防災ミニ講座

第32回 大学生向けに傾聴・他者理解をテーマとした災害ボランティア講座

 

 

なぜ「傾聴・他者理解」なのか

東日本大震災の発生以降、各地の大学で学生による災害支援・復興支援活動が続けられています。子どもたちの学習支援や遊び場の提供、イベントの実施などに取り組むことも多くなっています。そこで、本稿では「傾聴・他者理解」をテーマとした災害ボランティア講座についてご紹介します。

 [参考] 「災害と他者理解講座~傾聴について理解を深めよう」を開講します|上智大学

 

「人」が中心のボランティア活動だからこそ

関わる相手が大人でも子どもでも、ボランティア活動は人と人とのつながりの中で行われます。それぞれに考え方や価値観があり、支援側が思っていることとは違う反応や意見が出てくることもあります。そんな時に相手を傷つけてしまうことがないように、逆に自分が必要以上に傷つくことがないよう活動前に「被災された方」、あるいは「被災地」のことをよく考えることが重要です。

 

「心のケア」や「ストレスケア」は誰にでも必要

『傾聴』とか『心のケア』なんて専門家でないとできないのでは!?と思われるかもしれませんが、筆者としてはもう少し被災された方々の日常に寄り添って考えています。心身に何らかの症状がある、悪化してしまうような場合は専門家の方の力が必要なのは間違いありません。ただ、日頃からの対応については身近にいて、ある程度の期間関わることのできる人の支えも必要です。また、被災地外から関わる学生ボランティア自身も、活動の中で様々なストレスに直面する場合があります。「自分は大丈夫」、「がまんすればいい」と抱え込まずに、向き合うことも大切な経験です。

 

問題や課題を抱え込まず、話し合うことを恐れずに

本稿での講座内容ではアイスブレイクやワークショップを中心にしています。それは支援に関わる学生には、現地で起きる良いことだけでなく、問題や課題も抱え込まずに話し合ってもらいたいからです。自分の考えや感情を整理して、相手に理解してもらえるように伝えるというのは難しいものです。それが何かつらい経験であったり、苦しい状況にあったのなら、なおさら難しくなります。平時のトレーニングとして、講座は大事な機会だと思います。

 

ワークシート・資料について

講座で使用したワークシート、カードテンプレート、ケースワークシートはいずれもMicrosoft Word型式でご提供します。関連資料に関するURLなどもご提供します。そちらをご覧いただければ、本稿に近い内容の講座を各大学や学生団体でも実施できます。なお、取り扱う際には注意が必要な部分もありますので、ご希望の方は 問い合わフォーム から事前にご相談ください。

 

講座内容

講座は以下のような内容で行いました。

 

導入
冒頭に、当時大学生だった筆者の体験談として、被災地で出会ったご家族を亡くされた方のお話をしました。実際に大切な方を亡くされた方を前にして、声をかけることができなかったこと。被災地から戻ってから「被災者」や「被災地」、「復興」という言葉の意味について、何度も考えたこと。10年以上経った今でも答えは出ないけれど、ひとつだけ分かっているのは『答えはひとつではない』ということ。

他者理解というと大げさかもしれませんが「相手の気持ち、目線になって考える」ということのポイントにもつながりますが、人との接し方には「Aの時はB、Cの時はD」といった絶対的な正解がある訳ではありません。価値観や環境、その時その前後の状況、会話の中身などによって、必要となる接し方も変わってきます。今回の講座の内容もあくまでひとつの事例であり正解例ではないこと、その場面に応じて適切な対応を探っていってほしいという想いも込めて伝えました。

 

アイスブレイク

アイスブレイクでは、それぞれの人生にとって大切なものについて取り上げながら自己紹介をしてもらいました。同じ大学の学生でも、経験してきたこと、大切にしているものは異なってきます。活動に向き合う姿勢や考え方も、ひとつではありません。まず自分たちの中での違いを知り、受けとめるところから始めます。

 

他者理解に関するワークショップ

アイスブレイクの流れを受けて、被災された方のことを考えるためのワークショップを行いました。「被災者」あるいは「被災地」とはどのようなものなのか、「復興」とは何なのかについて、話し合ってもらいます。何となく使っている被災者という言葉ですが、ワークショップを行うことで、ひとくくりにすることはできない難しさが浮き彫りになります。

 

災害ボランティアの安全衛生・被災された方との接し方

筆者が大学の災害救援ボランティア講座で実施している、被災地での活動における安全衛生管理や、被災された方とのコミュニケーションの基礎知識についてお話しました。傾聴や他者理解に関わる具体的なノウハウも事例も挙げてお話しました。

例えば『何かを話すときは、出来事、考え、気持ちの順にすると話しやすい』といったものです。自分がつらい状況にあるときでも、誰かの話を聞くときでも、事実(何が起きたのか)→思考(どう受け止めたか冷静に頭で考える)→感情(率直にどう感じたか、どんな気持ちか)の順を追っていくと聞き手、話し手ともに状況を整理しやすくなります。もちろん、気持ちが先に出てしまうこともありますし、出来事を話したくないということもありますので、その時その方に合わせることも必要です。

 

グループ・ケースワーク

専用の相談援助演習シートを用いたケースワークです。事例を読んで、それぞれの状況についてワークシートに則って対応や理解について考え、意見を話し合います。これまでのワークショップや講義の内容を参考しながら、ケースワークを進めてもらいます。時間になったら各班から代表的な意見を発表してもらいました(写真)。それぞれの意見について、講師側から大事なポイントを補足しながら解説しました。

 

 

まとめ ~被災された方への想いは身近な人にも向けて~
まとめでは「無財の七施」などについてお話しました。被災された方々の力になりたい、傾聴やボランティア活動で支援をしたいという想いは、ぜひ身近な人にも向けてほしい、日頃から意識してほしいということです。どんな知識や技術も、平時からどれだけ意識しているかが重要です。毎日毎日傾聴せよ、というのは無理がありますのでそこまでする必要はありませんが、普段からできることもあります。

本記事が皆さまと、身近な方、そして被災された方の力になれば幸いです。

 


宮﨑 賢哉 (災害支援・防災教育コーディネーター/社会福祉士)
災害救援ボランティア推進委員会主任、(一社)防災教育普及協会事務局長

阪神・淡路大震災以降に被災各地で活動し、2002年にセーフティリーダー認定。学生団体を設立し、災害支援や防災に取り組む。2004年(公財)日本法制学会(災害救援ボランティア推進委員会の運営法人)入社後は、経験を活かして大学での災害救援ボランティア講座や学生支援を担当。災害支援・防災教育・社会福祉、公園の指定管理など幅広く活動中。