されている。

千代田モデルでは、大学がたんに施設を提供するだけではなく、学生ボランティアの育成、派遣を努力目標に掲げている。その具体化として大学が災害救援ボランティア講座を主催していること、災害ボランティア団体が講座を支援していること、行政(千代田区)がその取り組みを支援していることに特徴がある(図2)。

 

キャプチャ

② 富山モデル

平成17年から富山県では、県と富山県大学連携協議会(県内の大学によるネットワーク)、本会が協力して富山大学等を会場に県内の大学生を対象とした災害ボランティア育成を行っている。富山モデルの特徴は、複数の大学が連携して講座を開講し、行政(富山県)がその取り組みを支援している点にある。

どちらのモデルも大学と行政、外部の災害ボランティア組織が協力することにより、災害ボランティア育成の専門性を高めながら継続している。こうした取り組みにより、平成23年10月現在で千代田モデル(区内4大学)では807名、富山モデルで243名、全国で2,731名の学生をSLとして認定する成果を挙げ、学生SLは全SL総数の約4割となっている。

 

(2)大学による能動的な体制づくり

第二の要因は大学による能動的な体制作りを推進した点である。主に大学・担当者との信頼関係を築くとともに、学生ボランティアへのフォローアップを継続して実施し、それぞれが主体的に取り組める体制構築を進めている。

 

① 上智大学の取り組み

上智大学は平成19年より学生ボランティア育成に取り組んでいる。平成21年、翌22年は千代田区帰宅困難者避難訓練会場に大学キャンパスを提供し、学生ボランティアが教職員と共に大学災害ボランティアセンター運営訓練や帰宅困難者支援訓練に参加した(写真)。キャプチャ03

上智大学は平成22年には災害救援ボランティア講座の開催と講座を修了した学生による活動、継続的な防災訓練、講習会が行われているといった点が高く評価され、区内大学として初めて千代田区防災貢献者表彰を受賞した。

 

② 東日本大震災に対する取り組み

3月11日に発生した大地震は首都圏にも被害をもたらした。千代田区内でも多くの帰宅困難者が発生した。明治大学、法政大学、専修大学、上智大学の学生ボランティア育成に取り組む4大学は区の指示を待つことなく率先して滞留する学生・教職員と帰宅困難者の支援活動に取り組んだ。

筆者は震災当日から翌日にかけて区内4大学を訪れ、帰宅困難者支援活動の情報収集やサポートをさせていただいた。いずれの大学も大きな混乱なく施設を開放するとともに学生・教職員が協力して毛布等の救援物資を配布していた。円滑な支援活動の裏側には、平時からの防災協定と協定に基づくボランティア育成、その浸透もあったと考えられる。

また、その後の支援活動では災害ボランティア育成を行う大学も被災地へ学生を派遣している。活動を希望する学生に対する事前説明会を大学が主催し、これまでの関係を活かしていずれの大学も筆者が講師を担当した。大学の能動的な災害対応への姿勢と災害NPOとの連携が、初めての被災地派遣に対する学生の不安を抑え、被災地での学生・教職員の事故を未然に防ぐための対策へとつながった。結果として多くの学生ボランティアが被災地で安全に活動できるようになり、復旧復興支援に少なからず貢献したと考えられる。

 

③ 学生の学内での自主的な取り組みづくり

第三の要因は大学だけでなく学生の自主的な取り組みを支援した点である。千代田区内では上智大学のSLS@Sophia、明治大学の駿河台災害救援班、法政大学のチームオレンジ、専修大学の専修神田ボランティア(SKV)などが学生SLを中心に構成されている。主な活動として防災講習会の開催や防災に関するイベントへの参加、3月11日以降は被災地の支援活動なども行っており、本会もその活動を支援している。

彼らの活動は前述した大学による能動的な体制と車の両輪であり、双方の活動が継続的な災害ボランティア育成につながっている。

 

3 学生ボランティアによる活動

育成された学生ボランティアは学んだ知識、技能を活かした活動を行っている。とくに災害救援活動、防災教育活動の2つについて紹介したい。

 

(1)災害救援活動

専修大学では4月2日から5日にかけて、SKVメンバーを石巻専修大学支援に派遣した。この時期に多くの大学は学生の安全や現地の情報不足を考慮し、安易に被災地へ入らないよう呼びかけていた。しかし、SKVメンバーは災害ボランティアの知識・技能を身につけた学生であるという大学側の判断により、ボランティアが必要とされる早期段階での被災地派遣が実現した。また、夏期に行われた石巻支援活動では、SKVメンバーが一般学生のリーダーとなって支援活動に取り組んだ。

 

(2)防災教育支援活動

学生SLは講座で学んだ知識や技能をより若い世代に伝えていく役割も担っている。本会は平成20年度から学校における防災教育の支援にも携わっている。児童生徒に対して様々な防災体験学習を行う際に安全管理や、災害時の対応に関する指導などを主なボランティア活動として行っている。

東日本大震災以降は大学生による災害ボランティア体験を中高生に伝えていく取り組みも進められており、災害ボランティアの知識・技能をもった大学生ボランティアの活躍の場は今後ますます広がっていくだろう。

 

4 今後の展望-石巻モデルに学ぶ

これからの大学における災害ボランティア育成、そして防災対策を展望すると、多くのボランティアを受け入れ、復旧復興支援に貢献したその手法が「石巻モデル」と評された宮城県石巻市の災害ボランティア活動から学ぶべき点が多い。

 

(1)石巻モデルの教訓

石巻災害ボランティア活動の拠点となったのは石巻専修大学である。これは石巻専修大学が石巻市と「防災協定(3月末実に締結予定だった)」を結ぶ関係にあったからである。多くの主要施設が被害を受けた石巻市にあって、広大なグラウンドと建物、知的資源を有する石巻専修大学は、災害ボランティア活動の中核となり得た。行政と大学の連携があったからこそ、多くのボランティアを受け入れることが可能になったのである。平時からの大学と行政の連携の重要性が再認識される教訓である。

 

(2)次の大災害に備えて

石巻モデルに見るように、大学と行政が連携し災害対応にあたる仕組みが有効であることについてはいうまでもない。しかし、いわゆる文書だけの防災協定ではなく、実のある対策として進めていくためには、アドバイス役として防災専門団体、災害NPO等との継続的な連携協力が重要である。

今後大きな地震災害が想定される首都圏や東海地方、そしてこれらの地域に限らず、多数の学生が在席する大学が、能動的に災害ボランティア育成や防災対策に取り組むかどうかは、今後の日本の災害対策に大きな影響を与えるだろう。

 

次の社会を担う大学生の多くが東日本大震災を目の当たりにし、何らかのボランティア活動や支援活動ができないかと行動を起こした。彼らの行動を、効果的な復興支援活動、何よりも彼ら自身の命を守り、災害に負けない社会づくりにつなげるためにも、本会による大学と行政、外部専門団体との連携事例が参考になれば幸いである。

 

(ふくしと教育2012年2月より)

 

 

第4回 防災教育に使える教材紹介-HUG-(追補版)

第4回 防災教育に使える教材-HUG(避難所運営ゲーム)-

宮﨑 賢哉(ミヤザキ ケンヤ)、防災教育コンサルタント/社会福祉士

災害救援ボランティア推進委員会 主任/(社)防災教育普及協会 事務局長

【サマリー】

「防災教育をやらなければいけないけれど、ノウハウや経験がないから分からない、とお困りの方も多いかと思います。そこで、今回は手軽に取り組むことができ、いろいろな学びへとつなげることのできる防災教材”HUG”についてご紹介し、実際に体験した先生のお話も伺います」

【2015年4月追補】

新たに下記の記事を作成しました。より詳しい内容が確認できますので、併せてご確認ください。

「第22回 避難所運営ゲーム(HUG)研修・授業実施のポイント」


本講の内容

1)HUGってなに?

2)実施する際の注意点

3)体験された先生にお話を伺いました

4)学校の地域連携を進めるきっかけに

 

【1】  HUGってなに? 

▼HUG(ハグ)はHinanjo Unei Game、避難所運営ゲームの略称です。そのままですね!静岡県が平成19年に開発したもので、きちんと商標登録もされています。詳しい内容については県のホームページからご覧ください。以後、本講ではHUGについてある程度、ご理解いただいたことを前提にお話を進めますので、まずは一度、ご確認をお願いします。

 http://www.e-quakes.pref.shizuoka.jp/manabu/hinanjyo-hug/index.html

(静岡県地震防災センター HUGのページ)

 

【2】  実施する際の注意点

▼さて、では実際にHUGを教員研修で実施してみたい、あるいは生徒とやってみたい、ということになったとします。本項ではその際の注意点について簡単にまとめてみたいと思います。

 

☑ 「何のためにHUGを使うのか」学習目標をはっきりさせる

HUGはプログラムとしての完成度が高く、極端なことを言えば誰でもすぐに楽しみながら実施することのできる教材です。だからこそ指導側、HUGを扱う側の認識が重要です。そのヒントとして「何のためにHUGを使うのか」という学習目標をはっきりさせるということに気をつけてみましょう。

例えば、対象は学校の先生ですか。地域住民ですか。生徒ですか。彼らは何を知っていて、何を知りたいと思っているでしょうか。指導者側、扱う側としては何を一番、伝えたいと思っていますか。このあたりを一度整理して、それがしっかり達成できるように意識して扱うことが重要です。

 

☑ ゲームは手段であって目的ではない

避難所運営ゲームの名前のとおり、HUGは避難者に見立てたカードをスピーディに配置していくことで、実戦的な雰囲気を感じられる教材です。一方で「楽しそうなのだけど、残念だなぁ…」と思うケースは”手段が目的化してしまっている”場合です。カードを配置するという作業は、ゲームを進行していく手段でしかありません。ゲームが盛り上がってくると、「カードは人である」ことを忘れてしまいがちです。カードを置いていくことに夢中になって、先に示した「何のためにHUGを使うのか」ということを忘れないように(忘れさせないように)しましょう。

 

☑ 振り返り、共有、そして反省を

HUGを実施すれば、ほとんどの場合、凝った工夫をしなくても「避難所運営の難しさ」をご理解いただくことができるかと思います。ただ、そこで留まるのではなく、一歩進んで「では実際ならどう”難しさ”に対応しますか」という課題解決について、考えを進めていただきたいところです。参加者同士での振り返り、共有の時間、うまくいった例や失敗した例をもとにした反省の時間を、スケジュールの中に組み込むことを忘れないようにしてください。

 

【3】  HUG研修を企画した先生にお話を伺いました

実際にHUGの研修を実施された埼玉県川口市立小谷場中学校の養護教諭、深井先生にお話を伺いました。

 

①    研修で避難所運営ゲームを実施することになったきっかけは何ですか。
大学時代に防災について勉強させていただいたことがきっかけです。養護教諭の集まりの中で「HUG」を実施する機会がありました。実際にやってみると難しいことや悩むことがたくさんでました。養護教諭は管理職ではないのですが、児童生徒の健康をつかさどる職業です。災害時の健康管理はとても重要になってきます。その養護教諭が避難所を運営するためにはどうしたらいいのか普段からシュミレーションしていないと、いざといったときに動けないと思います。1人の養護教諭の背景には、何百人、何千人の生徒がいます。このゲームを通して、少しでも多くの養護教諭に考えてもらえればと思い、ゲームする話が持ち上がりました。

 

② 実施されてみてのご感想や、参加された先生方の反応はどうでしたか。
ゲームなので、グループによって異なったことを感じたと思うのですが、全体的に避難所を運営する難しさについて実感してもらえたような気がします。ドキドキした!緊張した!といった声や、ああすればよかった、こうすればよかったと反省の声もありました。また、この学びを他の養護教諭にも伝えたいと感じてくださった先生もいらっしゃいました。

 

③今後、学校現場でどんな取り組みが求められると思いますか。
学校や地域によって、防災に対する現状は異なるように感じます。その為に一概にこうした方がと言い切ることはできませんが、全体的な印象として防災教育が足りないように思います。学力向上、授業確保が叫ばれる中で、学校現場だけに防災教育を求めるのも厳しいところもあります。またマスメディアの普及により、防災に関する知識を持っている生徒や教職員は増えてきていたり、あらゆる地域で防災活動が少しずつ活発になってきたりしているところもあります。しかし、現状として知識には個人差があったり、知識だけにとどまり、防災へ行動を移している人が少なかったりと課題も多いです。そこで今後学校現場では、あらゆる関係機関と連携し、防災に対する実践的な体験を行取組が求められると思います。

 

深井先生、ご協力ありがとうございました。

 

【4】  学校の地域連携を進めるきっかけに

 

深井先生のお話にもありましたが、今後学校現場においては防災について実践的な体験を含めた取り組みが求められることになります。HUGは机上のゲームですが、ぜひ実施された後は(あるいは、実施される前でも!)学校で避難所運営の体験型学習や、地域住民と連携した避難所運営訓練などにチャレンジしていただきたいと思います。

実践的な体験を踏まえることで、HUGはより良い教材として活用することができるようになります。避難所運営訓練を含めた、防災教育の実践例については「防災教育チャレンジプラン」ホームページ等で、事例を探していただくこともできますので、ぜひ参考にしてください。

 http://www.bosai-study.net/top.html